ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

外国人研修制度の欺瞞性:報道ステーション

谷川昌幸(C)
昨夜(1/21),「報道ステーション」が農業研修生による熊本夫婦殺害事件の追跡報道をしていた。それによると,外国人研修制度は「途上国への技術移転,人材育成が目的」であり,1年目が研修生,2~3年目が実習生となる。
 
●農業研修生   6511人(2008年,JITCO)
   茨城県   2339人(全国1位)
   熊本県    481人(全国2位)
 
しかし,多くの場合,「研修」「実習」は単なる名目であり,実態は使い捨て可能な安上がりの労働力にすぎない。
 
熊本夫婦殺害事件の被害者家族2人が「国際研修協力機構(JITCO)」(公益法人,1991年設立)を訪れ,事件の説明を求めたのに対し,安城要常務理事は,こう答えた――
 
「お金を目的としないで来ている人は一人もいません。・・・・お金だけが目的で来ている人ばかりではない。・・・・日本側は人がいない。そこの部分を埋めてもらうっていうのは一石二鳥であり三鳥だからやっている。」
「この制度がなくなったら,秩序がなくなっちゃうと大変なことになる。これ以上は入らないようにしているから,多くの人は真っ当にやって帰っていく。」
 
苦しい言い訳だ,「調査捕鯨」以上に苦しい。JITCO自身が,本音では,「研修」「実習」は名目であり,実態は日本の企業や農業のための安上がり・使い捨て労働力だと思っているのではないだろうか。「報道ステーション」コメンテーターの一色清氏は,ズバリそれは「抜け道」だと指摘していた。
 
外国人研修制度は,典型的な「制度悪」である。それに関わるすべての人をスポイルし,最悪の場合,殺したり殺されたりする。
 
最大の被害者は,いうまでもなく外国人研修生だ。熊本事件の中国人農業研修生の給与は6万円/月だったという。中国の工場労働者の給与は2万円程度(朝日1/22)なので,それに比べると高いとはいえ,来日してしばらくすれば,同等の仕事をしている日本人の数分の一以下ということにすぐ気がつく。不当だ,差別されている,と感じ,不満を募らせていくのは当然だ。この制度の第一の犠牲者は,外国人研修生である。
 
第二の犠牲者は,この制度に関与している日本人だ。JITCO職員は,多くの場合「研修」「実習」が単なる建前,名目であり,「抜け道」(報道ステーション)であることを知りつつ,その制度の実施に加担せざるをえない。彼らの精神が著しくスポイルされることは免れない。
 
また,研修生を受け入れる農家や工場も,「研修」「実習」名目でこき使い,3年でやっかい払いすることへの罪悪感を感じざるをえない。そして,研修生の不平・不満への対応に神経をすり減らし,下手をすると殺されてしまったりする。直接の雇用主もこの制度の被害者である。
 
このような欺瞞的な外国人研修制度は,お隣の韓国を見習い,廃止すべきだ。
 
ネパールの人民本位政府も自国の「人民」を安上がりの使い捨て労働者として日本に輸出するような,反人民的なことはすべきではない。「報道ステーション」が指摘していたように,いずれ中国の賃金が上がり,中国からは研修生が来なくなる。ネパールは,その穴埋めをさせられるにすぎないからである。
 
(参照)2010/01/20 ネパール人研修労働者受入 
 

『〈研修生〉という名の奴隷労働:外国人労働者問題とこれからの日本』花伝社,1,575円,2009年2月

 

Written by Tanigawa

2010/01/22 @ 19:58

カテゴリー: 経済, 人権

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