ネパール評論

ネパール研究会

悪魔の代理人,ジャー副大統領

谷川昌幸(C)

ジャー副大統領は,「悪魔の代理人」となり,ヒンディー語宣誓により,ネパールを大混乱に陥れるのか。(「悪魔の代理人」については宗教事典参照) ことばは「言魂」であり,宗教よりも根源的。ヨーロッパでも,宗教よりも言語が原因となり,各地で紛争が頻発,収拾がつかなくなっている。

ネパール暫定憲法第5条は,次のように定めている。

  (1)ネパール人のすべての母語は「国民言語」
  (2)公用語はネパール語
  (3)地方機関では母語を使用できる
*ただし,第5次改正の正文が手元にないので,この部分の改正があったかどうかは不明。

この憲法第5条を厳密に解釈すれば,母語の公的使用は地方機関に限定され,国家レベルでは使用できない。また,使用できても自分の母語だけである。ジャー副大統領は,元最高裁判事であり,こうしたことは十分わかった上で,「悪魔の代理人」となり,あえてヒンディー語宣誓をしたのだ。

たしかに,2006年革命=2007年暫定憲法の精神からすれば,ネパール語だけに特権的地位を与えることはできない。また,何が母語かは,結局は,本人が決めるべき事柄である。ジャー副大統領のヒンディー語宣誓は,母語-地域共通語-国家語の関係,つまりは民族自治,連邦制の在り方にたいし,悪魔的・原理的な挑戦状を突きつけているのだ。

言語問題ではEUですら手を焼いている。お隣のインドは比較的うまくやっている。さて,ネパールはどうなるか? やはり,副大統領の思惑通り,インドの教えを請うことになるのか?

▼ジャー副大統領の反論(追加)

  (1)ヒンディーはネパール人の母語
  (2)ヒンディーはマデシの共通語

Written by Tanigawa

2008/07/26 @ 10:56

カテゴリー: 文化

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