ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

中国書店

谷川昌幸(C)
 

繁華街タメルの中心に大きな中国書店が開店した(多分昨年)。美しく豪華で他を圧倒している。店名は「中国西蔵書店」。チベット独立派ではなく、中国本家筋。チベット文献以外に、毛沢東、中国革命など中国関係献を展示販売している。

 

人民帽の店員には商売気がまるでない。中国共産党チベット自治区委員会謹製DVDを買おうとしたら、売値を知らなかった。仕方なく28元と印刷してあった「世界反ファシズム戦争の中の中国」というCD(中華人民共和国国務院新聞公室監制)を336ルピーで買った。いかにも中国的。

 

この中国書店には、いつみても、ほとんど客はいない。商業ベースなのか、それとも中国の文化政策の一環なのか? 中国は、タライ(インド国境沿い)に「孔子学院(中国文化センター)」を設置しつつあるという。広い意味で、この中国書店も中国文化進出の一環とみてよいであろう。

 

中国に限らず、外国進出(あるいは侵出、ときには侵略)を図る場合、もっとも賢明な方法は、文化進出を先行させる方法である。

 

もっとも巧妙であったのは、英語帝国主義の本家イギリス。片田舎の出来の悪い言語を「世界共通語」にしてしまった。アメリカ文化センター(CIAの出先ともいわれている)、ゲーテ・インスティトゥート、日仏会館など。みな文化進出の先兵である。

 

だから中国が孔子学院を戦略的に世界展開し文化進出を図るのは当然であり、中国の国力と文化力をもってすれば、将来は中国語が英語に代わり世界共通語になる可能性すらある。

 

すでに滞在中の日本名のホテルにも、中国人客が増え、中国語が理解できなければ商売に差支えるようになってきた。

 

中国は大国だから、小国日本の少国民のようにオドオドしていない。今朝もホテル食堂に中国人夫婦が来て、堂々と中国語で注文をしていた。ネパール人給仕が英語で何回も聞きなおすが、中国人夫婦は平気、理解できないのはそちらが悪いといった態度で、中国語で押し通した。

 

エライ! さすが、中華の国。小国日本には到底まねのできない大国人民の振る舞いだ。

 

ネパールにおいて、インドはヒンドゥー教と英語で中国文化に対抗せざるをえないが、ヒンドゥー教はすでに中国渡来の毛沢東思想に敗北し、多くの宗教の一つにされてしまった。英語はインド固有の言語ではなく、屈辱の植民地支配の遺産にすぎない。こんな借り物で他国を文化支配することは無理だ。

 

客観的に見て、中国が本気になって孔子学院や中国書店をネパール全土に展開したら(これは文化協力・文化支援だからどの国にも反対はできない)、ネパールは中国文化の中に徐々に吸収されていくであろう。中華帝国拡大に銃は不要なのである。

 

 タメルの中国書店

 看板屋さん。中国語書換えで多忙

Written by Tanigawa

2010/09/03 @ 00:01

カテゴリー: 文化