ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

火だるまのバタライ博士: マオイスト14州案

谷川昌幸(C)
制憲議会でマオイストの14州案がNCやUMLの集中砲火を浴び,バタライ博士らは火だるまだ。
 
マオイスト提案は,カースト/民族による州区分だが,これに対し,14州は多すぎる,あるいはカースト/民族による州区分はカースト/民族対立を激化させる,と批判された。
 
防戦に回ったバタライ博士は,14州案は「客観的」だと反論した。科学的社会主義者らしい。文化的「カースト/民族」概念は「主観的」だと思うのだが。
 
さらに,共産主義は普遍的「階級」の立場に立つべきだというもっともな批判に対しては,博士は,ネパール人民の搾取は階級的なものとカースト/民族的なものの両方があり,だからカースト/民族解放闘争も必要なのだと反論する。
 
そして,州区画の基準は,nationalityだと議論をそらしていく。ナショナリティ(राष्ट्रियत)とは,要するに「国を形成しうる民族」のことであり,「国民」といってもよい。ということは,「国」あるいは「州」を形成するに足りないジャーティーやエスニシティは,州形成主体とはなれない,ということだ。スターリン民族論のオーム返し。やれやれ。
 
困ったバタライ博士は,奥の手を出した。州区分案がまとまらなければ,国民投票で決めたらよい,という。あれまぁ! 国民投票はカースト/民族自治とは原理的に相容れない方法だ。多数決では決められないから,多数決だと少数民族・少数派文化が抑圧されるから,カースト/民族自決を言い出したのでしょ。
 
さらに困り果てたバタライ博士は,今度は,カースト/民族の独自文化よりも,国民民族(ナショナリティ)の経済的・地理的繁栄を優先する,と議論をそらしてしまう。ますますスターリン的だ。
 
支離滅裂のバタライ博士説に対し,反動のNCや日和見のUMLは,ここぞとばかりに反撃を加えた。スシル・コイララNC党首代行も,はるばるサルヤンから攻撃に参加し,「カースト/民族連邦制は絶対に容認しない」と述べ,マオイストはカースト/民族連邦制を設立し,次にこれを利用して鉄砲でネパールを支配するつもりだ,と非難した。
 
スシルNC党首代行の発言は少々いいすぎだとしても,カースト/民族を根拠とする連邦制案には問題が多々あることは明白だ。単一国家の地方自治の方がよいのではないか?
 
* "Maoists defend 14-state model, others criticize," Republica, 2010-02-02
* "Sushil says no to caste-based federalism," KOL, Feb3, 2010

Written by Tanigawa

2010/02/04 @ 11:34

カテゴリー: 憲法