ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

宗教問題への「不介入」,独大使

1.独政府の宗教問題「不介入」
マイヤー独大使が12月19日,大使公邸で記者会見し,こう語ったという。

「われわれ[独政府]は,宗教の自由を支持している。しかし,改宗は個人的な事柄であり,必ずしも常に公的な問題となるわけではない。現に,われわれは改宗を勧めることは,していない。」

スパークス英大使が,制憲議会議員宛公開書簡で提案したこと(改宗の自由の憲法保障)はEU全体の考え方でもあるが,「われわれ[独政府]は,宗教については,絶対に,どのような立場も取ってはいない」。

「ドイツは,ネパールにおける宗教や連邦制の問題については,どのような立場も取らないし論評もしない。宗教と国家は別のもの,とドイツは考えている。・・・・ドイツは,求められるときのみ,支援する。われわれの希望は,ネパールの安定,繁栄,民主化である。」(“Germany Doesn’t Hold Any Position On Religion: German Envoy,” Republica,Dec 20; Cf. LEKHANATH PANDEY,”We don’t advocate religion conversion: German envoy,” Himalayan,2014-12-19)
141220b 141220a ■独大使館とHPフロントページ

2.クリスマス宣伝,独GIZ
独大使館は,このような慎重な立場を公言しているが,これはドイツがキリスト教宣伝をしていないと言うことではない。

たとえば,ドイツ国際協力公社(GIZ: Gesellshaft fur Internationale Zuzanmenarbeit)。GIZは,ドイツの政府公社であり官民協力の国際援助機関。ネパールでは1975年から援助活動をしている。

このGIZが,たとえば下記のような派手なクリスマス・バザー(独開発協力事務所前庭開催)の宣伝をしている。もちろん,これは直接的な布教活動ではないが,キリスト教文化の宣伝となることは言うまでもない。

フェアトレードグループ・ネパール,独大使館カトマンズ,GIZネパールからの
フェアトレード・クリスマスバザーへのご招待!

 141220e

3.神々の自由競争の前提条件
個人の信教の自由は,いまではネパールでも広く認められている。ヒンドゥー教徒であっても,大多数はそれには反対しないはずだ。ところが,布教活動の自由については,必ずしもそうはない。

繰り返し述べてきたように,布教の自由は,宗教以外の他の諸条件の基本的平等がなければ,実際には,「強者の布教の自由」となってしまう。神々の自由競争は,大きな貧富格差のあるところでは,富者の神の勝利となる。富者の神が優れているからというよりは,むしろ強力な富の援軍(マモン)が富者の神にはついているからだ。富者の神への「宗教外強制」。

ネパール憲法の改宗勧誘禁止規定は,一見いかにも反人権的と見えるが,ネパールにはそうした憲法規定をおかざるを得なかったもっともな事情があったこともまた,紛れもない事実である。

4.英独の文化侵略
英独は,ネパール憲法が改宗勧誘を禁止してきた事情など,百も承知だ。彼らは,わかった上で(悪意で),やっている。タチが悪い。

ドイツが,イギリスと少し違うのは,ナチス・ドイツのトラウマがあり,イギリスほど平然と二枚舌外交をやれないため。ドイツは,内政不干渉をつねに強調せざるをえないのだ。

しかし,これはドイツがドイツ流の価値観をネパールに持ち込もうとしていないということではない。ドイツは,開発援助や学術文化支援を通して,やや慎重だが,きわめて活発に,ドイツ的価値のネパールへの普及・浸透を図っている。

英独など,こうした西洋諸国の「強者の正義」の押しつけや「強者の自由」の行使が,ネパールの少なからぬ人々の神経を逆撫でし反発を招くのは,当然といわざるをえない。

【参照】改宗問題 Conversion Battle フェイスブック  ツイッター

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/12/20 at 16:58

改宗勧奨: 英国大使のクリスマス・プレゼント

クリスマス準備で浮かれるネパール国民に,スパークス英国大使が,ビッグなクリスマス・プレゼントを贈ってくれた。

1.公開書簡で改宗権保障の勧め
スパークス英国大使は,制憲議会議員宛に公開書簡を送り,これが12月10日付『リパブリカ』紙に掲載された(a)。その中で,大使は議員たちにこうアドバイスをした。

「われわれ[英国政府]は,宗教を変える権利の保障の実現のために,制憲議会議員諸氏が努力されることを期待する・・・・」

この提言は,ネパールにおいては,事実上,ヒンドゥー教からの改宗の奨励を含意する。英国大使が,制憲議会議員宛の公開書簡において,堂々と,新憲法への「改宗権」の書き込みを要請した!!

