ネパール評論

ネパール研究会

国家より党優先のマオイスト

マオイスト第6回拡大中央委員会(Plenum)が11月21日,ゴルカのパルンタールではじまった。25日までの予定。
ゴルカ郡パルンタール付近

このプレナムには,全国から6千人が参加,その中にはカントンメント収容の人民解放軍戦闘員1400人も含まれている。あれあれ,これは「包括和平協定」「武器・軍管理監視協定」違反ではないかな?

22日には,バイダ副議長とバタライ副議長が運動方針案を読み上げた。各2時間。バイダ副議長は,人民蜂起で人民民主主義(人民独裁)を実現せよ,と檄を飛ばしたらしい。これに対し,バタライ副議長は,いやいやそれはまずい,まずマオイスト主導で新憲法を制定し平和を実現する努力を尽くすべきだ,もしそれが妨害され新憲法制定が困難になったら,そのとき人民蜂起に訴えるべきだ,と提案したという。

この左右両論を踏まえ,23日午前,プラチャンダ議長が,まあまあ,なあなあの折衷案を出し,ケンケンガクガクの議論を通して弁証法的統一を図る予定とのこと。唯物論的弁証法よりも,やはり本家ヘーゲルの精神的弁証法の方がマオイスト好みらしい。

これはマオイストの大会だから,それはそれでよいが,この拡大中央委員会のおかげで,世界新記録を更新中の首相選挙が棚上げとなり,MK・ネパール暫定首相は「世界虎保護会議」のためロシアに行ってしまった。次の第17回首相選挙は,12月16日(木)の予定。われらがポウデルNC議員団長は,もちろん立候補を継続する。えらい。

ここネパールでは,国家と党の関係はすでに逆転,党の方が国家に優先する。マオイストが政権を取れば,すんなり党主導人民民主主義国に移行できるわけだ。未来は輝かしい。

で,目を未来から足元に転じパンタールを見ると,ここは20年ほど前いったことがあり,美しいところなのだが,なんと,プレナム参加者の6分の1,1000人余が食中毒で倒れてしまった。飲料水か食事が原因らしい。未来は輝かしい。が,足元はおぼつかない。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2010/11/23 @ 19:49