UNMIN派遣隊員がCRF報道官に
谷川昌幸(C)
やはり,そうだったのか! UNMIN派遣陸自隊長(第1次隊)をつとめた石橋克伸1佐が,中央即応集団(CRF)司令部の報道官になっていた。
1.自衛隊とNGOとUNMIN派遣隊員
以前に紹介した田鈴香氏の記事の続編「続・ただ今,陸上自衛隊国際活動教育隊に滞在中! 集中模擬訓練「指揮所演習」始まる」(日経ビジネス,9月30日)によると,NGOのいくつかは,どうやら自衛隊に取り込まれつつあるようだ。
そして,そのNGOと自衛隊の媒介役の一人が,UNMIN派遣経験を持つ石橋1佐なのだ。吉田氏は,CRF「指揮所演習」についてこう説明している。
「次のスケジュールにあったNGOの訪問では、実際のNGO、難民支援協会の事務局次長が仮想の現場を訪れた。そして、自衛官を相手に、実際にNGOの活動との調整をするロールプレイを行った。
評価役の教官や他の隊員など衆人が見守る中できっと緊張したのだろう。NGOが繰り出す事情説明と協力の要請に、渉外担当の担当官は、「答えず拒否せず」の感じが否めない。お役所的な対応に感じられる。
日常的に人に慣れているNGO職員の方が、「では、こうすればいいのでしょうか」と、口調は滑らかだ。筆者は、隊員はNGOに助けられているな、とすら感じた。
ここは、さすがに、ロールプレイ後、先輩でネパールの国際連合ネパール支援団(UNMIN)で軍事監視員の経験を経てきた石橋克伸1佐が積極性を持って接するようにと、助言をした。」
見事な「民軍協力」だ。ネパールは「NGOの総合デパート」といってよく,そこで実地訓練をしてきた石橋1佐がNGOの扱いになれているのは当然である。
2.自衛隊に取り込まれるNGO
しかし,NGOは「民軍協力」のつもりでも,実際には丸腰NGOは,権限と金と武器を持つ自衛隊の対等パートナーではありえない。必ず,いつしか「軍民協力」になり,NGOは軍に利用されることになる。
3.米軍ー自衛隊ーNGO
この自衛隊=NGO「軍民協力」が恐ろしいのは,その自衛隊も米軍の下働きをさせられているからだ。吉田氏はこう説明している。
「武器だけでなく、計画書作成でも米国様式を共有 ・・・・なるほど、米軍様式は武器だけではなく、計画書作成というソフトにおいても共有されているのか、と気付いた。」 (ゴシック原文)
米軍は世界展開しており,しかもオバマ政権は米単独主義から国際協調主義へと戦略転換した。自衛隊はその米軍に魂(ソフト)も身体(武器)も握られ,米国が要求すれば,米軍補完のため自衛隊の世界展開を進めざるをえない。しかも,米国はソフトパワー重視に転換したから,自衛隊の世界展開は必然的に民生支援重視の「軍民協力」となる。米軍が自衛隊を利用し,自衛隊がNGOを取り込み,利用する。あまりに単純明快で,にわかには信じられないほどだ。
そして――自衛隊ネパール派遣こそが,その広告塔なのだ。
■参照
2009/09/22 自衛隊海外派遣:「民軍協力」から「軍民協力」へ
2007/08/12 格差・紛争・陸自派兵,朝日紙面の二面性
2007/08/01 防衛副大臣訪ネと搾取者日本
2007/06/12 陸自の勇姿,スワヤンブーも見守る
2007/05/04 海外派兵を煽る朝日社説
2007/04/24 軍民一体,ネパールは○,アフガンは×
2007/04/22 佐藤優「護憲論」と朝日の陸自UNMIN記事
2007/03/07 軍の自己増殖と第2次調査団派遣
2007/06/12 陸自の勇姿,スワヤンブーも見守る
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