 141216b ■公開書簡

2.ネパール政府による説明要求
スパークス大使のこの提言は,ネパール側,とくに国民民主党(RPP-N)やコングレス党の反発を招いた。彼らは,コイララ首相やパンディ外相に対し,スパークス大使を呼び,抗議し,善処を求めよ,と要求した。RPP-N支持者は,すでに抗議デモさえ始めている。

ところが,張本人のスパークス大使は,クリスマス休暇(!)で帰国し,不在。仕方なく,ネパール政府は,ハリソン代理大使を呼び出した。

ネパール外務省バイラギ次官代理は,ハリソン代理大使に対し,現行ネパール暫定憲法では改宗働きかけが禁じられていることを説明した上で,ネパールの憲法はネパール国民自身が決めるのであり,この種の内政の微妙な問題についての発言は控えるように注意を促した。

3.英国大使館の釈明
これに対し,ハリソン代理大使は,公開書簡は「悪意」によるものでも,ネパール社会の「調和を乱す」ことを意図したものでもなく,ネパール国民の憲法制定を応援するためのメッセージだった,と釈明した。

さらに英国大使館は,フェイスブック(12月15日付)において,公開書簡非難は誤解によるものだとして,次のように釈明した(b)。

スパークス大使の公開書簡は,長年の友好国からの憲法制定「応援メッセージ」であり,「個人の宗教変更権の保障への言及」も国際人権規約・第18条(思想・良心及び宗教の自由)の規定に沿ったものであって,改宗「強制」を支持するものではない。大使館も館員も,特定の宗教をネパールの議員や国民に説いたり強制したりはしていない。また,世俗主義についても,大使館は特定の立場を説いてはいない。世俗国家か否かは,ネパール国民とその代表者が決めることだ。

大使館は,公開書簡が誤解を招いたことを,残念に思っている。

 141216a ■大使館FB

4.英国外交の常套手段
英国大使館は,大使公開書簡に「悪意」はなかった,非難は誤解によるものだ,と釈明しているが,老練外交大国にしてネパール熟知の英国が,そんな初歩的なヘマをやるはずがない。

英国大使が,制憲議会議員宛公開書簡で「改宗の権利」に言及すれば,たいへんな物議を醸すであろうことなど,誰にでも予想できることであり,明々白々な常識だ。

英国には,前科がある。セカール・コイララ議員(NC)によれば,1990年憲法制定時に,英国使節団は,憲法に「世俗主義」を規定するよう提案した。これに対し,KP.バタライ首相は,ネパールの憲法はネパール人が決める,英国の元首はキリスト教徒だということを忘れないでいただきたい,と反論したという(i)。英国は歴史の国であり,ほんの二十数年前のことを忘れるはずがない。

こうしたことを考え合わせるなら,スパークス大使は,十分わかった上で,つまり「悪意」をもって,「改宗の権利」に言及したと見るべきだ。

むろん,憲法への「改宗の権利」書き込みを提言すれば,たいへんな反発を呼び,非難攻撃されることも,計算の上だ。内政干渉だと非難されたら,国際人権規約を盾に取る,つまり自らのものと巧妙に仮装している建前としての普遍的価値を引き合いに出し,ねじ伏せるわけだ。

そもそも英国は,KP.バタライ首相が反論したとされるように,世俗国家ではない。英国元首(国王/女王)は,英国国教会の首長だ。それなのに,英国大使は,そんなことなどそしらぬ顔で,ネパールには「改宗の権利」や「世俗国家」を押しつけようとする。(実際には,何宗への改宗か!) 建て前と本音の見事な使い分け。英国外交の真骨頂,ここにありといったところだ。

5.英国大使からのクリスマス・プレゼント
スパークス大使は,イエス・キリストの誕生を祝うため本国に帰り,休暇を楽しんでいる。クリスマス商戦たけなわのネパールに,「改宗の権利」というビッグなクリスマス・プレゼントを残して。

 141216c ■ホテルのクリスマス(H.Shanker)

