ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

チュラ食文化の未来

谷川昌幸(C)
カトマンズ東方の村への途中で,チュラ製造所を見つけ,少し買い求めた。谷間に小さな小屋があり,一家でチュラを製造していた。
 
チュラの製法はいたって簡単,蒸し米を圧延し,乾燥させるだけ。製造直後は,香ばしくて,そこそこ美味いが,冷え乾燥してくるとお世辞にも美味いとはいえない。
 
ネパール食文化の知識は皆無に近く,実際にこれがどのように食されているのか具体的には知らないが,想像するに,おそらく保存食として重宝されてきたのだろう。そして,チュラが大切な食品であれば,当然それにまつわる食文化の伝統もあるにちがいない。
 
しかし,このチュラ食文化は,近代化により,早晩,廃れてしまうだろう。近代的食品は保存が利き美味いが,チュラは残念ながらまずい。近代的食文化を知っている私は,チュラの未来をほぼ正確に見通すことができる。だから,人の良さそうなチュラ製造一家に対し,「チュラに未来はない,早く転業した方がよい」とアドバイスするのは簡単だし,親切でもある。これは間違いない。だが,外部の人間が先進国の高みから,そんなことを言ってよいのだろうか? これは難しい問題だ。
 
結局,私は自分が基本的には無責任な傍観者であり,心のどこかでその立場を楽しんでいることに改めて気がついた。このチュラ製造所は,いずれ廃れていくであろう。それは一つの文化の黄昏であり,傍観者には哀しくも美しい光景と見える。この美しさを「いとおしむ」のは,傍観者のエゴイズムだ。
 
(写真1)チュラ。この製造所の製品。製造後,2週間。
(写真2)谷間のチュラ製造所
(写真3)チュラ製造機

Written by Tanigawa

2007/10/11 @ 17:41

カテゴリー: 文化