夫婦別姓パスポートはネパールで
谷川昌幸(C)
某地獄耳情報によると,夫婦別姓パスポートは,旅行者でも在外大使館(在ネパール日本大使館など)で比較的簡単に取得できるそうだ。
日本国家は,明治以降,家制度を天皇制国家の基礎とし,国民を家単位で管理してきた。家制度,その象徴としての夫婦同一姓強制(夫の家=姓に入る)は,日本古来の伝統ではなく,近代的国民統合を目標とした日本国家が創り出した「新しい」制度にすぎない。
夫婦別姓を目の敵にし,日本古来の家族制度を守れなどと叫んでいる保守反動は,新しいものを古いものと錯覚し,伝統を守れと騒いでいるにすぎない。自覚的に「古い制度」を新たに創出し,学校教育により「新しい制度」を「古来の伝統」と教え込んだ明治政府の呪縛に囚われているのだ。
夫婦別姓は民主党政権の成立で一気に法制化されるかと思われたが,さすが明治の先達はエライ,家制度の呪いは民主党をも捉え,夫婦別姓法制化はたちまち腰砕け,いまやかけ声すら聞こえない。
このような場合,最も有効なのは市民的抵抗(civil deisobedience)である。政府が認めないのなら,悪しき法制度を市民自身が掘り崩し,失効させてしまう。政府がいくら戸籍を強制しようが,「戸」籍は人権侵害であり,「個」籍を用いると宣言し,日常的に別姓を通す。郵便も宅配便も,納税通知も投票入場券も届かなければ,もうしめたもの,同一姓強制は瓦解する。
そうした市民的抵抗の最も有効な手段の一つが,別姓パスポートだ。パスポートは日本政府発行の公文書であり,もっとも強力な身分証明書の一つだ。その別姓パスポートが旅行者でも在外大使館で比較的容易に取得できるなら,ぜひみんなで取得し,日本政府に個籍=夫婦別姓を認めさせよう。
残念ながら,私の夫婦別姓パスポートは残存期間が6ヶ月を切り,もはやこのパスポートではネパール入国はできず,自分では在ネパール日本大使館で別姓パスポートを申請してみることができない。そこで――
■日本国籍,日本在住,配偶者も日本国籍で,旅行者として外国へ行き,その地の日本大使館・領事館で夫婦別姓パスポートを取得された方
ぜひ,その実例をお聞かせいただきたい。そうした事例がいくつかあれば,夫婦別姓法制化への有力な突破口となると思う。
(注)国際結婚夫婦の場合は,これまでも別姓戸籍,別姓パスポートが発行されてきたときいている。日本人は,たとえ外国人と結婚しても家系で国家管理するつもりらしい。
▼ネパールでは夫婦別姓はごく一般的
夫:バブラム・バッタライ 妻:ヒシラ・ヤミ