ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

出荷用と自宅用を区別,ネパール農家も

昨日,日本農家は出荷用と自宅用を区別して栽培していたと書いたが,事情はネパールでも同じだ。

商品野菜を栽培している農家のほとんどは,農地を二つに分けている――出荷用農地では,殺虫殺菌剤,ホルモン剤,化学肥料を使って野菜を作り,自家用農地では,有機肥料だけを使い,農薬は使わない。」(Himalayan,22Jul)

そう,商品農作物生産の資本主義農業においては,自家用/出荷用別栽培は,どこでも見られる,きわめて合理的な農作物生産方式なのだ。日本だけでなく,ネパールでも。そして,おそらくは農産物輸出大国の某国,某々国においても。だから――

このようなことをする農家は不道徳であり,全くのペテン師であり,消費者の健康をもてあそぶものだ。」(Ibid)

などと,農家を非難してみても,全くの的外れ,お門違いだ。農家には,何の非もない。農薬まみれ野菜は,ネパールの近代的消費者自身が暗黙裏に求めたものに他ならないから。

農薬汚染が高いのは,カトマンズ,バクタプル,カブレ,ダディン,チトワン,バラなどの都市近郊農地だ。その結果,当然,都市部の野菜の残留農薬が高くなる。

カトマンズ野菜市場では,トマト,ナス,カリフラワー,トウガラシ,ササゲ豆,ヒョウタン,ジャガイモなどの野菜類の45%から残留農薬が検出され,特にササゲ豆の場合,なんと97.17%から検出されたそうだ(ekantipur,29 Jul)。

あるいは,ネパール農家は,DDTなど15種類の禁止農薬を使用しているとか,カリマティ市場のほぼすべての野菜からWHO許容基準の3倍の残留農薬が検出されたといった,恐ろしい報道もある(Himalayan,22 Jul)。

しかし,繰り返すが,これは農家の責任ではない。「商品」農作物を求めたのは消費者自身である。だから,ネパールでも,こう言うべきだ――

安全な農作物が食いたければ,農業労働に見合うだけのカネをだせ!
カネも出さず,農薬規制しても,誰がそんなもの守るものか!

140730 ■資本主義農業(写真:philosophers-stoneより)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/07/30 at 13:53

カテゴリー: 経済

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ネパールの農薬汚染,中国が報道

1.ネパール野菜の高濃度残留農薬
中国の新華社通信記事(7月18日)によれば,カトマンズの野菜の14%から,WHO基準を大幅に超える農薬が検出された。胡椒,ニガウリ,ほうれん草,ジャガイモ,トマト,タマネギなど。検査したのはネパール農業開発省。

農業開発省のJM.カナル氏は,新華社記者インタビューに,「ネパールの農業が化学製品依存になってしまったのは,実に残念だ。・・・・消費者を守るため,厳しい対策をとることにした」と語っている。

ネパール農作物の農薬汚染については,以前から問題にされていた。農薬輸入はこの10年で7倍になっている(Gorkhapatra,1 Jan.2014)。しかし,むろんネパール全土が農薬汚染されているわけではない。農薬多用は,伝統農法の地方貧農ではなく,消費者向け商品農作物を作っている,多少とも資本主義化した農家だ。生活の都市化と,農業の近代化・資本主義化が,農薬まみれ農作物を生み出しているのだ。

ネパール近郊農業 ■ネパール都市近郊農業

2.自然離反の農業近代化
農業の近代化・資本主義化は,一般に,農業の自然からの離反,化学肥料・農薬依存をもたらす。この自明の理をわきまえず,上から目線で,優越感にむせびながら,たとえば「上海福喜食品」事件など,中国の食品問題を一方的に非難するのは,天に唾するもの,小国の小児,みっともないことこの上なし。

論より証拠,八百屋やスーパーの生鮮食品売り場にいけば,品定めに余念がない多くの買い物客を目にすることができる。品定めの基準は,(1)安い,(2)大きくて形が良い,(3)新鮮で美しい。(「味」はむろん重要だが,これは食った後でなければ,分からない)。

これが農作物の「商品」としての評価基準であることに間違いはなく,そうであるなら,商品生産者たる農家が,その基準に合わせて,「商品」としての農作物を作るのは当然ではないか。

