ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

陸自隊員UNMIN派遣,4ヶ月延長

日本政府は11月16日,「ネパール国際平和協力隊」(陸自隊員UNMIN派遣)を4ヶ月延長し,2011年3月31日までとした。

ネパール派遣陸自隊員は,日本政府が直接指揮しているわけではない。陸自隊員は,「中央即応集団(CRF)」司令部所属とされ,そこから「個人として」UNMINに派遣され,UNMIN指揮下で停戦監視活動に当たっているのだ。

この「中央即応集団」は2007年3月28日に編成され,国内の緊急事態(テロなど)への対処と,国際平和協力活動を主な任務としている。これは軍と民の間の灰色部分,自衛隊にとっては未開拓の広大な中間地帯である。防衛省はここに目をつけ,軍民協力を促進し,自衛隊の国内外での活動を急拡大させるための尖兵として,中央即応集団を設置したのである。

その自衛隊にとって,陸自隊員UNMIN派遣は絶好のチャンスであった。中央即応集団の編成が2007年3月28日(朝霞駐屯地発足3月31日),陸自隊員(中央即応集団司令部所属)のネパールへ向けての出発が3月30日。ネパール国際平和協力隊は,中央即応集団発足の祝砲,その尖兵といってよいであろう。

しかも,防衛庁は2006年12月の「省」昇格関連法の成立により「省」に昇格し,それと同時に,念願の自衛隊海外活動も晴れて「本来業務」となった。その防衛省にとって,自衛隊の「本来業務」としての初の海外活動が,このネパール国際平和協力隊だったのである。

ネパールは日本では絶大な人気があり,そこでの停戦監視活動にも危険はほとんど無い。ヒマラヤも象も寺院も,素朴な村や子供も,全部「本来業務」としての海外活動の宣伝に使い放題。日本政府が,当事国のネパールや国連以上に陸自隊員のネパール派遣(派兵)に積極的なのは,そのためであろう。前のめり,イケイケドンドンなのだ。
(防衛省幕僚監部HP)

周知のように,ネパールは印中両大国にもまれ外交上手,国連に平和構築支援を要請しつつ,国連が受諾して本格介入し,大金も投入し,引くに引けない状態になると,掌を返したように国連の「無能」を非難し,ちゃんとやれないなら「出ていけ」とさえ要求し,国連とギリギリの取引をしている。実にしたたか,たいしたものだ。

これに対し,国連も,UNMIN派遣期間の延長を当初の1年から,半年ごと,4ヶ月ごとに設定し,それをカードに,ちゃんとやらないなら本当に引き上げるぞ,と脅し,ネパール側の平和努力を要求している。国連もネパール側とギリギリの外交交渉をしているのだ。

国連の次のUNMIN派遣期限は,2011年1月15日まで。これ以上の延長はしない,と国連は宣言している。ネパール側に突きつけた最後通牒なのだ。(実際には,何らかの形で延長される可能性はある。)

これに対し,不思議なのが日本の陸自UNMIN派遣の期間延長。日本の「ネパール国際平和協力隊」派遣(日本出発)は3月30日,UNMIN発足の2ヶ月半後であったため,派遣期間設定がその分ずれることはあり得るが,3年も経過し,国連が「延長」カードを使うため延長期間を4ヶ月ごとに設定し始めても,日本政府はなぜかそれに合わせることをせず,国連の期間延長の先回りをし,UNMIN派遣期限よりも数ヶ月先を陸自派遣の期限に設定してきた。

2010年1月UNMIN期限5月15日まで延長に対し,3月陸自派遣7月31日まで延長。5月UNMIN9月15日まで延長に対し,7月陸自派遣11月30日まで延長。9月UNMIN2011年1月15日まで延長(最後)に対し,11月陸自派遣2011年3月31日まで延長。

陸自派遣期間は,発足時を除き,つねにUNMIN派遣期間より2ヶ月半先までとなっている。発足が2ヶ月半遅れたのと,期間設定の技術的な問題もあるのだろうが,3年以上もたっているのであり,調整ができないはずはない。

日本政府が,つねに国連の先回りをし,陸自派遣期間を延長してしまえば,日本政府は「延長」カードを使用できないし,国連の「延長」カードの効果も殺いでしまう。日本政府は,2大国中国とインドの間に陸自隊員を派遣している,つまり派兵しているのだ。見方によれば,これはかなり大胆な,危険な政策だ。一刻も早く任務を完了し撤退,つまり撤兵するということは考えていないのであろうか。

ネパール陸自隊員派遣は実際には派兵であり,憲法上許されるはずもないが,それをひとまず棚上げしても,なぜ日本政府が国連の先回りをして派遣期間を延長しなければならないのか,なぜそんなに前のめりにならなければならないのか,どう考えても合点がいかない。やはり,「ネパール国際平和協力隊」を自衛隊海外活動の尖兵として利用することが最大の目的となっているのではないだろうか?

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2010/11/22 @ 10:17

カテゴリー: 外交, 平和

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