ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

最高裁に尻ぬぐいさせる議会

ヤダブ大統領が,暫定憲法51条(3)により立法議会を招集した。明日,12月19日午後1時開会。要求したのは,与党利権を満喫しているUML,NC以外の主要政党だ。さて,何人が巨大催事(場)に集まるか?

そんな議会にしびれをきたした人々が,11月28日,最高裁に直訴に及んだ。「憲法法曹フォーラム」のC.K.ギャワリ弁護士らが,首相選挙におけるUMLの中立(白票ないし欠席)政策は憲法の精神に反する,首相選挙を最初からやり直せ,という判決を出すことを求める訴えを出したのだ。

この訴えに対し,17日,最高裁はこう裁決した。すなわち,唯一の立候補者ラムチャンドラ・ポウデル氏(NC)は,対立候補なしを理由に当選とはされず,当選には過半数票の獲得が必要だ。また,政党に中立を認めている議会法41,42条は憲法38条,70条(2)(6)に違反し無効である,と。つまり,首相選挙における投票は議員の義務というわけだ。

議会法の合憲・違憲解釈は微妙であり,軽々に判断はできないが,少なくともこの判決で最高裁がほんらい議会が解決すべき政治問題に割って入り,11月28日の提訴からわずか2週間余で問題をバッサリ一刀両断にし,始末してしまった(しようとした)ことは事実だ。

日本や他の大多数の国々では考えられないことだが,ネパールは司法積極主義の国だ。1994年には,アディカリ首相の議会解散に最高裁が違憲判決をだし,UML政権を葬り去ってしまった。議会政治が成熟していないので,最高裁に直訴をせざるをえないということだろうが,議会で解決できない政治問題を最高裁が本当に解決できるのかどうか,大いに疑問である。

司法,つまり「法の支配」は,ほんらい非民主的なものだ。それを忘れ,司法に尻ぬぐいしてもらうのは,議会制民主主義の自殺行為だ。他人に尻を拭ってもらってよいのは幼児だけだ,ということを忘れてはなるまい。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2010/12/18 @ 12:53