3.自業自得の日本消費者
かつて高度経済成長期の日本では,すべてとはいわないが相当数の農家が,出荷用と自宅用を分けて栽培していた。出荷用には,化学肥料をたっぷり施し,農薬をふりかけ,大きくて美しい「商品」としての農作物を作った。自宅用は,有機肥料で,無農薬か低農薬で育てた。当然,自宅用は,形が悪く,虫に食われ,切ると中から青虫などが出てくることもあった。それでも農家は,自宅用には,そうした農作物を作り食べていた。安全だと知っていたから。

近くの町の人々も,日々の農作業が見えるので,できるだけ自然な農作物を買って食べようとし,農家もそれが分かっているので,近くの人々には自家用かそれに近い農作物を売るようにしていた。

が,遠くの都市住民の健康のことなど,知ったことではない。都市住民は,農作業のことには関心がなく,目の前の「商品」としての農作物をただ買いたたくだけ。農家としては,消費者の品定め3基準に合わせなければ,農作物は売れない。かくして,日本の農業も化学肥料・農薬依存となった。これは全部,消費者自身が求めたこと。

4.食の安全はカネで買え
食の安全をいうなら,カネをだせ! 形が悪くても,虫食いでも,青虫が出てきても,文句言うな!

そもそも,日本企業は,中国産の食材・食品に,いくらカネを払っているのか? タイから,鶏肉やエビをいくらで仕入れているのか? 安全なものが食べたいなら,自分の目の届く身近なところでつくられる食材・食品を,適正なカネで買い,食べるべきだ。

食材・食品を単なる「商品」と見なして買いたたく資本主義社会の「根無し草」市民なら,多少の農薬,多少の異物,多少の賞味期限切れなど,我慢せよ。すぐ死ぬわけではないのだから。

140728 ■農薬汚染風刺画(Nepali Times, 2014-07-28)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/07/29 at 10:50

カテゴリー: 経済

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半裸女洗車からチベット鉄道まで

現代資本主義が,二宮尊徳型勤勉でも,ピューリタン型天職でもなく,タブーなき「欲望の体系」だとするなら,共産党以外のタブーなきがごとき中国こそが,21世紀世界経済の覇者となるであろう。

140727a 140727c
 ■人民日報ツイッター 半裸女洗車チベット鉄道

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/07/27 at 10:26

カテゴリー: 経済, 中国

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韓国以下の生活水準,日本

国民生活の豊かさを比較する方法はいくつかあるが,国際的に最も広く用いられているのが,UNDP(国連開発計画)のHDI(人間開発指数)。その2014年版で,日本は,韓国,香港,シンガポールに追い抜かれ,世界第15位に転落した。(ネパールは145位)

 140725d■UNDP-HP

日本のHDIは長らく世界10位以内,最上位国グループに属していた。韓国,香港,シンガポールは22~40位くらい(1980~2004年)。ところが,日本は急速に没落し,これらアジア3カ国に追い抜かれてしまったのだ。

中国は91位なので,まだかなりの差があるが,学術,商工業とも発展は目覚ましく,日本が抜かれるのもそう遠くはあるまい。

ここで,最近の目に余る嫌韓,嫌中への疑問が氷解した。日本人は韓国や中国がねたましいのだ。屈折した心理。自信喪失,劣等感の裏返しとしての,空威張り嫌韓,嫌中。実にあさましい。

そもそも日本の戦後高度経済成長が異常であったのであり,いまは,そのバブルがはじけ,生活が正常に戻り始めたところ。5千万程度の人々が,日本の田畑や山や海の許容範囲内で,質本位のそこそこの生活をする。これこそが,小国日本の正常な姿だ。

日本人も,大英帝国衰退期の英国人に習い,虚栄の終焉を粛々と受け容れるべきだ。それこそが,「やせ我慢」の美学であり,小国日本の堅持すべき矜持であろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/07/25 at 12:26

カテゴリー: 経済

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中国の周辺外交

中央公論8月号に,川島真「ネパールから見た中国の『周辺外交』」が掲載されている。それによると,中国の対ネパール政策は,「相対的に慎重で控え目」であり,「影響力は限定的」だという。

たしかにそうだが,問題は,近年の変化の量と質にあるのではないか? 中国の近年の経済進出はすさまじい。日用雑貨以外にも,たとえば,24日付ロイターによれば,中国は2020年までに,ネパール国境と,ブータン/インド国境まで,青蔵鉄道(チベット鉄道)を延伸する計画だ。

また,ネパール水資源でも,中国はインドと激突しそうだ。近年のこのような激変をどう評価すべきか? 

