ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

ネパール養子,サンタにもらわれアメリカへ

谷川昌幸(C)

国際養子の制度も実態もよく知らないし,ましてやこのARK(Aiding & Rescuing Kids)も初めて目にする組織だ。だから,見当違いもあるだろうが,HPの宣伝を見ると,あまりにもショッキングで,驚きを禁じ得ない。こんなことをしていてよいのだろうか?

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1.養子・里親の必要性
子供たちの中には,様々な理由で親に養育されず,福祉施設や里親に養育されたり,養子として育てられる場合がある。それは,そうした境遇にある子供たちにとって必要不可欠の制度であり,救いである。

たとえば,SOSは国際的に著名な組織で,ゼミ学生の研究を見ても,その里親制度が高く評価されている理由がよく分かる。
 *衣川あい 「社会的養護と愛着形成―フィンランドの実践から学ぶもの―」

しかし,ARKのHPを見ると,ちょっと違うようだ。どうしようもない違和感を感じる。

2.子供の選別
ARKによれば,子供を養子にするには,まず「子供を選ぶChoose Your Child」ところから始まる。これは,5歳以下の「夢のような子供the child of your dream」を手に入れる最善の方法だ。

ARKは,子供の健康等の詳しい情報を提供し,希望者は,それに基づき,子供を選別する。写真だけだと,期待はずれで,失敗することが多い。手続は次の通り:

→希望国の選択
→養子選別プログラム申し込み
→手数料支払い(イリノイ事務所へ)
→養子情報提供,手続代行
→選別した国を訪問
→養子候補の子供たちの写真等を閲覧
→選別した子供と面接。気に入らなければ,別の子供たちを見て,その中から気に入った子供を選別。ARKが支援。
→養子選別後の手続はARKが代行
→養子(1人または数人)をつれ,帰国

養子の実態は,おそらく,こうしたものだろう。しかし,養子提供側と養育側との間に大きな経済格差があり,しかも間に民間仲介組織が入ると,率直には善意を信じられなくなる。

不謹慎な表現だが,正直に告白すれば,数年前,子犬を買うためペットショップに行ったときの気分に近い。買い主(飼い主)となる私は,圧倒的な優越者,買われるのを待っている子犬たちは,無力な弱者。美しく健康で気だてのよさそうな子犬を選んでいる私。

相手は子犬だ。が,選別している自分の,そのあまりの利己的傲慢さ,卑劣さ,醜さに,自嘲的とならざるをえなかった。子犬にとって,買われる方が買われないよりも幸せに決まっているが,しかしそれでも,ペットを選別して買い,飼うことの不正義感は,どうしても拭いきれない。

ましてや国際養子は,人間の子供たちだ。その必要性,そして養子とされる子供たちの幸せは,十分に分かる。分かりすぎるくらい分かりはするが,たとえば,下図のような養子写真を見ると,果たしてARKは途上国の子供たちを人として本当に尊重しているのかどうか,疑問に感じざるをえない。

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3.ネパール養子の有利さ
ARKが,養子提供国として特に推薦しているのが,ネパールだ。

「ネパールからの養子には多くの利点がある。ネパールは貧しい国だが,子供たちは,あまり虐待やネグレクトされることなく,非常によい状態で育てられている。赤ちゃんや幼児を希望する人には,ネパールは絶対お勧めだ。アル中も少ない。
 ネパール養子は,結婚している人でも未婚の人でも可能だ。ネパール養子は,カトマンズのネパール政府の管轄になる。公立孤児院からと私設孤児院からの二種類の養子制度がある。ネパール養子プログラムには利点が多い。」

「養子可能なネパールの子供:乳幼児から十代までの子供。兄弟姉妹も可能…. 養育側:単身母は可。養父母は55歳以下。すでに子供がいる場合は,ネパール政府規則により,自分の子供とは別の性の子供。子供のいない家族には,異性の兄弟姉妹を養子にすることも可。別の性の子供2人を持つ家族は,ネパールでは養子をとれない。」 (http://www.adoptionark.org/public/pag24.aspx)

ネパール養子受入の手順:

→ARKへ,ネパール養子申し込み。手数料支払い
→希望に沿う養子候補情報の提供
→その情報に基づき子供選別。あるいは,ネパールに行き,孤児院で子供選別。ネパール側管轄は,女性・子供・社会福祉省
→子供を選んだら,手続はARKが代行
→裁判所の審査,決定
→アメリカ大使館がビザ発給
→養子を連れ,帰国

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4.そして,クリスチャンに
養子は,繰り返すが,必要な制度である。現実的でもある。そして,養子としてアメリカに連れて行かれた子供たちの多くも,幸せであろう。それは,分かってはいるが,やはり,どこか割り切れない。

キリスト教では,子供は両親の子供ではなく,神からの預かりものだ。だから,何らかの理由で子供の養育が出来なくなれば,神は子供を親から取り戻し,別の人に養育を委ねる。キリスト教の下では,養子は,完全に正当化されている。

しかし,ネパールの子供の多くは,キリスト教の神の子供ではない。ネパール文化には,子供についての,全く別の観念がある。そのネパール文化から見たとき,圧倒的な経済的・政治的・軍事的優位にあるアメリカの,この養子制度は,どう映るのであろうか?

多くの子供たちの中から選別され,アメリカに連れて行かれ,キリスト教化され,サンタクロースに抱かれている,この子供は幸せだろうか? きっと幸せだろう。きっとそうだろう。だが,….

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Written by Tanigawa

2008/12/29 @ 13:23

カテゴリー: 人権

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