ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

クリスマスと神仏の闘争

谷川昌幸(C)
世俗国家ネパールのクリスマスは,どのように祝われているのだろうか? マオイスト・バンダの混乱や6時間停電の中でのクリスマス。ネットで見る限り,2006年以前のようなバカ騒ぎはないようだし,国民祭日化後初のクリスマスであった2007年クリスマスほどの歓迎祝賀ムードも見られない。
 
それでも国家世俗化の追い風を受け,ネパールのキリスト教会は,急拡大中らしい。信者は50万人以上,教会は全国2799,カトマンズ盆地309もある(2007年度)。信者増加率でネパールは世界一という。「国家や社会が伝統的に拒絶してきたことをキリスト教会がダリットやジャナジャーティに提供した」ということも,その要因の一つであろう。(Rabi Thapa, Nepali Times, #481)
 
12月19日には,パタン王宮広場でジーサス音楽学校生徒によるクリスマス・コンサートが開催された。聖夜,ジングルベル,サンタが町にやってくる等々が合唱され,寸劇「イエス・キリストの生誕」も上演された。大成功であったらしい。
 
このクリスマス・コンサートがパタン王宮広場のどの辺で開催されたのかは記事では分からないが,いずれにせよここはヒンドゥー教の神々や仏教の仏たちが無数鎮座する聖地だ。そこでクリスマス・コンサートを開催し,イエス・キリスト生誕劇を上演させるとは,さすがネパールのヒンドゥー教・仏教は心が広い。
 
キリスト教は立派な宗教であり,イエス・キリストの非暴力・平和の生き方は人類の至高の範例の一つである。しかし,状況が詳しく分からないのでネット記事からだけの判断になるが,ヒンドゥー教の神々・仏教の仏たちのど真ん中でクリスマス・コンサートをやるのは,いかがなものか? 無数の神々・仏たちに,聖夜の歌声はどう聞こえたのだろうか?
 
現代は自由市場社会であり,神々も仏たちも自由競争は避けられないが,キリスト教の神とヒンドゥーの神々・仏教の仏たちは,平等な競争条件のもとにあるのだろうか? これは難しい問題だ。どの神々,仏たちの側も慎重に行動しないと,深刻な神々の闘争に陥ってしまう。
 
このクリスマス,私はゴスペル・コンサートに行くことにしている。
 
 クリスマス集会参加の世俗国家首相(共産主義者)
 
* "Welcoming Christmas," The Himalayan, Dec20
* Rabi Thapa, "Xmas? Cheers!," Nepali Times, #481, Dec18

Written by Tanigawa

2009/12/23 @ 15:44

カテゴリー: 宗教

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。