ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

ロイは無実だ,HRW / A.セン

敬愛するロイが,Binayak Senらとともに,終身刑もあり得る反国家扇動罪の容疑を掛けられ,投獄の危機にある。心配だ。

国際社会も,インド政府・社会の不寛容に対し警鐘を鳴らし始めた。Prokerala News(Jan 7)によれば,HRW(Human Right Watch)のM.G. Ganguly南アジア代表が,「平和的抗議を黙らせるため反国家扇動罪を使うのは抑圧的政府の証拠だ」と批判した。「人権侵害に対し平和的に抗議することは,言論の自由の核心にある。決して,反国家扇動ではない。」その通り,彼のいうことは正しい。

同じく翌日のProkerala News(Jan 8)によれば,今度はノーベル経済学賞受賞者アマルティア・センが,マオイスト・シンパ嫌疑でビナヤク・センに終身刑を科そうとするのは「正当化し得ない訴追である」と批判し,A.ロイについても,「[カシミールに関する]ロイ発言は愛国心を傷つけたと非難された。しかし,愛国心しか表現してはならないといった義務はどこにもない」と弁護した。

またTimes of India(Jan 9)によれば,A.センは,ビナヤク・センに対する終身刑判決(チャッチスガル裁判所)を批判し,こうも述べている――

「反国家的扇動は暴力による国家転覆扇動を意味する。ビナヤクがそのようなことをしたとは聞いていない。・・・・いや逆に,彼は暴力は悪であると書いている。それは,反国家的扇動に対する根底からの道徳的批判である。・・・・
 経済的成長は極めて重要だが,決して目的それ自体ではない。それは物質的な事柄であって,人間的な事柄ではない。私自身を含め,ビナヤクらは,国家の発展は人々の生活を見て判断されるべきだと信じている。」

さすがA.セン,問題の本質を鋭く突いている。

ところで,このロイやビナヤクに対する反国家扇動罪,国家反逆罪(treason)での告発そのものは,インド政治の未成熟を物語るが,それはそれとして,わがネパールと比較すると,議論のレベルの高さ,鋭さ,つまり「面白さ」には圧倒されざるをえない。ネパールがインド水準に達するのは,いつのことだろうか? いまのところ,小国ネパールは大国インドには,議論においても到底及ばない。残念ながら。

本題に戻ると,ロイやビナヤクの反国家扇動罪事件の今後の展開は予断を許さないが,HRWやアムネスティー,あるいはA.センやチョムスキーといった著名な機関や知識人が彼らの弁護に回り始めており,いかなインド国家・社会といえども,これは無視できないであろう。ロイやビナヤクの嫌疑が晴れることを願っている。

■Binayak Sen(1950-)。医者(小児科,公衆衛生学)として国内外で活動。「市民的自由人民協会」副会長。ポールハリソン賞(2004),RR・ケイタン金賞(2007)。チャッティスガル刑務所投獄中の2008年,世界保健協会から世界の保健・人権への貢献を認められ表彰される。チャッティスガル裁判所で2010年12月24日,マオイストとの関係を持ち反国家扇動活動をしたとして終身刑を言い渡される。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/01/10 @ 12:08

カテゴリー: インド, マオイスト, 民主主義, 人権

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