[参照]
クリスマスと布教の自由問題
世俗国家ネパールのクリスマス祭日(再掲)
「布教の自由」要求:キリスト教会
信仰の自由と強者の権利

[参照資料]
(a)Andy Sparkes, “Letter To Sabhasad-jyus,” Republica,2014-12-10
(b)UK in Nepal,Facebook,2014-12-15
(c)”Govt Summons UK Official Over ‘rights To Change Religion’,” Republica, 2014-12-16
(d)”Mahat Says Conversion Through Inducement A Crime,” Republica, 2014-12-15
(e)”Misunderstanding regretted: Embassy,” HIMALAYAN,2014-12-15
(f)LEKHANATH PANDEY,”Govt seeks clarification on Sparkes’ conversion remarks,” Himalayan,2014-12-15
(g)DAMAKANT JAYSHI,”Koirala to look into U.K. envoy’s conversion remarks,” The Hindu,2014-12-14
(h)SHIRISH B PRADHAN, “UK Envoy in Nepal Under Fire for Advocating Right to Conversion,” Outlook India, 2014-12-15
(i)”UK Envoy Under Flak For Advocacy Of Conversion, Govt prepares to seek clarification,” Republica,2014-12-14

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/12/16 at 21:22

汚職蔓延と権力乱用調査委員会:ネパール

1.腐敗蔓延
ネパールにおける汚職・腐敗の蔓延が,またまた国際的に実証された。先日発表された「腐敗認知指数2014」(Transparency International)によれば,ネパール社会の清潔度は,調査175カ国中の第126位,南アジアでもブータン,インドよりかなり下だ。(2013年度は177カ国中の第116位。)
腐敗認知指数(最小→最大)
[1]デンマーク [2]ニュージーランド [3]フィンランド [4]スウェーデン [5]ノルウェイ,スイス [14]英国 [15]日本 [17]米国 [30]ブータン [85]インド [85]スリランカ [100]中国 [126]ネパール,パキスタン [145]バングラデッシュ [174]北朝鮮,ソマリア(最下位)

この問題については,すでに昨年,かなり詳しく論評したので,以下では,それを前提に議論を進めることにする。
 権力乱用調査委員会(1):電力公社捜査
 権力乱用調査委員会(2):国外労働省,出入国管理省,ネパール石油会社など
 権力乱用調査委員会(3):強権行使の二面性
 権力乱用調査委員会(4):暫定憲法の規定
 権力乱用調査委員会(5):CIAA法1991(i)
 権力乱用調査委員会(6):CIAA法1991(ⅱ)
 権力乱用調査委員会(7):文化と「腐敗」
 権力乱用調査委員会(8):腐敗防止条約との関係

 141215a ■Transparency International Nepal

2.CIAAの腐敗調査
ネパールでは,憲法により「権力(職権)乱用調査員会」((CIAA:Commission for the Investigation of Abuse of Authority, अख्तियार दुरुपयोग अनुसन्धान आयोग)が設置され,権力(職権)乱用,汚職・不正・腐敗の調査取締りのための広範かつ強力な権限が付与されている(前掲拙論参照)。

CIAAは,検察/警察とは別の,憲法設置の腐敗調査取締機関であり,独立性が高く,したがって統治が正常に機能しない場合,統治のあらゆる領域に介入し「汚職」「不正」「腐敗」を調査し取り締まる機会が増える。CIAAは,独立機関だけに,迅速かつ有効に調査取締ができるが,その反面,つねに二重統治(第二の政府),独断的強権行使に陥る危険性をもまたはらんでいる。

その両刃の剣のCIAAが,昨年春の政党内閣崩壊危機前後に続き,いままた各方面への調査取締介入を強化している。2015年1月22日の憲法制定期限切迫が背景にあることは言うまでもないが,今回は昨年以上にCIAA介入への風当たりが強くなっている。最近の主な調査取締は,以下の通り。

(1)水力発電事業の認可取り消し
CIAAは,9月5日,水力発電事業の認可10件の取り消しをエネルギー省に勧告した。電力事業法第49条5では,事業調査は認可5年以内に調査開始を,発電事業ついては認可後直ちに事業着手を,定めている。ところが,これらの認可事業は,この法規定に違反し事業を進めていない,というのが理由だ(a,b)。
[取消勧告の10事業]
 調査認可取消:Bhotekoshi-5 (60 MW), Buku Khola (6 MW),Karuwa Khola (36 MW)
 発電事業認可取消:Lower Arun (400 MW), Chaharekhola (17.5 MW), Upper Mailung Khola (14.3 MW), Upper Solu Khola Sano (18 MW), Midim Khola (3.4 MW), Upper Khoranga Khola (6.8 MW),Lower Indrawati (4.5 MW)

