ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

国歌演奏するも首相選出なし

谷川昌幸(C)

7日、制憲議会に7回目の首相選挙の見学に行った。遅れないように2時半ころ通用門から入場、会議場2階の傍聴席に着く。前回より多く、満席だった。

 

1.国歌の権威

ほぼ定刻の3時すぎ開会。全員起立して国歌演奏(CD?)を謹聴。

 

ネパール新国歌は、国歌だから敬意を表するにやぶさかではないが、純音楽的観点からみてやはり問題がある。以前にも指摘したように、特に終わりの部分が不自然で、なんとも盛り上がらない。

 

制憲(立法)議会は、共和制では国家の権威と権力の頂点にある最高機関。その厳粛な国政の場で聴けば、この国歌もおごそかに聴こえるかと思っていたが、まったくそのようなことはなかった。最後まで聴かず、盛り下がる部分で早々と着席しようとする人まで出る有様。権威というものは、いったん破壊してしまうと、回復は容易ではない。このことは、国歌についてもいえるようだ。

 

2.雑談と携帯

本会議が始まり、議長が発言を始めても、傍聴席の雑談は止まず、あちこちで携帯が鳴る始末。電波遮断はなされていないらしい。

 

この議場は儀式の場であり、実質的決定は別のところで行われる。ここは儀式のためだけのものだが、その儀式ですら、7回目ともなると、だらけ切り、まるで有難味がない。権威がない。権威のない儀式は、儀式ですらない。雑談と携帯の場である。

 

3.首相選出されず

結局、7回目も首相は選出されなかった。2日後の開会だったので、マオイストには勝算があり、そのようなウワサが流れたが、最後の20票程度が確保しきれず、期待されたマオイストへの雪崩現象は起きなかった。次の第8回目は、コングレス党大会後の9月26日の予定。

 

■第7回首相選挙投票結果

  ダハール候補:賛成252、反対110、棄権159、出席総数521

  ポウデル候補:賛成119、反対245、棄権151、出席総数515

 

4.体制内化チャッカリの場

制憲議会は、討論の場でも民主主義の場でもないが、効果的体制内化の場ではあるようだ。あちこちで有力者を囲んでチャッカリが行われ、600人の大特権集団が形成されつつある。

 

議場建物横には、軽食堂があり、ここで議員や取り巻きたちがチャイやインスタントラーメンをすすりながら、盛んにチャッカリをやり、人脈つくりをしている。

 

マオイスト議員もむろんたくさんいる。眼光鋭く、いかにもマオイストという感じの人もいるが、すでにチャッカリ交換やセミナー漬けで多くはコングレスやUML議員と仲良くなり、ずいぶん文明化されている。

 

著名な人民戦争指揮官A議員を紹介され少し話をしたが、とてもジャングルから出てきた人とは感じられなかった。ずいぶん垢ぬけ、もはやジャングルには戻れないのではないだろうか。

 

制憲議会は、民主主義とはほど遠いが、少なくともマオイスト議員たちを既存特権階級の人々と交際させ、体制内化する機能は十分に果たしているようだ。

 

5.「拍手と喝采」もなし

制憲(立法)議会での首相選挙を見学して、西洋押しつけの包摂民主主義=権力分有民主主義=アイデンティティ政治が、本来の民主主義とはおよそ無縁のものであることが、よくわかった。

 

特に反民主主義的なのが、比例代表制。これはボス支配、裏取引政治をはびこらせるだけだ。その象徴が、この議場。民主主義の本質は討論にある。その討論がここでは出来ない。委員会でやっているとはいえ、本会議場がこれではそれも帳消しである。

 

ここは「拍手と喝采」の場にすぎない。いや、6回目、7回目ともなると、その「拍手と喝采」すら、ない。いったいぜんたい、どうなっているのだ。現状では、国王親政以前の1990年憲法体制の方が、はるかに民主的である。

 

8日付カトマンズポストでの首相選の扱いは、1面中段下の小さな記事。首相選、大統領選をこのように軽~く報道する国が、民主主義国の中に一つでもあるだろうか? まったくもって信じられない。これが新国歌をもつ新国家の「完全民主主義」なのか!

 
 
 CA前ナヤバネスワ交差点。ここでも信号機崩壊
 
 CA正面玄関より。預金金利12.5%。経済崩壊寸前。
 
 本会議場横の軽食堂。
 
 取材陣もほとんど早退(1)
 取材陣もほとんど早退(2)
 
 構内(半構内)中国レストラン
 
 中国企業によるTU医学部棟建設(キルティプル)

Written by Tanigawa

2010/09/08 @ 13:47

カテゴリー: 民主主義