ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

ヤブヘビの首相選

谷川昌幸(C)
3極構造(UCPN-NC-UML)は,1990年代(国王-NC-UML)もそうだったように,安定しているようで,必ずしもそうではない。相手を換えれば,いつでも政権を倒せる。
 
1.制憲議会解散論
一つは,制憲議会解散・再選挙論。RPP-Nのカマル・タパ議長が,唱えている。タパ議長は筋金入りの保守王党派で,再選挙ではヒンズー教王国復帰の是非も国民に問うべきだ,と主張している。
 
現在の混乱,不決定が長引けば,制憲議会解散・再選挙論が支持を広げるであろう。
 
カマル・タパ議長(Mercantile)
 
2.司法的解決論
もう一つは,司法積極主義。立法府・行政府で決定できないなら,最高裁に決めてもらおう,という動きである。
 
7月21日,弁護士のB・グルンとKS・アチャルヤが首相選無効の訴えを最高裁に出した。訴状によると,7月21日首相選のとき,MK・ネパール首相は自ら提出していたカナルUML議長の立候補を,2/3(401票)以上の支持が得られないという理由で撤回した。しかし,このようなことは暫定憲法には規定されておらず,また議会議長の許可も得ていない。憲法は過半数(300票)による首相選出を認めている。したがって,7月21日の首相選は無効であり,再選挙すべきだ,というのである。
 
訴状の論旨は明快でありよく理解できるが,これは高度に政治的な事柄(いわゆる「統治行為」)であり,裁判にはなじまない。
 
むろんネパールは,インドと同じく,司法権が強く,かつて最高裁がアディカリ首相(UML)の議会解散に無効判決をだし,これが確定,アディカリ首相を辞任に追い込んだ先例がある。私自身,この裁判を傍聴し,判決後の大騒乱に巻き込まれた。これは首相の解散権を最高裁が否定するというかなり強引な判決であったが,状況により,それが通ってしまう。それがネパールである。
 
今回の首相選無効の訴えは,おそらく棄却されるだろうが,しかし状況によっては認められる可能性がないではない。万が一,そうなれば,それこそヤブをつつくことになり,何が出てくるやら,ネパール情勢はますます混乱することになるであろう。

Written by Tanigawa

2010/07/28 @ 11:12

カテゴリー: 民主主義