(2)教育不正
CIAAは,教育分野の不正・腐敗にも,大規模な調査取締介入を始めた。

[1]幽霊学校の摘発
ネパールには,学校登録をし国庫補助金を受け取りながら,実際には授業をしない学校,いわゆる「幽霊学校」が多数あるという。CIAAは,これまでにそうした幽霊学校737校を摘発し,最近も54件の情報提供があり捜査される見込みだ(c,d)。

[2]教員免許状偽造の摘発
CIAAは,現在,偽造教員免許状の告発を約1000件受けており,これを捜査するため,全国の郡教育事務所に対し,教員免許状を回収し,CIAAに提出するよう命令した。教員定員は16万2千人。調査は大規模となり,影響も大きい。ちなみに,2013年度の教員免許状偽造の摘発は80件(c)。

[3]入試問題漏洩の摘発
CIAAは,12月6日,医学部(MBBS=医学士)入学試験問題漏洩事件の捜査に着手した。NAME Institute for Medical Education, Golden Gate International College, Orbit Medical Entrance Preparation などの関係学校やMBBS入試準備センターを捜査し,コンピュータや書類など多数の証拠品を押収,数名を逮捕した。

ネパールでも医学部(MBBS)は人気が高く,受験生は約6千人。逮捕された容疑者らは,入試問題のうち「生物A・B」を密かにコピーし,1部100万ルピーで受験生に売っていた。容疑者の一人の自宅からは,小切手450万ルピー,現金10万ルピーが見つかり,押収された。(e,f,g)

[4]公務員汚職の捜査
CIAAは,現在,公務員約1000人について,汚職容疑で捜査している。詳細は不明。(h)

 141215b ■CIAA

3.CIAA批判の高まり
CIAAの介入がこのように拡大するにつれて,CIAAへの批判も高まってきた。

(1)CIAAの強権化
一つは,腐敗の調査取締をするCIAAの強権化と,CIAA自身の不正・腐敗をどうするかという問題。「番犬の番を誰がするのか?」(S.B.タマン議員)

番犬が強力になればなるほど,その利用価値も大きくなる。すでに,事業実施や職場において不満を持つ側が,妨害目的でライバルをCIAAに訴える事例が激増しているという。「CIAAに訴えてやる」という脅し。

CIAAが,このようにして「第二の政府」のようなものになり,「第一の政府」の統治に介入すればするほど,国家統治は混乱し,皮肉なことに,腐敗は逆に増えていくことになる。そして,強権化したCIAA自身もまた,「第二の政府」として腐敗に蝕まれていくことは免れない。「権力は腐敗する。絶対的権力は絶対的に腐敗する。」(アクトン卿)(i)

(2)カルキ委員長の適格性への疑問
CIAA批判のもう一つの理由は,カルキ(Lok Man Singh Karki)氏は委員長にはふさわしくないというもの。

カルキ氏がCIAA委員長に任命されたのは,2013年5月8日。その頃,ネパール政治は,第一次制憲議会解散後の混乱で制憲議会選挙も出来ず,政党政治は行き詰まっていた。主要諸政党は,窮余の策として,最高裁判所のレグミ長官を議長(首相)とする非政党の選挙管理内閣をつくり,暫定的に統治を一任した。

この混乱の中でレグミ議長(首相)が,高次政治委員会(マオイスト,NC,UML,UDMF)の推薦に基づき,CIAA委員長に任命したのがカルキ氏であった。任期は,2013年5月8日から6年間。

このカルキ氏のCIAA委員長任命には,当初から反対が強かった。理由は主に二つ。一つは,カルキ氏がギャネンドラ国王の側近として「人民運動II」の弾圧に加担したというもの。ラヤマジ委員会が調査し,有罪と判定されたとされるが,詳細は不明。もう一つは,カルキ氏には贈収賄スキャンダルが多いというもの。横領容疑でCIAAに捜査されたこともあると報道されているが,その詳細は不明。(j,k,l)

 141215c ■カルキ委員長ツイッター

4.CIAA・議会対立の不毛性
CIAAの活動強化は,カルキ委員長の豪腕によるところが大きい。カルキ委員長就任後,CIAAは予算も人員も数倍に急拡大している。カルキ議長の最近の説明によれば,CIAAは2万3千件の申し立てを受け,800件を調査し,そのうち168件を腐敗問題を扱う特別裁判所に回したという。事実とすれば,CIAAの活動がいかに拡大したかをよく物語る数字である。

