ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

ネパールの自力更生から学ぶ

谷川昌幸(C)

1.バクチ資本主義に茫然自失
アメリカ自由市場経済は,しつこく指摘してきたように,いかさま賭博である。
  ネパールとホリエモンに学ぶ恐慌時代の生き方
  ホリエモンの高貴さ,政財界の卑俗さ
  ホリエモン・バブル破裂とネパール的生活再説
  ホリエモンの偉さとネパール的生活再々説
  ギャンブル経済とネパール的生活
  通貨植民地日本とワルとネパール

胴元のアメリカは,いかさまがばれたとたん,さっさと保護主義に転向したが,お目出たいのが日本,しこたま非兌換ドル札を握らされ,右往左往するのみ。

2.搾取され放題の日本労働者
その日本でも特にお目出たいのが,われら小国民。先輩たちが,汗と血を流し獲得してくれた労働者の諸権利を,資本家どもに手もなく騙され,あっさり放棄してしまった。いま話題の派遣労働など,人間を「有声の道具」(古代ギリシャの奴隷の別称)としてしか見ていない。

少なくとも10年前頃までは,労働者の権利保障のため闘うことが出来た。不肖私も,仲間と協力し,非常勤職員の地位を期間の定めのない雇用として認めさせることが出来た。

3.闘わない労働者
ところが,いまの日本の労働者には,団結し闘うだけの才覚も気力もない。丑年の労働者たちは,従順そのもの,「生」を支配する「生権力」の命ずるままに日比谷公園から厚労省講堂に移され,次は講堂から廃校の体育館に移され,そして・・・・。

なぜ,生存権保障義務のある厚労省の講堂をそのまま占拠し,生存権を勝ち取るまでそこで闘わなかったのか? なぜ,他の労働者たちは,もっと連帯し,彼らの救済のために立ち上がらないのか?

4.労働者の自己責任
あえて言おう。いまの日本の労働者たちの苦境は,闘うことを忘れた私たちの自己責任,自業自得だ。政府や企業に救済をお願いするなどといったみっともないことは,やめよ。そんな暇があったら,団結し,闘え。自力更生だ!

5.ネパールの自力更生
自己責任,自力更生といえば,本場は何といってもネパール。政府が全く頼りにならないので,ほぼすべて自己責任,自力更生の毛沢東精神が自然発生的に生まれ,人々に共有されている。実にたくましい。

自力更生のネパールでは,政府はセーフティネットなど張ってくれないので,それぞれの人が血縁・地縁を総動員し,自前のネットを何重にも張っておく。病気や怪我,あるいは土地争いや交通事故でも,原則として自力救済,ときにははた迷惑ではあるが,そうしなければ生きられず権利も守られないのだから,仕方ない。

ネパールの生活は不安なように見えるが,血縁・地縁のセーフティーネットをもっているので,見方によれば,将来への安心感は日本よりもむしろ大きいのではないか。

6.権利のための闘争
権利のために闘う気力のない人や社会は,自己責任により,無権利の「有声の道具」状態に陥る――ネパールでも日本でも。

(参照)イエーリング『権利のための闘争』岩波文庫

Written by Tanigawa

2009/01/06 @ 22:27

カテゴリー: 経済

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