ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

フセイン処刑とネパールのマルチプル基準

谷川昌幸(C)

フセイン元大統領絞首刑に対し,マオイストが真っ先に非難声明(12/30)を出した。「処刑は国際人道法と基本的生存権を侵害する行為だ。」イラク政府は「傀儡政府」であり,処刑は「人権とデモクラシーに対するアメリカのダブルスタンダードの露骨な実例」だ。

えらい。まさにその通り。アメリカは国際戦争法,国際人道法を無視してイラク攻撃を開始し,多くの市民を殺し,傀儡政府をつくり,自らの諸悪を隠蔽するため大あわてでフセイン氏を処刑した。これは私刑だ。フセイン元大統領を有罪とするなら,ブッシュ現大統領も同罪だ。

マオイストはこの露骨な巨悪に素早く反応した。そして,ネパールでは,マオイストごときに人権,人道を独り占めさせるのはまずいと思ったのか,コイララ首相(NC)やオリ副首相(UML)までがフセイン処刑非難を表明した。ネパールは,マオイストから政府,NC,UMLまで,人権第一,人道至上の国なのだ。人を殺してはいけない。

が,残念なことに,立派なのは口だけで,行動がともなっていないのではないか? 人民戦争弾圧のため,警察を動員して多数のマオイスト(と見なされた村人)を拷問,虐殺した政党政府。これに対抗するため,やはり多数のスパイ(と見なされた反M派)を拉致,監禁,拷問,虐殺し,また子供兵を大量使役してきたマオイスト。

ネパールの政府も諸政党も,二重基準どころか三重,四重基準だ。おまけに,いまや国連傀儡政権となりつつある。

だから,いくら立派な憲法をつくってみても,おそらく守られないだろう。規範が全く内面化されていないのだ。その点,さんざん悪口をいってきたが,やはりピューリタンは偉い。そして,ピューリタン的ヒンズー教徒のガンジーも偉い。いずれも規範を内面化し,その通り生きようとしている。悪口をいいつつも,その頑固さには,感服させられる。いずれもお付き合いしにくい人たちだが,自らの規範に忠実たろうとしているから,その行動を理解し,説明し,そして予測することが出来る。その意味では,彼らは十分に信用できるのだ。

* eKantipur, Dec.30.

Written by Tanigawa

2006/12/31 @ 18:23

カテゴリー: 政治

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