このようにCIAAの活動が拡大すると,当然,「第一の政府」との利害対立も激化してくる。たとえば,この11月4日,議会の3委員会(会計委員会,財務委員会,農業・水資源委員会)が,CIAA活動の権限逸脱問題を審議するため,カルキ委員長をそれぞれの委員会に召喚した。

この召喚に対し,カルキ委員長は,召喚に応じる義務はない,と真っ向から反論した。それでも,11月5日の財務委員会には出席し,CIAAは権限を守り活動しているが,それよりもなにより「議会運営規則(2070年)第110,115条により,CIAA活動については統治監視委員会でのみ説明する」のが筋であり,それを伝えるために出席したと述べ,委員からの質問には答えず,退席してしまった。とりつく島もない。

このようなカルキ委員長の態度に対しては,議会議員からは様々な批判が出されている。
 プラカシ・ジャワラ財務委員会委員長:CIAAは公務員に「テロル(恐怖)」を与えている。
 スレンドラ・パンディ議員(UML):カルキ委員長は,「番犬」の権限を越え,噛みつく「凶暴な犬」になった。
 チャンドラ・バンダリ議員(NC):CIAAは「法の支配」を守る義務がある。権限を越えるべきではない。
 農業・水資源委員会:委員会出席を拒否したカルキ委員長の責任追及をネバン制憲議会議長に要求。

こうした様々な批判に対し,カルキ委員長は,こう反論している。
 ・「CIAAは,ロック・マン(カルキ)の相続財産ではない。」
 ・「私は,独立の立場から,任務を果たしている。」
 ・水力発電事業については,エネルギー省筋からの調査依頼に基づき,法令に則り調査し,14件(11月現在)の事業認可の取消勧告を出したまで。
 ・CIAAは権限を守っており,「法の支配」をまもる「番犬」の役割を果たしているにすぎない。

このCIAAをめぐる論争において,いずれの側の言い分が正当かは,にわかには判定できないが,こうした争いがネパール政治の混乱と,それに伴う腐敗拡大の深刻さをよく現していることに疑いの余地はない。まったくもって不毛きわまりない争いといわざるをえない。(m,n,o,p,q,r)

[参照資料]
(a)BHADRA SHARMA,”CIAA asks ministry to scrap licences of 10 hydropower cos,” Kathmandu Post, 2014-09-06
(b)”CIAA Instructs Govt To Scrap 4 Hydro Licenses,” Republica,2014-10-29
(c)”CIAA to launch nation-wide probe into teachers’certificates,” nepalnews.com,2014-12-09
(d)”Lokman Singh Karki,” http://en.wikipedia.org/wiki/Lokman_Singh_Karki. ただしWikiのこの項目および「CIAA」の項目は,記述が不自然であり,注意を要する。
(e)”CIAA to launch nation-wide probe into teachers’certificates,” nepalnews.com,2014-12-09
(f)”MBBS Questions Leak : Seven More Under CIAA Scanner,” Republica,2014-12-09
(g)”NAME Director Sharma Arrested,” Republica,2014-12-12
(h)”Over 1,000 Nepal’s politicians under scrutiny: anti-graft chief,” Xinhua, 2014-12-09
(i)”Watching the watchdog,” Editorial, Nepali Times,#731,7-13 Nov.2014.
(j)”Lok Man the New Superman of NEPAL,” CNN iReport, 2013-05-08
(k)”Maoist nominee sworn-in as chief of Nepal’s anti-graft body,” Business Standard, 2013-05-08
(l)Gyanu Adhikari,”Royalist touches a raw nerve in Nepal,” The Hindu, 2013-05-08
(m)Rajendra Pokhrel,”Finance Committee members criticise CIAA chief Karki,” Nepalnews.com,2014-11-05
(n)”PAC summons CIAA Chief Karki,” Ekantipur,2014-11-04
(o)”CIAA chief Karki refuses to attend House committee, Thapa-led committee draws speaker’s attention,” Ekantipur, 2014-11-16
(p)”‘CIAA is not Lokman’s inherited property’,” Ekantipur,2014-12-05
(q)”House panel summons CIAA chief 2nd time,” Kathmandu Post, 2014-12-01
(r)”Another parliamentary committee summons CIAA,” HIMALAYAN,2014-11-04

