ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

マオイストの憲法案(13)

4(6) 正義への権利

マオイスト憲法案第26条は「正義への権利」を保障している。

26条(1) 逮捕勾留には容疑事実の告知が必要。
(2) 弁護人依頼権。ただし,「非居住ネパール人」の予防拘禁と敵国市民には適用されない。
(3) 逮捕後24時間以内に裁判所に出頭。勾留期間の限定(ただし裁判所の許可ある場合は延長可能)。ただし,「非居住ネパール人」の予防拘禁と敵国市民には適用されない。
(4) 遡及処罰(事後法)の禁止。
(5) 判決確定までの無罪推定。
(6) 二重処罰の禁止。
(7) 自白強要の禁止。
(8) 裁判手続きの告知を受ける権利。
(9) 公正な裁判を受ける権利。
(10) 無償法律扶助を受ける権利。

被疑者・被告人の権利については,1990年憲法で大幅に改善され,暫定憲法へと継承された。この部分は,マオイスト案も暫定憲法とほぼ同じ。

気になるのは,暫定憲法もマオイスト案も,(2)で予防拘禁を認め,(2)(3)で非居住ネパール人と敵国市民を適用除外していること。人権の普遍性から考えると,これは問題である。

また,ネパールでは,法の規定と現実の運用の間に大きな落差がある。憲法や他の法律でいくら厳格に権利義務を規定しようが,実際には空文化し,弱者には司法の正義は及ばない。当事者の力関係に左右される場合が多い。これは,多かれ少なかれ,途上国共通の課題であろう。


カトマンズ郡裁判所(2008年8月)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/04/12 @ 12:01

カテゴリー: マオイスト, 司法, 憲法

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