ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

自衛隊派遣応援のNHK報道番組

谷川昌幸(C)

NHK「ネパール国づくり,自衛隊も派遣検討」(2月4日)を見た。15分番組だったが,これまでの報道に比べ,はるかによくまとまっていた。しかし,いくつかの問題と,決定的な間違いがある。

冒頭,トリブバン空港から日本調査団員5.6名がダークスーツ,ネクタイ姿で出てきた。庶民から見ると,ちょっと異様な雰囲気だった。むろん着替えはされるのだろうが,市ヶ谷や霞ヶ関をそのまま持ち込んだような浮いた感じで,これでネパール治安情勢という「妖怪」の調査がどこまで出来るのかなぁ,と不安に感じた。これはNHKの責任ではない。

内容についてみると,まず気になったのが,「共産党毛沢東主義派」が冒頭で一度出ただけで,あとはもっぱら「武装勢力」。これはあまりにも不自然。1,2年前までは,マオイストについて語ると,まるでテロリスト同調者扱いされた。これはその正反対。「マオイスト」と呼ぶと,悪の枢軸みたいで自衛隊派遣に具合が悪いので,価値中立的にみえる「武装勢力」を用いる。「武装勢力」とはいったい何だ! 国軍だって立派な武装勢力ではないか。これは意図的ごまかし。

「ネパールの国づくり」の説明では,「王政存続の是非」と説明されたが,これは間違い。「王政」と「王制」は同じではない。「王政」は昨年4月,国王自身が否定し,議会宣言でも暫定憲法でも完全に否定されている。これは周知の事実。日本は天皇制だが,天皇政ではない。天皇が政治をしているわけではないからだ。制憲議会の主要課題の一つは,正しくは「王制存続の是非」である。

イアン・マーチン国連ネパール監視団代表への道傳さんのインタビューについても,明白な世論誘導がある。

マーチン代表は,公式論で当たり障り無く答えていた。むろん「選挙戦」が一種の「戦争」であることなど(アフガン,イラクを見よ),おくびにも出さない。さすが老練だ。

これに対し,道傳インタビューの字幕は,「派遣が検討されている自衛隊に何を期待する?」だった。「検討されている」がついているが,文脈上は既定方針であるかのようなインタビューであり,明らかに日本国内の世論誘導が目的だ。

この番組は,自衛隊派遣の問題点については,一切触れていない。調査団は,それを調べるために派遣されたのであり,まさにそれこそがこの番組のテーマであったはずなのに,まるで自衛隊派遣を既定方針であるかのように報道している。ましてや,自衛隊海外派遣の違憲性についての議論などひとかけらもない。巧妙な論点のすり替え,悪質な世論誘導だ。

NHK報道の危険性は,朝日記事と同じく,一見公平中立と見せかけながら,実は「自衛隊を派遣せよ」という政治的主張をしていること。産経や読売がこの主張をするのなら,そのつもりで読むから,それほど問題はない。ジャーナリズムとしては,後者の方が立派だ。警戒すべきはNHKや朝日。公平,中立を装った報道や記事が世論をどちらに誘導しようとしているのか,全体の文脈をよく見て見極め,批判すべきはきちんと批判すべきだろう。

Written by Tanigawa

2007/02/05 @ 13:19

カテゴリー: 平和

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