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/12/15 at 20:38

CPDCC報告書提出,バブラム・バタライ議長

憲法に関する政治的対話・合意形成委員会(CPDCC)」のバブラム・バタライ議長が12月5日,委員会報告書を制憲議会(CA)のネバン議長に提出した。

141208d ■バタライCPDCC議長(同FB)

CPDCCは,新憲法に関する諸問題を審議し合意を形成するために設置された。報告書の提出期限は9月16日であったが,合意形成には至らず,以後4回期限が延長され,ようやく12月5日,報告書が提出された。

しかし,この報告書は,報道で見る限り,およそ報告書の体をなしてはいない。

憲法案作成については,多数派与党のコングレス党(NC)・統一共産党(UML)が,マオイスト中心の野党連合と真っ向から対立しており,妥協の糸口すら見つけられず,二進も三進もいかない状況が続いてきた。そこで,やむなく主要諸政党は12月3日,体裁を取り繕うため,その場しのぎで,バタライCPDCC議長に「議長としての職権」により報告書を取りまとめ提出する権限を委任した。

が,これまた面妖,「議長の独立した判断に任せる」といいつつも,いかようにでも解釈できる玉虫色の無責任委任であった。これにはバタライ議長も困ったであろうが,ともかくも苦し紛れにでっち上げたのが,5日提出のCPDCC報告書なのである。

そもそもCPDCCには,つぎのいずれかの報告が求められていた。最善は,新憲法に関する様々な意見を取りまとめ,諸党合意を形成し,報告すること。そして,もしそれができない場合は,合意できない部分の対立する意見を整理し,一覧表として提出すること(これは制憲議会投票採決のためのものと理解されている)。

ところが,12月5日提出のCPDCC報告書は,これらのいずれでもなかった。憲法草案への諸党合意報告でもなければ,投票採決可能な対立する諸案の一覧表でもない。バブラム議長としては,とりあえず形だけ報告書を提出しておき,再度,委員会に持ち帰り,継続審議するつもりなのだ。

一方,報告書を受け取ったネバン制憲議会議長は,次の4つの選択肢を提示した。
 (1)制憲議会本会議で合意を形成する。
 (2)報告書をCPDCCに差し戻し再審議させる。
 (3)現CPDCCを解散し,新しいCPDCCを組織し審議させる。
 (4)制憲議会内に新委員会を設置し,そこで審議する。

しかし,これは堂々巡り。12月9日開会予定の制憲議会本会議では,与野党入り乱れての大紛糾が避けられそうにない。

141208a 141208b ■ネバンCA議長/オンサリ・マガルCA副議長

新憲法の制定・公布は,2015年1月22日の予定。これはほぼ絶望的で,はや次の期限の観測気球があちこちであげられている。

ネバン制憲議会議長: 憲法案審議が順調にいけば,新憲法の4月15日制定・公布は可能。
プラチャンダUCPN議長:1月22日までに新憲法への基本合意ができておれば,制定・公布が数か月遅れても問題はない。

[参照]
* Parties authorise CPDCC Chair to end deadlock,Himalayan,2014-12-03
* 20 parties also authorise Bhattarai to resolve deadlock,Himalayan,2014-12-03
* CPDCC chair to submit report, HIMALAYAN,2014-12-03
* Bhattarai Asked To Forward CPDCC Report Using Own Judgment,Republic,201-12-04
* Leaders Still Wrestle Over What Happens After Disputed Issues Are Sent To CA, Republic,2014-12-05
* Bhattarai Submits CPDCC Report To CA Chair,Republic,2014-12-5
* Bhattarai submits PDCC report to Nembang, Report includes NC, UML joint proposal, Ekantipur,2014-12-05
* Bhattarai submits report,CA meet scheduled for Dec 9,Himalayan,2014-12-05
* Oppn worried what CA may do to CPDCC report,HIMALAYAN,2014-12-04
* Consensus Must By Tuesday To Produce Statute By Jan 22: Nembang,Republic, 2014-12-06
* New statute possible by April 15, HIMALAYAN,2014-12-05
* Constitution on time if parties are serious in dialogue: PDCC chair, Ekantipur,2014-12-06
* Statute possible by January 22: PM, HIMALAYAN,2014-12-06
* Two-third majority in CA won’t work in constitution making: Dahal,HIMALAYAN,2014-12-06

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/12/08 at 09:23

カテゴリー: 議会, 憲法, 政党

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京都の米軍基地(60):よき隣人としての米軍

経ヶ岬進駐米軍が,袖志海岸のゴミ拾い奉仕をした。さすがボランティア活動の本家,よき隣人として,はや地元地域社会に溶け込みつつある。

一方,ジェイソン・オルブライト氏も,満開の桜の下の多連装ロケット弾に,美女と箸と刺身を配し,日本人の美意識をくすぐり,愛国心を大いに満足させてくれている。

141206b 141206c
 ■海岸清掃奉仕/終了後記念撮影

141206d 141206a
 ■桜・美女・刺身と多連装ロケット弾/米太平洋軍ブルックス指令官来訪(11月?)

