ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

対日ネパール人輸出,あるいは新三角貿易

  谷川昌幸(C)

こんなことを書くと,ネパール人や親ネ邦人にボコボコに叩かれるだろうが,玉砕を恐れていては,新帝国主義戦争は戦えない。いざ出撃!

1.輸出商品としての「ネパール人」
ネパールの最大の輸出商品が労働者であることは,いまや周知の事実。近代化のおかげで,ネパールの人々は労働力を商品化され,価格をつけられ,国内市場はないから,海外市場へと輸出されている。

もちろん都合良く労働力だけを切り取って売るわけにはいかないから,生身の人間を家族や故郷から切り離し,その身体ごと外国に売り渡す。極論すれば,これは「現代の奴隷貿易」だ。

2.労働者輸出で,贅沢品輸入
この労働者輸出により得た外貨で,何を買うか? もちろん特権階級の贅沢品だ。輸出された労働者たちの汗と涙がガソリン・灯油や電気・車になり,特権階級の生活を豊かにする。

あるいは,不動産投資となり,都市バブルをふくらませる。外国に売り飛ばされた同胞の汗と涙が,金に化け,彼らとは無縁の高級マンション,高級分譲地,高級ブランド店となっている。

中東バブルは,石油価格暴落で,はじけた。ネパール・バブルは,輸出向け労働者の枯渇か価格低下で破裂する。これは必然。

3.労働者の対日輸出
それなのに,信じられないかもしれないが,いまネパール人民を「資源」扱いし,「輸出」を推進しようとしているのは,人民の友,マオイスト政府自身だ。

1月17日,レクラジ・バッタ労働大臣(マオイスト)が,ある会合(詳細不明)に出席し,ネパール人労働者の対日輸出の促進を訴えた。カンチプル(1/17)によれば,バッタ大臣はこういっている。

「研修労働者を日本に送る準備はほぼできた。」
「人間資源(human resources)の対日輸出(export)に必要な政令は数日以内に出す。」

これはマオイスト大臣が言っているのだ。コングレスのボスではない。

このネパール人労働者の輸出・輸入に関わっているのが「ネパール商工会議所(FNCCI)」と「日本国際研修協力機構(JITCO)」。いずれの組織のこともよく知らないし,善意は疑わないが,この労働者貿易が要注意であることは間違いない。

非居住ネパール人会のカピル・タパ副会長もこういっている。

「日本は,ネパール人労働者の輸入(import)を待ちこがれている。」

4.研修労働の実態
外国人研修生制度の実態は,専門外なのでよく分からないが,少なくとも新聞報道では,「研修」は名ばかりで,体のよい最低賃金労働,なかにはパスポートを取り上げられ,タコ部屋のような所に監禁され,半強制的に働かされるところもあるそうだ。「現代の奴隷制」という批判もある。

外国人研修制度は,もともと日本の高度な技術を働きながら学ぶという趣旨。その趣旨通り運用しているところもあるにはあろうが,資本主義の倫理と論理からして,そんなことがどこでも実行されているとはとうてい思えない。

いま無慈悲に解雇されているのは,外国人労働者や非正規労働者。外国人研修生は,その彼らよりも下,使い捨て自由の半強制労働,資本家にとっては最も好都合な最下層労働者である。

5.ネパール・日本・中国の新三角貿易
ネパールが労働者の対日輸出(「新奴隷貿易」)を本格化させれば,ここに新しい三角貿易が生まれてくる。

90119

ネパールは日本に「人間資源」を輸出し,その代金で中国から中・低度工業製品(衣料・雑貨・家電など)を輸入する。中国は,その代金で日本から高度工業製品や資本を輸入する。日本はその代金で,ネパールから労働者(人間資源)を輸入する。

こうして,美しい新帝国主義の聖なる三角形ができあがる

Written by Tanigawa

2009/01/19 @ 23:21