ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

天声人語の血液型性格論

谷川昌幸(C)

朝日新聞(12/17)の「天声人語」が,摩訶不思議な血液型性格論を展開している。正体見たり,だ。

議論は,造血幹細胞移植でA型からO型に替わった市川団十郎氏をダシにして,警戒するふりをしつつ,結局は血液型性格論を肯定している。

「定め(血液型)に身を任すのは,最後の最後でいい。」

血液型性格論や血液型優生学は,血液型がストレートに性格や行動に反映するなどといった馬鹿げたことを主張しているのではない。そんな単純な議論なら,誰も引っかからない。(血液型人事をやっている馬鹿な企業があることはあるが。)

血液型性格論や血液型優生学が恐ろしいのは,人々の性格や行動の基底が結局は血液型にあると主張し,科学的反証を難しくしている点にある。性格や行動の決定要因は無数にあり複雑に関係しているはずなのに,血液型性格論や血液型優生学はそれらをうやむやにし,科学手品的手法でもっともらしく血液型に還元し,説明しようとする。エセ科学の,危険きわまりない血液型基底還元論である。

朝日は,社をあげて,血液型優生学を支持している。いや,それはいいすぎだというのであれば,少なくとも,血液型優生学を応援してきた過去の過ちを訂正しようとはしていない。

市川団十郎氏の会見は見ていないが,天声人語氏の引用で見る限り,団十郎氏は血液型優生学を原理的に否定する趣旨で発言されている。団十郎氏は,A型だろうがO型だろうが芸は変わるものではない,芸は血液型などといった自然必然によるものではなく氏自身の努力による「芸=art」にほかならない,という確固たる自信に基づき発言されているようだ。

それなのに天声人語氏は,団十郎氏の病気をダシに血液型性格論を紹介し,結局はそれの宣伝に手を貸しているのだ。

たとえ一億人の「人声」が血液型優生学に与したとしても,それは決して「天声」ではない。かつてある首相が喝破したように,「民の声にも変な声がある」。朝日は,騒々しい巷の「変な人声」ではなく,本物の「天声」にこそじっと耳を傾けるべきではないだろうか?

【参考】
2008/10/16  血液型優生学を粉砕せよ
2008/06/29 朝日の血液型優生学
2006/10/08  カースト差別より危険な血液型差別  (「血液型の記載,記事には不要」朝日新聞西部本社版)。

Written by Tanigawa

2008/12/18 @ 11:13

カテゴリー: 文化

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