ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

マオイストの憲法案(21)

4(15)労働権,労働者の権利,健康権,食料権,住居権

マオイスト憲法案第39~43条は,労働,健康,住居に関する諸権利を規定している。

第39条 労働権
 (1)全市民に被雇用権を保障
 (2)雇用先の選択権
 (3)失業者には手当支給

第40条 労働者の権利
 (1)適切な労働環境への権利,および必要な訓練を受ける権利
 (2)尊厳ある生活に必要な賃金,設備,社会保障への権利
 (3)労働組合結成権,団体交渉権,ストライキ権
 (4)各レベルの労働裁判所設置

第41条 健康権
 (1)全市民に無償基礎保健サービスへの権利および救急医療への権利を保障
 (2)生殖保健の権利
 (3)説明同意による保健サービスへの権利
 (4)平等な保健サービスへの権利
 (5)安全な水と衛生への権利

第42条 食料権
 (1)全市民に食料への権利保障
 (2)食糧不足から保護される権利
 (3)食料主権の保障

第43条 住居権
 (1)適切な住居への権利
 (2)法または裁判所命令による場合を除き,住居から退去させられない権利。住居不可侵

――以上の権利保障を見ると,他のところでもそうだったが,マオイストはありとあらゆる権利を思いつくまま列挙したという印象が否めない。

たとえば,労働に関する権利は暫定憲法よりはるかに広範かつ具体的である。マオイストが労働者の権利を手厚く保障しようとするのは当然だが,ここまで細々と憲法に書く必要があるのか,また実効性はあるのか,はなはだ疑問である。

健康に関する権利についても,同じことがいえる。

また,食料への権利については,世界に先駆け「食料主権」を保障しているが,具体的にそれが何を意味しているかは,はっきりしない。

いずれにせよ,憲法に権利を列挙することそれ自体は難しくない。問題は実効性。憲法で保障されている権利が,実際にはほとんど保障されないのであれば,憲法は空文と見なされ,根底から信頼を失い,立憲政治は崩壊してしまうだろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/07/04 @ 21:55