ベルギー分離派の勝利から学ぶ
谷川昌幸(C)
6月13日のベルギー連邦議会下院総選挙で,分離独立を唱える「新フラームス(フランドル)同盟」が,定数150のうちの27議席をとり,第一党になった。オランダ語圏の分離独立派の得票率は4割に達し,今後,連邦政府の弱体化,下手をすると国家分裂となりかねない(毎日新聞6/14,朝日新聞6/20)。
ベルギーは,1993年,連邦制となり地方政府の権限が大幅に強化された。国王を戴いているので,いわば「連邦王国」。その国家構造は以下の通り。
・国王―連邦政府―北部: オランダ語圏
―南部: フランス語圏・ドイツ語圏
―ブリュッセル: 仏蘭2言語
・連邦政府=外交,国防,財政,社会保障,司法
・地方政府=経済,雇用,公共事業,都市開発
・言語別共同体政府=教育,文化
・選挙: 比例代表制。投票は言語圏別。ブリュッセルではどちらかに投票。下院第1党の党首を国王が首相に任命。
ベルギーは,人口1千万人の小国なのに,言語連邦制をとったため,制度が複雑となり,機能不全に陥っている。住民は隣の言語圏への転居さえままならない。先進国中の先進国ベルギーですら,連邦制をもてあまし,言語紛争・民族紛争を激化させ,国家分裂の危機にある。
さてネパール。本当に,民族(ジャーティ)連邦制を強行するつもりなのだろうか? HDI17位にして国王を戴く「最高度開発国」ベルギーですら,それはうまく機能していない。HDI144位にして国王なき途上国ネパールが民族連邦制を選択することが,本当に賢明なことなのだろうか?
<参照>2008/08/02 ベルギー言語紛争から学ぶ