むろん,ごくごく一部にすぎないが,まだ一抹の不安は残っている。たとえば,関西ラディカル・メディアの雄,毎日新聞は,しつこく米軍進駐問題を追いかけている。

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「大義」の陰で:2014衆院選/7 米基地、標的の不安 「抑止」で高まる懸念 毎日新聞2014年11月29日(大阪朝刊)

丹後半島の北端。フェンスに囲まれた敷地内を迷彩服の男たちが歩き、重機が土をかき出す。・・・・投光器が並び、夜も発電機がうなりを上げる。手押し車に腰掛け、工事を見つめていた高齢女性がつぶやいた。「音がひどくて眠れない」・・・・
「基地が攻撃の対象になるのではないか」。住民らの不安は消えない。・・・・
基地から約500メートルの袖志地区にとっても寝耳に水だった。海沿いに約80軒の家が並ぶ。「地域の平穏な生活は守られるのか」。・・・・
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しかし,こんな不安など,基地関係経済の成長(歓楽街繁盛など)や直接間接の補助事業増大,そして本場の顔の見えるよき隣人作戦により,まもなく一掃されるだろう。

後進国日本では,下の写真のような先進米国の宗教文化宣伝も有効だが,地元に入り込むには,もっとよい方法がある。丹後半島は日本有数の豪雪地帯。もし私が司令官なら,配下の軍人・軍属とその家族に,それとなく,雪かき・雪下ろし支援ボランティアを勧めるだろう。効果絶大,わずかに残る不安など,あっという間に溶け,跡形もなく消え去ってしまうにちがいない。

クリスマス(キリスト教)宣伝と子供利用(12月初旬?,子供の顔消去)
141206e 141206j
141206k141206h

[参照]
経ヶ岬Xバンドレーダー基地に勤務する米国人の生活を支援する「フレンドシップクラブ」を立ち上げよう
『 ウエルカム アメリカン フレンズ 』 ①「フレンドシップクラブ」を立ち上げよう ②スポーツで交流を深めよう(2014年12月19日)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/12/06 at 22:47

ガディマイ祭:動物供犠と人間の業(11)

9.人道的動物愛護運動の人間至上主義
今年のガディマイ祭の動物供犠は,11月28日(主に水牛),29日(ヤギほか)に催行された。

この動物供犠については,内外の動物愛護団体が激しい反対運動を繰り広げ,インドでは最高裁に訴え,動物の不法持ち出し禁止命令を出させることに成功した。ネパール政府にも圧力をかけ,関係諸法による規制強化を約束させた。要所には治安部隊1万4千が派遣され,動物検疫所も5か所開設された。

その結果,動物供犠そのものは阻止できなかったものの,供犠水牛は前回2009年の半分以下,4~5千頭にとどまったとみられており,この点では反対運動は大きな成果を上げたと動物愛護諸団体は評価している。

一方,ネパール政府と祭り関係者は,反対運動のさらなる激化を恐れ,今年は,ジャーナリストの入域を禁止した。リパブリカ記者はカメラを警官に没収された(のち返却)。

しかし,この情報化時代,参拝者のスマホやデジカメまで禁止することは無理であり,おそらく多数撮影され,これから続々ネットに掲載されていくであろう。しかも,それらがいずれも動物供犠の「リアルさ」を競うものとなることは避けられない。

動物が殺される様は,「リアル」であればあるほど,菜食主義者は無論のこと非菜食主義者であっても,日常生活においては直視に耐えられない。この点では両者の態度は共通している。

これは動物供犠支持派には圧倒的に不利な状況。反対運動が勢いを増すのは自然な成り行きであり,このままでは,2019年の次回動物供犠は実施できない可能性大と見ざるをえない。動物愛護派の完全勝利だ。

しかし,本当にそれでよいのだろうか? 動物の不法持ち込み,供犠前後の不衛生,見世物利権化,ダリット差別など,もっともな問題点をクリアし本来の動物供犠に立ち戻ったとしても,それでも動物供犠は,それ自体が悪であり禁止されなければならないのか? 

