ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

「インドの衝撃(2)」に衝撃なし

谷川昌幸(C)
NHKスペシャル「インドの衝撃(2),世界最大の選挙戦」(5月31日)は,優等生的つまりNHK的であり,初回のように「衝撃」的ではない。軍事(前回)と選挙(今回)というテーマの差はあろうが,それだけではないように思う。要するに,金と時間をかけていないのだ。おそらく1/10以下であろう。
 
映像を見ると,はっと息をのむような場面はないし(インドには素材は無限にある),手持ち撮影でブレているところも少なくない。 選挙戦の捉え方にしても,四方八方に遠慮し,掘り下げ不足だ。取材者側の明確な問題意識が感じられない。過度なセンセーショナリズムに走るべきではないが,濃厚味インドを「皆様のNHK」的態度で取材しても,おいしい番組にはならないだろう。
 
それでも,もちろん教えられるところは,いくつもあった。たとえば,ダリットを支持基盤とする大衆社会党のマヤワティ党首。ダリット出身女性でありながら,デリー大学卒業後,政界に入り,カリスマ的指導力を発揮し,ウッタルプラデッシュ州首相となった。今回の下院総選挙では勝利できなかったが,彼女が優れた政党指導者であることは間違いない。
 
ところが,そのマヤワティ党首は,ダリットの支持で権勢を拡大していくと,超豪華邸宅を建て贅沢三昧をしたり,自分の巨大石像を建設させたりする。ダリット出身のダリット代弁者でありながら,どうしてそのような行動をとれるのか?
 
この行動パターンは,ネパールのマオイストたちとそっくり同じだ。インド大衆社会党もネパール・マオイストも,被抑圧貧困人民の解放のために立ち上がり,生命をも賭して苦しい闘争を闘ってきた。そこに嘘偽りはない。
 
ところが,ひとたび権力の座につくと,幹部たちは,何の躊躇もなく,自分と身内の利権獲得に走り,恬として恥じない。そのアッケラカンとした利権獲得行動は,アッパレというしかない。こうした南アジアの政治家たちの行動様式はいったい何に由来するのだろうか?
 
「インドの衝撃(2)」には,これ以外にも教えられるところはいくつもあったが,全体としては,やはり平凡なドキュメンタリーといわざるをえない。初回はタイトル通り「衝撃」的であり,この番組には裏のスポンサーがついているのではないか,何かたくらんでいるのではないか,等々と深~く考えさせてくれた。危なくはあるが,「スペシャル」と銘打っているのだから,初回くらいの冒険はしてくれてもよさそうな気がする。

Written by Tanigawa

2009/06/03 @ 15:44

カテゴリー: 文化

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