ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

キランvsプラチャンダvsバタライ

マオイストは、11月21日からゴルカのパルンタールで第6回拡大党大会を開催する。その党大会には、プラチャンダ議長、キラン副議長、バブラム・バタライ副議長の3指導者が、それぞれ運動方針案を提出する。ところが、党大会以前にこれが党外に漏れ、各紙が取り上げ、けんけんがくがくの議論を始めた。機密じゃじゃ漏れ。ネパール・マオイストも民主的になったものだ。

1.キラン副議長
左翼過激派は、キラン(モハン・バイダ)副議長。彼によれば、主敵の米帝は今やふらふら、世界革命の客観条件は熟しつつある。ネパール人民にとっては「インド膨張主義」と「ネパール反動勢力」が当面の敵であり、これらをまず殲滅しなければならない。

したがって、マオイストが「人民政府」を解散し、「人民戦争」終結宣言を出したのは、誤りであった。今後は革命的諸勢力の人民統一戦線を強化し、人民蜂起・人民戦争による「人民連邦共和国」の建設を党の運動方針とすべきである。

ところが、プラチャンダ議長は、人民蜂起・人民戦争を棚上げし、右派機会主義者に屈服している。彼は修正主義に傾いている。

2.バブラム・バタライ副議長
バタライ副議長によれば、革命は街頭運動・制憲議会・政府機関の3つを、この順で優先順位を付けつつ、利用すべきであるにもかかわらず、プラチャンダ議長はこれを理解せず、そのため党活動が混乱し革命は前進していない。街頭運動で圧力をかけ、政府機関に浸透しつつ、運動を進めていくべきだ。

また、革命戦略と行動計画は、内外の権力バランスを考慮して作成されなければならない。ネパール人民の敵は、「インド膨張主義者に支援された国内反動勢力」である。バイダ副議長のように「国内反動勢力」と「インド膨張主義者」を丸ごとネパール人民の敵とするのは誤り。「インド膨張主義者」がネパールを直接攻撃しているわけではない。

また、プラチャンダ議長のように王党派との協力を考えるのは、マオイストの立場を害するものであり、誤りである。

3.プラチャンダ議長
プラチャンダ議長によると、ネパールは、革命と独立を目指す勢力と、それらに背を向け「外国反動勢力に屈服する勢力」とに二極分化しつつある。

問題は、党幹部たちの対立。リーダーたちに規律がなく、派閥抗争、分派の動きがあり、運動目標の実現を妨げている。

革命運動は、内外の情勢を見てバランスを取ることが必要だ。街頭運動・制憲議会・政府機関の3戦線作戦は誤り。議会と政府機関を通して運動を進め、進歩的憲法を制定することを目指すべきだ。

4.三極構造の妙
三極構造はもっとも明快な安定した権力構造であり、マオイスト党内が三極構造に落ち着くのは、ごく自然な成り行きである。

急進派のキラン副議長と穏健派のバタライ副議長の二極を、プラチャンダ議長がどうまとめるか? プラチャンダ議長とは話したことはないが、近くで見ただけでもカリスマ性を感じさせる指導者だ。しかも、天性のネアカ。急進派を牽制しつつ、平和構築を進めて行くには欠かせない人物だ。

マオイストが分裂し、収拾のつかない内戦が始まると、たいへんだ。ここはネアカのプラチャンダ議長の政治的手腕に期待したい。

* “Maoist top guns agenda for plenum,” Himalayan News Service, Nov. 12.

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2010/11/13 @ 18:14