動物供犠禁止は,他の生命の犠牲によって生きざるをえない人間が,自らの業から目を背けて生きることを糊塗するためではないのか? 「人道的(humane)」こそが「人間至上主義(humanism)」なのではないか?

[参考資料]Humane Society International FB
 ▼シンボルマーク
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 ▼12月3日記事
Thank you for taking action and donating to support our campaign against the world’s largest animal sacrifice at the Gadhimai festival in Nepal.

Because of your support, our comprehensive campaign included meeting with the president and prime minister of Nepal to directly request their intervention and lobbying the chief priest of the Gadhimai Temple through the night until just hours before the butchering started, in a last-minute attempt to stop the bloodshed.

Despite the festival proceeding, there were some positives. We were able to successfully petition the Supreme Court of India to order a halt to illegal border crossings, resulting in 114 arrests and more than 2,500 animals seized (pictured). The number of animals who reportedly died was significantly lower than in the past and, just as importantly, we built a foundation for continuing the fight.

Our commitment to prevent this bloodbath from happening again is greater than ever. We will do all we can over the next five years to put a permanent end to the massacre of animals at Gadhimai.
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[参照記事]
*Vijay Singh,”Animal sacrifice in Nepal goes on despite protests,” Times of India, 2014-11-30.
*”Mass animal sacrifice at Nepal’s Gadhimai festival sparks global condemnation,” Business Standard 2014-11-30.
*Manesh Shrestha,”Death and the goddess: The world’s biggest ritual slaughter,” CNN, 2014-12-01
*Shirish B Pradhan,”India’s ban on animal exports hits Nepal’s Gadhimai festival,” Deccan Herald, 2014-12-01,
*”Dispute flares up in Gadhimai over sacrificial remains,” Himalayan, 2014-12-01

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/12/02 at 23:01

ガディマイ祭:動物供犠と人間の業(10)

8.ブリジット・バルドーの大統領宛公開書簡
仏女優ブリジット・バルドーが,ガディマイ祭禁止を求める公開書簡をネパール大統領に送った。祭り利用の金儲け批判はもっともだが,だからといって神々への敬虔な動物供犠までも十把一絡げに否定するのは,行き過ぎだ。

一国の元首に向かって,その国の伝統文化を「血に飢えた」「残虐な暴力行為」と罵倒し,止めさせよ,と高飛車に要求するのは,あまりにも非礼。ネパール大統領は,完全無視でよい。

菜食主義者の肉食反対や非暴力主義者の動物供犠反対は,むろん自由である。大いに議論し,新しい文化を創っていったらよい。が,だからといって,宗教や文化の根幹に関わる価値(価値観)の問題を,安易に政治の世界に持ち出すことは許されない。神々の争いを政治化すれば,世界は動物以前に人間が殺し合うことになる。

しかし,残念なことに,近代以降,欧米の政治技術が発達し,いまや世界世論は彼らにより操縦されている。欧米の常套手段は分割統治。ネパールの動物供犠についても,欧米が介入し,世論を分断し,問題を政治化し,結局はそれを政治的に廃止させてしまうだろう。

予定では,明日,明後日が動物供犠。SAARC会議よりもはるかに重要。注視していたい。

[書簡要旨]
2009年の書簡は無視されたが,私は諦めてはいない。

今年は,総数25万のヤギ,水牛,ブタ,ニワトリ,ハト,アヒル,ネズミが生贄にされる。しかし,ガディマイ女神が,そのような無実の生き物の生贄を喜び,その残虐な暴力と引き替えに繁栄をもたらしてくれるとは,到底信じられない。

古くさい血まみれの残虐な伝統は,ネパールの評判を大きく損なう。廃止すれば,評価は上がる。

ガディマイ祭は金儲けが目的となっており,ネパール政府はそのような祭りを認めるべきではない。この祭りが認められるのなら,「麻薬祭」や「酒祭」でさえ認められることになる。

インド内務省は,ネパールへの不法な動物輸送を禁止した。ヒマーチャルプラデーシュ州でも,動物供犠禁止の判決が出た。インドは,動物保護に向け大きく前進している。

大統領の国ネパールも,残虐な伝統を一掃すべきだ。そうすれば,平和と共生のために立ち上がった大統領として,あなたの名前は後々まで語り継がれるだろう。そして,あなたの国も長く繁栄するだろう

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谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/11/27 at 17:24

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