ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

Archive for 11月 2010

ムニ教授とプラチャンダ議長

印ネパール学の権威ムニ教授が訪ネし,プラチャンダ議長と会見した。各紙報道によれば,プラチャンダ議長は,インドをネパール人民の敵としているわけではないが,マオイストの政権復帰を妨害しているのはインドだ,と釘を刺したという。さすがプラチャンダ議長,そつのない対応だ。

一方,ムニ教授については,そのネパール論をいくつか読んだことはあるが,まったく記憶に残っていない。各紙が伝える彼の発言も,ほとんど無意味だ。なぜ各紙がこんな報道をするのだろうか?

それとも,ムニ教授には隠された使命があるのかもしれない。各紙報道からは,それはまったく読み取れないが。

【追加】(2010/12/03)
ekantipur(2010/12/02)がムニ教授の長いインタビュー記事を掲載している。「印ネパール学の泰斗」と紹介されているが,この長文のインタビューを読んでも,日本の商業新聞ネパール記事以上の情報も分析も得られない。

たしかに,何であれ,大切なものは隠されてある。特にネパールのような混沌とした状況では,ロイさんのように無手勝流,本音をさらけ出していては生き残れない。しかし,隠されていれば,それだけ知りたくもなる。ムニ教授にはきっと隠されたネパール分析があるはずだ。ネパール・メディアには,そこを取材し,伝えてほしい。

谷川昌幸

Written by Tanigawa

2010/11/30 at 20:56

ロイ,事情聴取へ

デリー裁判所は11月28日,ロイらに対する刑事告発手続きを進め,それに基づきデリー警察が2011年1月5日に事情聴取,6日に捜査報告書を提出することになった。
 (参照)ロイ,反国家扇動罪で告発される

告発者によれば,ロイは10月21日デリー開催セミナー「自由(解放)――唯一の道(Azadi–The Only Way)」において,反インド演説を行った。「被告発者らは,人々の間に反インド政府感情を植え付け,政府とその武装諸組織を否定し,実力によりインド政府を破壊しようとしてきた。」これは反政府扇動罪に当たるというのだ。(Hindustan Times, Nov.27)

この反政府扇動罪は重罪で,終身刑まである。記事によれば,こうした政治がらみの事件の場合,政府は起訴しないことが多いというが,どうなるか予断は許さない。

ところで,印マオイストについては,ネパール・マオイストとの関係が指摘されるようになり,ロイの記事もネパール・メディアに出始めた。

11月27日に終了したマオイスト第6回拡大中央委員会集会(パルンタール)で採択された「12項目暫定運動方針」でも,印マオイスト指導者Ajadの虐殺を激しく避難している。

むろん,この「12項目暫定運動方針」では,ラシュカエ・タイバ(Lashkar-e-Taiba)との関係や印マオイスト軍事訓練は,ためにする悪意のデマ攻撃だとして全面的に否定している。

しかし,ラシュカエ・タイバはさておき,印マオイストとは,本来「同志」であり,協力関係がない方が不自然だ。もしインドとネパールのマオイスト連帯が強化され,それに中国が加担することになれば,これはやっかいなことになる。

もしそうなったとき,われらがロイはどうするのだろう。ネパール・マオイストの戦列に加わるのだろうか?

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2010/11/28 at 18:19

カテゴリー: インド, マオイスト, 中国

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プラチャンダの平和,なるか?

マオイスト拡大中央委員会(Plenum)は,今日27日閉会する。プラチャンダ議長の最終運動提案はまだ公表されていないが,2011年5月28日までに「人民連邦民主共和国憲法」が制定できなければ,人民蜂起による権力奪取を目指すというものになるようだ。
マオバディ・プレナム

ネパールは,6月30日のマダブクマール・ネパール首相の辞任表明以来,暫定政府の統治を続け,首相選挙は16回に及んでいるが,憲法起草実務は着々と進んでおり,原則さえ決定すれば,それに応じた条文を備えた新憲法がただちに公布施行できるはずである。ネパールの法実務家の能力はたいしたものだ。

しかし,肝心の憲法の原理原則が定まらない。この調子で首相選出ができず,2011年1月15日UNMIN撤退となれば,バイダ副議長の人民蜂起の目が出てくる。プラチャンダ議長もその可能性を認め,保険を掛けているので,人民戦争再開となるかもしれない。

もし人民戦争再開となれば,今度は,インドがもっと本格的に介入し,それに対抗して中国も北方からの進出(侵出)を図るだろう。大変なことになる。

プラチャンダ議長は,「人民民主主義憲法」を要求している。十分に過激な主張であり,NCやUMLに呑めるとは思えない。インドも認めない。難しい事態になるかもしれない。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2010/11/27 at 19:18

国家より党優先のマオイスト

マオイスト第6回拡大中央委員会(Plenum)が11月21日,ゴルカのパルンタールではじまった。25日までの予定。
ゴルカ郡パルンタール付近

このプレナムには,全国から6千人が参加,その中にはカントンメント収容の人民解放軍戦闘員1400人も含まれている。あれあれ,これは「包括和平協定」「武器・軍管理監視協定」違反ではないかな?

