ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

ネパール派兵、7月末まで延長

谷川昌幸(C)
日本陸軍(Japanese Army)のネパール派兵が4ヶ月延長され、7月末までとなった。UNMIN任期は、安保理決議(1909)により5月15日までだから、それまでに和平がならなければ、日本陸軍が停戦監視・平和構築を一手に引き受けるのだろうか?
 
それはともあれ、単純化していうならば、UNMINのネパール停戦監視・平和構築には、二面性があるような気がする。人民戦争停戦に寄与している側面と、莫大な国連特需をもたらしているという側面の二つだ。
 
人民戦争の悲惨はいまさらいうまでもないが、これをひとまず棚上げすると、ネパールのパワーエリートたちは政治的にたいへん有能であり、老獪であるといってよい。これはネパールの伝統のたまものである。もしネパールの為政者たちが有能でなかったならば、印中間で曲がりなりにも独立を維持してこれなかったはずだし、また紳士的でエゲツナイ英帝国主義の植民地支配から免れることもできなかったはずだ。
 
そのネパールの有能なパワーエリートたちにとって、社会構造激変期に、平和構築を名目に、国連をネパールに引き込んだのは大成功であった。どこまで意図的かは分からないが、事態の推移そのものを見ると、彼らは和平交渉をズルズルと引き延ばし、そうすることによって国連にネパールで際限なく金を使わせようとしている。そして、国連が金を使えば使うほど、権力エリートたる彼らも潤うわけだ。もちろん、紛争を利用して私腹を肥やすようなことをやりすぎると、紛争被害者たちが怒るので、ときどき「UNMINの無能」を非難して、矛先をかわす。国連が無能だから、和平が進捗しないのだ、と。
 
国連は、もちろん、このぼったくり構造に気付いている。だから、そのつど不快感を示してきたし、また今回はよほど腹に据えかねたらしく、UNMIN延長を5月15日までとしてしまった。この期限までに人民解放軍統合をすすめ和平のめどを付けなければ、あとは知らないよ、ということらしい。(また延長ということになれば、ネパール政治家の有能さがまたまた証明されることになる。)
 
しかし、困ったことに、意地悪な見方をすれば、UNMINの方も、一面では、紛争で飯を食っているといえなくもない。平和構築支援をしてやっている当のネパールから「無能だ」とか「マオイスト贔屓だ」とか嫌みをたらたら言われ、あほらしいと思いつつも、世界でもっとも安全な平和構築現場たるネパールに居残り「実績」を上げたいというのが本音だろう。
 
わが日本国陸軍にとっても、ネパールのような安全な国で海外派兵訓練ができるのは願ってもないことだ。陸軍のイメージアップにも役立つ。すでに、ヒマラヤ、寺院、素朴な村人と子供たち、ゾウなどがネパール派兵宣伝に効果的に使用されている。個々の派兵隊員は苦労されているかもしれないが、日本陸軍としてはもっと居続けたいというのが本音であろう。
 
要するに、ネパール・パワーエリートも国連諸機関も日本陸軍も、人民戦争のドンパチは危険だし世間体もあり困るが、今のような停戦状態であれば、必ずしも自分たちの利益に反することにはならないのだ。
 
ネパールのパワーエリートたちは、政治家としてきわめて有能である。それにもかかわらず、和平交渉が進捗せず、新憲法の制定も遅れそうなのは、彼らがそれを望んでいないからに他ならない。
 
これはいわば紛争に依存する「紛争産業」である。これを廃業させるには、世界と日本の納税者たちがネパール庶民と連帯し、「紛争産業」への資金の流れに異議を申し立てるしか方法はあるまい。
 
はじめに述べたように、国連停戦監視・平和構築支援には二面性がある。ここでは、あえて意地悪な見方をし、その一方の側面のみをグロテスクなまでに誇張してみた。

Written by Tanigawa

2010/03/06 @ 17:47

カテゴリー: 平和