ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

首相選混乱とアメリカのお節介

谷川昌幸(C)
23日の再投票でも首相選出はならなかった。報道によれば,結果は次の通り。
■ekantipur
 出席議員数572  議員総数599
 プラチャンダ 賛成241  反対113   白票(棄権?)218   計572
 ポウデル   賛成123  反対241   白票(中立?)214   計578
■nepalnews.com
 投票総数592
 プラチャンダ 賛成242  反対114  白票(棄権?)226   計582
 ポウデル   賛成124  反対 ?    白票(棄権?)228   計352+α
 
ちょっと数字が合わないが,いずれにせよ過半数は成立せず,首相は選出されなかった。MK・ネパール内閣の面々はほくそ笑んでいるだろう。
 
ここで注目すべきは,このような場面で必ず登場する例の民主主義宣教師,民主帝国主義の旗手アメリカのはた迷惑なお節介である。
 
 
 
これは23日付nepalnews.comのフロントページ。首相選出失敗・再選挙の記事の上に鎮座する派手な広告「選挙を越えて:民主主義による政権交替」を出しているのは,いうまでもなくアメリカ国務省。これをクリックすると,アメリカがいかに偉大な民主主義の国であるかが,西部劇的明快さでもって説教されている。
 
1960年の大統領選で,ニクソン(共和党)はケネディ(民主党)に惜敗した。ケネディ派の大規模選挙不正が指摘され,開票再調査を求める声が上がったが,ニクソンはそれを制し,潔く敗北を認めた。
 
「たとえ結果的に我らが勝利することになるにせよ,そんなことをすれば民主主義への悪影響は計り知れない。This is the first time in 100 years that a candidate for the presidency announced the result of an election in which he was defeated and announced the victory of his opponent. I do not think we could have a more striking example of the stability of our constitutional system and of the proud tradition of the American people of developing, respecting and honoring institutions of self-government.In our campaigns, no matter how hard fought they may be, no matter how close the election may turn out to be, those who lose accept the verdict and support those who win.」(More Than Elections: How democracies Transfer Power,ejournal USA,Jan.2010, p.1)
 
あっぱれ,男ニクソン! 民主主義は西部劇的男らしさがなければ,いくら選挙をやってみても定着しない。ネパールの政治家諸君,ニクソンを見習い給え――ということらしい。
 
この国務省のお説教はもっともなれど,ネパールはアメリカではない。西部には悲惨はあっても,フロンティアも,やっつけるべきインディアンもいない。世界を支配できる武力も金力もない。そんなネパールに,西部劇的民主主義を押しつけられても,ネパールの政治家たちは困惑するばかりだ。
 
底抜けの無邪気さはアメリカの愛すべき特性だが,ところかまわず西部劇を演じられては,ネパールやアフガンなど,弱小途上国はたまったものではない。

Written by Tanigawa

2010/07/24 @ 12:41

カテゴリー: 民主主義