22日には,バイダ副議長とバタライ副議長が運動方針案を読み上げた。各2時間。バイダ副議長は,人民蜂起で人民民主主義(人民独裁)を実現せよ,と檄を飛ばしたらしい。これに対し,バタライ副議長は,いやいやそれはまずい,まずマオイスト主導で新憲法を制定し平和を実現する努力を尽くすべきだ,もしそれが妨害され新憲法制定が困難になったら,そのとき人民蜂起に訴えるべきだ,と提案したという。

この左右両論を踏まえ,23日午前,プラチャンダ議長が,まあまあ,なあなあの折衷案を出し,ケンケンガクガクの議論を通して弁証法的統一を図る予定とのこと。唯物論的弁証法よりも,やはり本家ヘーゲルの精神的弁証法の方がマオイスト好みらしい。

これはマオイストの大会だから,それはそれでよいが,この拡大中央委員会のおかげで,世界新記録を更新中の首相選挙が棚上げとなり,MK・ネパール暫定首相は「世界虎保護会議」のためロシアに行ってしまった。次の第17回首相選挙は,12月16日(木)の予定。われらがポウデルNC議員団長は,もちろん立候補を継続する。えらい。

ここネパールでは,国家と党の関係はすでに逆転,党の方が国家に優先する。マオイストが政権を取れば,すんなり党主導人民民主主義国に移行できるわけだ。未来は輝かしい。

で,目を未来から足元に転じパンタールを見ると,ここは20年ほど前いったことがあり,美しいところなのだが,なんと,プレナム参加者の6分の1,1000人余が食中毒で倒れてしまった。飲料水か食事が原因らしい。未来は輝かしい。が,足元はおぼつかない。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2010/11/23 at 19:49

陸自隊員UNMIN派遣,4ヶ月延長

日本政府は11月16日,「ネパール国際平和協力隊」(陸自隊員UNMIN派遣)を4ヶ月延長し,2011年3月31日までとした。

ネパール派遣陸自隊員は,日本政府が直接指揮しているわけではない。陸自隊員は,「中央即応集団(CRF)」司令部所属とされ,そこから「個人として」UNMINに派遣され,UNMIN指揮下で停戦監視活動に当たっているのだ。

この「中央即応集団」は2007年3月28日に編成され,国内の緊急事態(テロなど)への対処と,国際平和協力活動を主な任務としている。これは軍と民の間の灰色部分,自衛隊にとっては未開拓の広大な中間地帯である。防衛省はここに目をつけ,軍民協力を促進し,自衛隊の国内外での活動を急拡大させるための尖兵として,中央即応集団を設置したのである。

その自衛隊にとって,陸自隊員UNMIN派遣は絶好のチャンスであった。中央即応集団の編成が2007年3月28日(朝霞駐屯地発足3月31日),陸自隊員(中央即応集団司令部所属)のネパールへ向けての出発が3月30日。ネパール国際平和協力隊は,中央即応集団発足の祝砲,その尖兵といってよいであろう。

しかも,防衛庁は2006年12月の「省」昇格関連法の成立により「省」に昇格し,それと同時に,念願の自衛隊海外活動も晴れて「本来業務」となった。その防衛省にとって,自衛隊の「本来業務」としての初の海外活動が,このネパール国際平和協力隊だったのである。

ネパールは日本では絶大な人気があり,そこでの停戦監視活動にも危険はほとんど無い。ヒマラヤも象も寺院も,素朴な村や子供も,全部「本来業務」としての海外活動の宣伝に使い放題。日本政府が,当事国のネパールや国連以上に陸自隊員のネパール派遣(派兵)に積極的なのは,そのためであろう。前のめり,イケイケドンドンなのだ。
(防衛省幕僚監部HP)

周知のように,ネパールは印中両大国にもまれ外交上手,国連に平和構築支援を要請しつつ,国連が受諾して本格介入し,大金も投入し,引くに引けない状態になると,掌を返したように国連の「無能」を非難し,ちゃんとやれないなら「出ていけ」とさえ要求し,国連とギリギリの取引をしている。実にしたたか,たいしたものだ。

これに対し,国連も,UNMIN派遣期間の延長を当初の1年から,半年ごと,4ヶ月ごとに設定し,それをカードに,ちゃんとやらないなら本当に引き上げるぞ,と脅し,ネパール側の平和努力を要求している。国連もネパール側とギリギリの外交交渉をしているのだ。

国連の次のUNMIN派遣期限は,2011年1月15日まで。これ以上の延長はしない,と国連は宣言している。ネパール側に突きつけた最後通牒なのだ。(実際には,何らかの形で延長される可能性はある。)

