ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

平和構築:日本の危険な得意技になるか?

谷川昌幸(C)
朝日新聞社説「平和構築―日本の得意技にできる」(4月18日)は,要するに,自衛隊海外派兵のための御用記事である。
 
 (前略)日本は、国連平和維持活動(PKO)予算の13%を分担し、米国に次ぐ拠出国である。5年前には国連平和構築委員会の創設にかかわった。アフガンでは軍閥の武装解除も行った。
 平和構築は日本外交の一つの看板になりうるといってもいい。
 フィリピン南部ミンダナオ島では、イスラム武装勢力と政府軍との紛争の現場を見守る国際監視団に、国際協力機構(JICA)が専門家2人を送り込んでいる。・・・・
 しかし、こうした実践例はまだ少ない。国連PKOへの自衛隊・警察の派遣実績は2月時点で世界で84位。政府の途上国援助(ODA)で平和構築に使われた過去4年の実績は主要先進7カ国中6位にとどまっている。
 平和構築を日本の得意技にするためには、まず現場で活躍できる人材育成が欠かせない。
 広島大学は外務省の委託を受けて、3年前から、平和構築を志す若者に研修を行ってきた。国内での1カ月半の講義の後、紛争地で実地研修を積み上げる。防衛省も今春、人材養成のため国際平和協力センターを発足させた。PKOが自衛隊の本務とされてはや4年。停戦監視や司令部要員など国際的な人材づくりは急務である。
 問題は育てた人材をどう活用するかであり、それは日本の外交の方針と一体として考えられなければならない。
 いま国連PKOで働く日本人の文民は約30人にすぎない。政府はPKOへの派遣にもっと力を入れるとともに、各地での紛争状況を把握し、当事者間の対話や調停にも取り組むべきだ。 ・・・・(朝日社説4月18日)
 
周知のように,平和構築には「軍事的支援」と「非軍事的支援」の二つがあり,日本が参加できるし,参加すべきなのは,いうまでもなく「非軍事的支援」である。
 
これは日本国憲法に明確に規定されている。憲法は,前文で国民の平和貢献義務を宣言する一方,第9条で戦争・戦力・交戦権の放棄を規定した。日本は,非軍事的平和貢献に特化し,最大限の努力をすべきなのである。
 
ところが,朝日社説は,まず「PKOへの自衛隊・警察の派遣」という表現で自衛隊(軍隊)と警察の区別をさらりと無視し,派遣実績が少ないと嘆き,人材育成を要請する。
 
そして,広島大学防衛省を並記し,その平和構築「人材育成」努力を評価する。まさか,広島大学が防衛省と協力して,つまり学軍協力(民軍協力)により,人材育成をやっているわけではあるまいが,そう受け取られかねない記述だ。(学軍協力はたいてい軍部委託研究などから始まる。)
 
そして,最も許し難いのが,「いま国連PKOで働く日本人の文民は約30人にすぎない。政府はPKOへの派遣にもっと力を入れるとともに」の部分だ。議論が巧妙にごまかされ,すり替えられている。「PKOで働く日本人の文民は約30人にすぎない」を受けて,「政府はPKOへの派遣にもっと力を入れる(べきだ)」と主張されている。前段は「文民」なのに,それを受けた後段には「文民」の限定はなく,読みようによっては自衛隊も含まれている。いや,むしろ自衛隊派遣拡大こそが,この社説の隠された真のねらいなのだ。
 
日本にとって,平和構築支援は絶対に必要だ。しかし,それは非軍事的貢献に限定される。朝日社説にたぶらかされ,平和構築を日本の危険な得意技にしてしてしまってはならない。
 
  国際平和協力本部(http://www.pko.go.jp/

Written by Tanigawa

2010/04/20 @ 17:20