ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

外国人研修生の過労死,朝日社説が告発

谷川昌幸(C)
7月14日付朝日社説が「外国人過労死,『実習』という名の『労働』」というタイトルで,外国人研修・技能実習制度を取り上げ,これを「『国際貢献』をうたう制度の欺瞞性」とし,「実態は『労働』なのに研修や実習などとごまかすのは,もう止めるべきだ」と厳しく断罪している。
 
ネパール人研修生は,ネパール・日本研修生協定(2003.12.3)は締結されているものの,これまではあまり多くなかった。ところが,今年に入って具体的な研修プログラムが策定され,ネパール人研修生の大量送り出し・受入に向かって関係者らが動き始めた。これは日ネ友好を願う者にとって憂慮すべき事態である。
 
朝日記事(7/3)によると,外国人研修制度(1981年制定)による来日は2008年度末で8万7千人。現在,日本にいる外国人研修生は,朝日記事(7/14)によると,約20万人。死者は2008年度35人。そのうち過労が原因と思われる脳・心臓疾患が16人となっている。
 
この現代の奴隷制とも呼ばれる外国人研修制度については,内外からの批判が高まり,ついにこの7月2日,労働基準監督署(茨木県鹿嶋)が中国人研修生の死を労災として認定するにいたった。この中国人研修生は月93~109時間の残業をさせられ,タイムカードも偽造され残業代は不払いであった。社長は労基法違反で送検されている。
 
このような外国人差別・人権侵害の欠陥研修生制度のもとでは,ネパール人労働者を受け入れるべきではない。もしこのまま大量受入を始めると,必ず問題が生じ,深刻な紛争となり,長年にわたって築き上げられてきた日ネの友好関係は瓦解してしまうであろう。
 
■関連ブログ記事
 
 ■外国人過労死―「実習」という名の「労働」(朝日新聞社説2010.7.14)
 日本の外国人研修・技能実習制度は、途上国から企業などが人を受け入れ、3年間の職場経験で得た技能を母国で役立ててもらうのが目的、ということになっている。ところが、その制度で来日した中国人男性が死亡したのは「過労死による労災」と労働基準監督署が認定した。
 奇妙な事態があらわにしたのは「国際貢献」をうたう制度の欺瞞(ぎまん)性だ。
 男性(当時31)は2005年12月に来日、茨城県のめっき加工会社で働いていたが、08年6月に亡くなった。直前の3カ月、月93~109時間の残業をしていたという。
 これは氷山の一角とみられる。現在日本にいる研修・実習生は中国などから約20万人。受け入れを支援する国際研修協力機構によると、08年度に35人が死亡した。このうち長時間労働が原因とみられる脳・心臓疾患は16人。09年度の死亡は27人にのぼった。
 「看板」とうらはらに、研修・実習生に、低賃金で過酷な労働を強いたり、残業代を払わなかったりピンハネしたりする事例が後を絶たない。
 さらに08年秋のリーマン・ショック以降は受け入れ先の仕事が激減し、中途解雇が目立ち始めた。新たな受け入れ先も紹介されず、泣く泣く帰国した人は少なくない。
 過労死するほど働かせ、状況が変われば解雇する。こんな「使い捨て」のやり方が許されるはずがない。
 問題点は国も認識はしている。関係法を改正し、来日2年目からだった労働関係法令の適用を1年目からにしたほか、国内の受け入れ機関の責任や罰則を強化した。だが、まだ問題の解決にはほど遠い。
 日本は、外国人労働者の受け入れを専門分野に限っている。これに対し、研修・実習生の受け入れ先は、多くが小規模製造業、水産加工、農業などで、日本人が敬遠する仕事での単純労働力の不足を補ってきた。少子高齢化のなかで、彼らがいなくては成り立たない単純労働の現場があるのだ。
 まず、こうした実態を詳しくつかむことだ。そのうえで、制度を根本的に再検討すべきである。実態は「労働」なのに研修や実習などとごまかすのは、もうやめるべきだ。
 当然、受け入れる限り、労働者を「使い捨て」にしてよいわけがない。日本社会のなかできちんと位置づけるべきだろう。生活、教育、福祉などの基盤整備や安全網を、どのように組み立てるのかなど、課題は多い。
 「実習生」などと言い換えるのは外国人労働者受け入れへの警戒感に配慮したためかも知れない。だが、まやかしの名前で呼び続けても、外国人労働者が日本にいないことにはならない。現実から目をそらし、日本の社会に必要な議論を先送りするだけだろう。

Written by Tanigawa

2010/07/15 @ 12:01

カテゴリー: 経済, 人権

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