ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

王政復古の可能性

谷川昌幸(c)

この2,3日,ネパールの人々と話しをしていると,王政復古がしばしば話題に上る。いま各党要人がインドに行っているが,そこで王政復古が話し合われているというのだ。

 

王政復古といっても,ギャネンドラ前国王ではなく,孫か他の元王族の誰かを担いで王位につけるという案である。

 

その場合,憲法は1990年憲法の改正復活となるか,あるいは国王を完全な象徴とする立憲君主制憲法の制定のいずれかである。1951年の王政復古はラナ将軍家からの大政奉還だったが,もし2度目の王政復古となると,今度は「人民」からの大政奉還となる。本当にそんなことになるのかどうかよく分からないが,どうやら一つの選択肢となってきたことだけは事実らしい。

 

その背景の一つは,いうまでもなく経済不況。海外出稼ぎ組が解雇され続々帰国してくる。海外送金が激減した上に,失業者が街にあふれる。そこに16時間停電のダメージ。もうウンザリ,王様のほうがまだまし、ということになってきたのだろう。

 

もう一つは,アイデンティティ紛争が泥沼化しそうな雲行きで,下手をするとタライがカトマンズから分離してしまう。それへの恐れ。こんなことなら,もう一度、御輿に王様を乗せ,とにかく皆で担ごう,ということになったらしい。

 

国家はアンダーソンがいうように「想像の共同体」。「神」,「人民」「大統領」,「党総書記」など,いずれも不合理な「権威」により成立している。誰を御輿に乗せたらよいか,そこは合理的計算で決めたらよい。「神」は不合理だが,「神」を選ぶのは,人間の合理的選択である。

 
旧王宮博物館。多くの学校からクラス単位で見学に来ていた。2009.3.13 
 
旧王宮博物館。入場を待つ人々の長蛇の列。2009.3.13

Written by Tanigawa

2009/03/13 @ 23:33

カテゴリー: 国王