ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

老獪ネパール首相か大統領委任独裁か

@谷川昌幸(C)
ネパール立法議会で7月21日首相選挙が行われたが,どの候補も過半数を獲得できず,首相選出にいたらなかった。(暫定憲法38条(2)により,首相は出席議員の過半数により選出される。)
 
■投票結果 
 プラチャンダ(UCPN-M)賛成242  反対114  白票236
 ポウデル(NC)        賛成124  反対235  白票228
  *現有議席(概数): CPN-M239, NC110, UML109, MPRF52, TMDP20
 
UMLのカナル議長は,2/3(401人)の支持獲得のめどが立たず,立候補を取りやめ,UMLとそれに同調するいくつかのタライ政党が中立(白票)に回った。
 
欧米の民主主義原理主義者が,やれ包摂だの権力分有だのとお題目を唱え,首相選出も2/3多数決を要求し,憲法に書き込ませた。が,こんな観念論はすぐ破綻し,2008年7月に憲法改正し過半数に改められた。それでも,この有様。限界を自覚しない民主主義原理主義の呪縛から,ネパールは早く覚醒すべきだろう。
 
いずれにせよ,新首相が決まらなければ,MK・ネパール氏が首相を継続する。ただ,それだけのこと。ポカレル情報相によれば,諸党合意内閣ができなければ,ネパール氏が新憲法制定まであと1年間首相を務めることになる。世界にはこんな事例はたくさんあるという。
 
もしこのまま政権を維持し,新憲法制定まで持って行けたら,ネパール首相は老獪な現実主義的保守主義の共産主義者ということになる。さてどうなるか? 
 
たとえ過半数で首相の首をすげ替えてみても,それだけでは2/3の多数を要する憲法制定は無理であり,せいぜい半年しかもたない。グダグダ堂々巡りをするのが民主主義。それに耐え,じっくり民主主義の成熟を待つか? もし待てないのなら,いっそのこと,大統領委任独裁に移行してみるのも,よいかもしれない。
 
今日,再投票だという。イザとなれば,結構現実的に行動するのがネパール政治家。待つことができるなら,案外民主主義に向いているかもしれない。
 

Written by Tanigawa

2010/07/23 @ 11:10

カテゴリー: 民主主義

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