ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

チベット弾圧に加担するネパール「人民」

谷川昌幸(C)

1.チベット系住民弾圧の違法性
ネパールでチベット系住民弾圧が続いている。HRW(26 Mar)によれば,警察は,チベット系住民を逮捕や中国送還で脅し,また平和的抗議参加者を殴るなど不当な権力行使をしている。
 ・3月24日 461人逮捕
 ・3月25日  73人逮捕
ネパール政府のこのような権力行使が,国際人権法やネパール憲法そのものに違反していることは明白だ。

世界人権宣言
第19条 すべて人は、意見及び表現の自由に対する権利を有する。この権利は、干渉を受けることなく自己の意見をもつ自由並びにあらゆる手段により、また、国境を越えると否とにかかわりなく、情報及び思想を求め、受け、及び伝える自由を含む。
第20条1 すべての人は、平和的集会及び結社の自由に対する権利を有する。

ネパール暫定憲法
第12条(3) すべての市民は次の自由を有する。 (a)意見・表現の自由,(b)平和的非武装集会の自由

2.マオイスト系「準官報」で中国支持示唆
ここで,まったくもって不可解なのがネパールの政府と諸政党。報道を見るかぎり,彼らはネパール在住マイノリティであるチベット系住民の当然の自由や権利を守るどころか,その弾圧に加担しているようなのだ。

御用新聞Rising Nepal(Gorkha Patra)は,いまや「マオイスト準機関誌」とさえウワサされている。そのライジング・ネパールは,中国大使館声明をそのまま掲載し,弾圧協力の姿勢を暗示した。これは,全文掲載に値する。「準官報」だから,著作権はないだろう。

Tibet govt condemns criminal activities  [Rising Nepal,2008-3-17]
By A Staff Reporter

Kathmandu, Mar. 16: The government of the Tibet Autonomous Region of China (TAR) has condemned the violent activities being perpetrated by a small criminal group in Lhasa and has warned that it would take stern action if such violent activities are not stopped immediately.

A small group of people in Lhasa have started violence involving beating, smashing, looting and burning which has disrupted the public order and jeopardised people’s lives and property, a press release issued by the Embassy of China in Kathmandu said.

"There are enough evidences to prove that the sabotage was organised, premeditated and masterminded by the Dalai clique and such action has aroused locals’ dissatisfaction and been condemned by peoples in Tibet," the press statement said.

"The concerned departments of TAR are legally taking effective measures to properly handle this riot. We are fully confident of maintaining the social stability in Tibet and ensuring the safety of peoples’ lives and property," the statement reads.

The smallest group of people’s attempt to destroy Tibet’s stability and harmony has no foundation and is doomed to fail, the statement said. 

これもマオイストの検閲を受けているとすれば,彼らはこのような中国政府の政策を暗に支持しているということになる。これこそが,マイノリティの友,民族自治の旗手ネパール共産党マオイストの,チベット弾圧に対する態度なのだ。(マオイスト,中国のチベット弾圧支持か? 参照)

ちなみに,ネパール政府がエベレスト登山を禁止した本当の理由は,エベレスト山頂にチベット旗が立つのを恐れたからだ(と思う)。世界最高峰エベレストの山頂には,中国=ネパール両国「人民」の赤旗が立つべきなのだ。

3.沈黙か寡黙の諸政党
マオイストの中国政府支持はほぼ間違いないが,他の諸政党はほぼダンマリを決め込んでいる。目の前でマイノリティの自由・人権が大問題になっているというのに,自分たちの政府がマイノリティを大弾圧しているというのに,なぜダンマリなのだ!

それでも,UMLは声明を出し,多少はしゃべったようだ。
「わが党は,つねに一つの中国政策をとってきた。ネパールでは,いかなる反中国活動も許されるべきではない。」(Nepal News Net, 17 Mar)

コングレスもどこかで何か言っているかもしれないが,今のところ見つからない。

4.マイノリティを守らない「人民」
6党+マオイスト政府によるチベット系住民弾圧は,loktantra=「人民」主権政府の未来を暗示している。

権力が「人民」のものになれば,「人民」ではないマイノリティの自由や権利は守られない。マイノリティ弾圧は,これまで以上に厳しく容赦ないものになるであろう。マイノリティは,「人民」への同化か,国外脱出の準備をするのが賢明であろう。

Written by Tanigawa

2008/03/27 @ 11:46

カテゴリー: 外交

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