ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

高所得中間層の成長

谷川昌幸(C)

 1.KFC

王宮前通りにケンタッキーフライドチキン(KFC)ができたので、敬意を表し試食に入った。この通りの両側には、高級店や銀行が次々に開店している。

 

KFCも大きなきれいな店で、お値段もなかなか立派なもの(2人分)

 ・チキン2片とカレーご飯少々、イチゴシェイク    309

 ・ハンバーガー、チキン2片、フライドポテト、ペプシ 379

        奉仕料10%、消費税13%   計  886ルピー

 

手のかかる料理ではなく量も少ない。大食のネパール人にはとても足りない。おやつ程度。日本で私はよく牛丼を食べるが、260280円で昼食としては十分満足できる。それと比べて、ネパールKFCはべらぼうな値段だ。

 

驚いたことに、そのKFCが地元客で大繁盛している。高収入中間層が拡大しているのだ。

王宮前KFC

 

2.シティセンター

高所得中間層の拡大は、高級ショッピングセンターが次々建設され、繁盛していることからもわかる。カマルポカリ、ロシア文化会館となりのシティセンターもそうだ。

 

巨大なビルにソニー、東芝や、有名ブランド化粧品、服飾店などが入り、最上階には映画館とおしゃれなレストランがある。日本のショッピングセンターと比べ、見劣りすることはない。

 

ただ、入口に空港と同様の危険物探知装置が設置されているのは異様だ。ネパールはもともと濃密な地縁・血縁社会で、見ればわかることを前提に社会生活が成り立っていた。危険物探知装置の設置は、そのネパール社会が崩壊し、未知の人々からなる大衆社会となり、しかもテロ防止装置を設置せざるをえないほど格差が大きくなってきたことを意味する。

 

また、ネパールの巨大高級ビルは、例外ないく、迷路のような構造になっている。火災など事故が発生すれば、逃げ出せない。なぜこのような構造にするのか、不思議。利用する前に、まず脱出経路を確認しておこう。

 

シティセンター。左下が映画入場券販売所、正面が危険物探知装置つき入口

 

3.中小零細商店の閉店危機

近代的商業施設の開業ラッシュを見ていると、日本で起こったことが、いずれ近いうちにネパールでも起こることが危惧される。中小零細商店の閉店だ。

 

カトマンズなどの都市部には、古くからおびただしい数の中小零細商店がある。よくまあこれほどたくさんの店があり、生活できているのだなあ、と感心するほどだ。

 

いまのところ大型商業施設は金持ち相手だが、いずれ食品・日用品を主とする一般庶民向け大型スーパーが出現することは目に見えている。流通経路が合理化され、ネパール版「価格破壊」が始まると、従来の商店は到底太刀打ちできない。次々と倒産し、大量の失業家族が発生するだろう。

 

4.露店

中小零細商店は、下からは露店に脅かされている。露店も激増している。露店は以前からあったが、それほど多くはなく、野菜などが中心で、中小零細商店とは棲み分け分けていた。

 

ところが、いまや通路、広場、どこにでもおびただしい数の露店が商品を並べて売っている。ラトナ公園周辺など、信じがたい数だ。こうした露天商の収入は、おそらく微々たるものであろう。彼らの生活も思いやられる。

 

中小零細商店は、いくら小さくても自分の店を構え、地元に根付いている。「不動産」とは、「動かないもの」「動かしにくいもの」であり、人の生活はそれと何らかの形で結びつくことにより、地元に根付き、安定する。

 

これは保守主義の基本思想の一つであり、たしかにここには人間社会の真実の一面がある。もしそうなら、ネパールにおける大量の露天商の出現は、都市社会の崩壊が始まる前兆と見てよいであろう。

 

ラトナ公園露店             遠方に演習場に入る軍用車

 

5.物価高

いまネパールは、13%の利子を出しても銀行が儲かるインフレ社会である。バス料金(12ルピー程度)など、政策的に低く抑えているものもあるが、野菜など大抵のものが大きく値上がりしている。

 

ブリクティマンダプの庶民相手の茶店でコーラを飲んだら、25ルピーだった。チャイ(ネパール茶)にすればよいといわれるかもしれないが、いくら高くてまずくても飲ませてしまうのが、コーラ帝国主義の帝国主義たるゆえんだ。貧乏人は高いものを買わされて、ますます貧乏になっていく。

 

ネパール社会はもうもたないのではないか、と心配になってくる。マオイストは農民運動であり、地に足がつき、統制がとれていた。マオイストが天下を取っても、社会そのものは崩壊しない。

 

ところが、いまネパールに大量に出現しつつあるのは「群衆」であり、もし彼らが暴動を起こせば、収拾がつかなくなる。そうなれば、結局、軍事独裁となってしまうであろう。

 

お役所仕事の見本のようなブリクティマンダプの施設にもコングレス党大会の旗やビラがあふれていた。政党、政治家が本気で事態に対処しないと、結局、彼ら自身の居所がなくなってしまうだろう。

 ブリクティマンダプ施設の会議派党大会ビラ

 

 会議派党旗、騎馬警官(馬にもマスクを!)

 

 会議派党旗とガネッシュマン像

 

Written by Tanigawa

2010/09/14 @ 13:21

カテゴリー: 社会, 経済, 文化

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