ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

動物供犠祭への政治介入:動物権利擁護派の偽善性

谷川昌幸(C)
ヒンドゥースタン・タイムズ(Nov9)によると,バラ郡バリヤプールで5年に一度開催されるガディマイ・メラ(11月24~25日)は,約50万頭の動物を犠牲にささげる世界最大の動物供犠祭であり,500万人ものヒンドゥー教徒がお参りに来るという。
 
お祭りでは,水牛,山羊,アヒル,鶏,鳩などがガティマイ女神の前で犠牲に捧げられる。最近は,供犠禁止となったインド諸州からの参拝者が増え,供犠動物の数も増加しているという。
 
水牛や山羊の比率はわからないが,50万頭も供犠されるとすれば,ガディマイ女神の前は血の海となるにちがいない。それは,生命への畏敬と感謝の念に満ちた粛然たる情景であろう。
 
動物供犠は,他の動植物の生命の犠牲により日々生かされていることを思い起こし,他の動植物に感謝するための神聖な宗教儀式である。それは,死によって生かされている人間存在の原罪を告白し,赦しを乞い願う道徳的にも崇高な人間の行為である。
 
ところが,ヒンドゥスタン・タイムズ紙によると,このガディマイ祭に対し,動物権利擁護派が反対運動を繰り広げている。たとえば,インドの政治家マネカ・ガンディ氏らは,ネパール首相に抗議文を送り,ネパール政府がガティマイ祭に介入し動物供犠を止めさせるべきだ,と要求した。
 
こうした,主に西洋・インドからの圧力に対し,ネパール政府は宗教儀式への政治介入をきっぱり拒否した。ビム・ラワル内相は,参拝者の安全を守るため,警備要員の増員を約束したにすぎない。
 
このネパール政府の判断は,全面的に正しい。動物権利擁護派は,政府に圧力をかけ,国家の力で神聖な宗教儀式を止めさせようとしている。いくら西洋が非難しようと,そんな理不尽な要求に耳を傾ける必要はみじんもない。あえて叱られるのを覚悟でいうならば――
 
恐れおののきながら粛然と神の前で動物供犠をする人々と,愛玩犬に服を着せリードをつけて散歩している人本主義的・世俗的現代人を比較してみよ。どちらが生命に対しより真摯であろうか? どちらが,動物を本当に大切にしているであろうか? 動物供犠を非難する動物権利擁護派は,生命への畏れも,人間存在の原罪性にも無自覚な脳天気な偽善者である。
 
参照  2009/03/22 血みどろのゴルカ王宮

Written by Tanigawa

2009/11/11 @ 23:26