これに対し,不思議なのが日本の陸自UNMIN派遣の期間延長。日本の「ネパール国際平和協力隊」派遣(日本出発)は3月30日,UNMIN発足の2ヶ月半後であったため,派遣期間設定がその分ずれることはあり得るが,3年も経過し,国連が「延長」カードを使うため延長期間を4ヶ月ごとに設定し始めても,日本政府はなぜかそれに合わせることをせず,国連の期間延長の先回りをし,UNMIN派遣期限よりも数ヶ月先を陸自派遣の期限に設定してきた。

2010年1月UNMIN期限5月15日まで延長に対し,3月陸自派遣7月31日まで延長。5月UNMIN9月15日まで延長に対し,7月陸自派遣11月30日まで延長。9月UNMIN2011年1月15日まで延長(最後)に対し,11月陸自派遣2011年3月31日まで延長。

陸自派遣期間は,発足時を除き,つねにUNMIN派遣期間より2ヶ月半先までとなっている。発足が2ヶ月半遅れたのと,期間設定の技術的な問題もあるのだろうが,3年以上もたっているのであり,調整ができないはずはない。

日本政府が,つねに国連の先回りをし,陸自派遣期間を延長してしまえば,日本政府は「延長」カードを使用できないし,国連の「延長」カードの効果も殺いでしまう。日本政府は,2大国中国とインドの間に陸自隊員を派遣している,つまり派兵しているのだ。見方によれば,これはかなり大胆な,危険な政策だ。一刻も早く任務を完了し撤退,つまり撤兵するということは考えていないのであろうか。

ネパール陸自隊員派遣は実際には派兵であり,憲法上許されるはずもないが,それをひとまず棚上げしても,なぜ日本政府が国連の先回りをして派遣期間を延長しなければならないのか,なぜそんなに前のめりにならなければならないのか,どう考えても合点がいかない。やはり,「ネパール国際平和協力隊」を自衛隊海外活動の尖兵として利用することが最大の目的となっているのではないだろうか?

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2010/11/22 at 10:17

カテゴリー: 外交, 平和

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また憲法改正

マオイスト,コングレス,統一共産党の三大政党は,憲法を改正し,暫定内閣でも正式予算を組むことができるようにすることに合意した。このお手盛り改憲により,予算案は11月19,20日には提出できるそうだ。

しかし,予算といえば,国家統治の根本。それを三党の都合で簡単に変えてしまう。これは立憲主義でも法治主義でもない。これでは,いくら立派な憲法があっても,屁の突っ張りにもならない。

予算が通れば,MK・ネパール首相は当分政権を維持できるだろうし,議員諸氏やカントンメントの人民解放軍諸氏の生活も安泰だ。めでたい。

■11月16日談合参加の三党幹部
 プラチャンダ(マオイスト議長)
 バブラム・バタライ(マオイスト副議長,前財務大臣)
 JN・カナル(UML議長)
 BM・アディカリ(UML)
 ラムチャンドラ・ポウデル(NC議員会長)
 S・マハト(NC)
 ネムワン(制憲議会=立法議会議長)

■ネパール暫定憲法2007
第96条A(1) [予算案が提出できないときは]財務大臣は現行年度支出の1/3以内の額を次年度に支出するための法案を立法議会に提出することができる。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2010/11/16 at 23:02

カテゴリー: 憲法, 政党

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首相選挙のドタバタ

第17回首相選挙は,もともと17日(水)の予定だったのに,なぜか今日15日(月)に前倒しされ,ところが,にもかかわらず15日は中止となり,18日(木)に延期となった。猫も目を剥くドタバタ。

立候補者はラムチャンドラ・ポウデルNC議員会長のみ。すでに16回も立候補したのでハクがつき,最高裁もポウデル候補でよいのではないかと示唆した。むろん司法部がこんなことを言うのはどうかと思うが,最高裁がそういいたくなる気持ちは分からないではない。

この最高裁発言を受け,コングレスは制憲議会ネムワン議長に対し,立候補はポウデル氏だけだからポウデル候補を首相と宣言すべきだ,と要求した。他党はもちろんこれに猛反対。司法部も巻き込み,ドタバタ,バタバタ,いよいよ混沌としてきた。

この調子では18日の第17回首相選挙も失敗しそうだ。やはり,これはどう見ても立候補者を出さないマオイストと統一共産党が悪い。わが敬愛する保守主義によれば,時間が正統性を生み出す。とすれば,他のどの理屈でもなく,16回も正々堂々と立候補したその事実だけで,ポウデル氏には他の誰よりも大きな首相候補者としての正統性が認められるようになるかもしれない。

司法部の最高裁が口を出すのはいただけないが,ポウデル氏が16回も立候補したということは歴然たる事実であり,これをこれから否定するのは,他党にはかなり勇気のいることであろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2010/11/15 at 22:48

カテゴリー: 議会, 政党

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