ネパールはインド勢力圏であり,チベット問題への介入さえ防止されれば,それ以上は関与しないという伝統的対ネパール政策を,中国は継続しているのかどうか? ここが,よくわからない。

140724 ■エネルギー省

【追加2014-7-25】(Republica, 2014-7-24)
(1)青蔵鉄道シガツェ線,8月営業開始。
(2)シガツェ~Kuti/Kerung(ネパール国境),シガツェ~Yadung(インド/ブータン国境),2020年延伸予定
                                       
 140725c

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/07/24 at 20:02

3 teenagers arrested for hurling eggs at Nepalese student

TOSU, Saga — Three teenagers have been arrested for allegedly hurling eggs at a Nepalese student studying at a Japanese-language school here earlier this month, police said.

The three youths….stand accused of assault. Officials of the Japanese-language school say 19 of its students from Nepal, Vietnam and Sri Lanka, have been targeted in similar attacks since December last year….(May 27,2014, Mainichi Japan)

これは,5月20日夜のネパール人留学生襲撃事件を伝える英字新聞だ。生々しい。

佐賀県鳥栖市では,昨年末頃から外国人留学生に生卵を投げつけたり,マヨネーズをかけたり,さらにはエアガンで撃ったりする事件が,続発していた。被害学生は,ネパール人,ベトナム人,スリランカ人ら19人で,なかには国籍を確認してから襲撃した事件もあったというから,悪質だ。

鳥栖署は5月26日,ネパール人留学生襲撃容疑で少年3人(18-19歳)を逮捕し,6月13日,佐賀地裁に送致した。

このアジア人留学生襲撃事件の背後には,嫌韓,嫌中などアジア人蔑視,アジア人差別の風潮の蔓延があると見てよいであろう。自分もアジア人のくせに,日本人は別格,「名誉白人」らしい。

この風潮を暗黙裏に応援しているのが「外国人実習(研修)制度」。外国人を安上がりの使い捨て労働者として酷使し,しかも国内に居着かれると困るので数年で国外に追い返す。

日本政府が公正な扱いをしようとしないので,当然,いわゆる「不法就労」が増える。そこで,たとえば,このような警告が出されることになる。

     外国人の不正就労防止にご協力ください [佐賀県警]
不法就労活動とは 在留資格を持って在留する外国人が資格外活動許可を得ることなく行う活動です。・・・・
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むろん佐賀県警は,規則に則り善意で作成し掲示しているのだろうが,情緒的排外主義の高まりの中で,このような広報が愛国青少年の愛国心を刺激することは避けられまい。

また,鳥栖市の方も,どこまで本気で外国人差別問題と取り組むつもりか疑わしい。ネパール人襲撃事件を受け作成され配布されたとされるチラシが,これ。(⇒原本pdf)

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【参照】毎日5月27日;朝日デジタル6月11日;朝日7月19日;読売6月14日;西日本新聞5月28日,6月17日;佐賀新聞7月15日

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/07/20 at 18:55

新舟60,レーダー故障

中国プレゼントの新舟60(MA60)が7月15日,レーダー故障で飛べなくなった。方角が分からなくなり,管制との交信も不能となったというから,恐ろしい(ekantipur,16 Jul)。

6月30日のビラトナガルでの鳥衝突事故では,プロペラが破損し交換せざるをえなかったそうだから,これも当初の報道から想像する以上に危険な状況だったわけだ。

新舟60は,新型機というわけではない。その割には故障が多い。ネパールの技術者は優秀なので,ネパール流に工夫し,いずれ自家薬籠中のものとするだろうが,それまでは少々心配である。

140718ミャンマーMA60事故(2013年,planecrashes.org)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/07/18 at 15:58

カテゴリー: 旅行, 中国

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