ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

書評:水村美苗『日本語が亡びるとき』(1)

 谷川昌幸(C)
遅ればせながら,水村美苗『日本語が亡びるとき:英語の世紀の中で』(筑摩書房,2008)を読んだ。実に面白く,感動的。日本語への著者の深い愛情と危機感,国語政策への怒りとどうしようもない絶望がひしひしと感じられる。魂を揺さぶられる本物の評論だ。
 
水村氏は,いわば国語ナショナリストであり国語保守主義者だ。日本の植民地化を阻止し,「国家国民」を形成し維持してきたナショナリズムを,その限りで高く評価し,「国語」としての日本語のかけがえのない価値(フランス語以上!)を称賛してやまない。
 
このようなナショナリズムや国語保守主義については,あと知恵で批判する人も少なくないが,想像力の欠如も甚だしい。つい百数十年前の幕末維新の頃のこと,例えば福沢諭吉の危機感や夏目漱石の苦悩に思い至らないのだ。水村氏のようなナショナリズムや保守主義であれば,私はこれに満腔の賛意を表したい。そう,英語帝国主義にたいし,日本語は断固保守されなければならない。
 
むろん,私の専門は政治学であり,言語学や文学からの評価は出来ない。専門的観点から見ると,あるいは本書にはいくつか誤りや独断があるかもしれない。しかし,たとえそうであっても,この本が問題の本質を鋭く突き,格闘していること,したがって真に読むに値する本であることに変わりはない。
 
著者は,漱石を深く読み込み,さらには福沢諭吉や丸山眞男もきちんと読んでいる。だから,この本は近年のどの政治学の本よりも面白い。国語学者や文学者が評価しないのなら,私はこの本を政治学の必読書として学生諸君に推薦したいとさえ思っている。
 
こうした観点から,以下では読書ノート風に要点を抜き書きし,紹介してみよう。直接引用部分はゴシックで表記する。
 

Written by Tanigawa

2009/06/09 @ 20:41

カテゴリー: 文化,

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