ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

マオイストの憲法案(28)

第5編 国家の階層構造と国家権力の配分(1)

第59条 定義
 (a)連邦=最上位レベル。連邦制ネパールの総体。
 (b)州=ネパールを構成する州。
 (c)地域レベル=州内の村と市。
 (d)特別機構=州内の自治区、特別区、保護区
 (e)自治区=特定の民族もしくは共同体または言語集団の集住する州内の地区。
 (f)保護区=小集団、極度に周縁化された民族集団、共同体および文化地域の保護育成のため設定される州内の地区
 (g)特別区=(e)または(f)以外の地区で経済的社会的に低開発の地区。
 (h)国家権力=国家の行政権、立法権および司法権。
 (i)リスト=連邦、州、地域および特別機構の下に設定される自治区が行使する憲法上の具体的権利のリスト。

第60条 国家の階層構造と国家権力の形態
 (1)ネパールの国家権力は連邦、州、地域および特別機構が行使。
 (2)連邦、州、地域および特別機構は、ネパールの国民統一、統合および主権、国の長期的利益、総合的開発、多党競争制民主主義および比例的・包摂的代表の権利を遵守。
 (3)自治区の先住民族のアイデンティティと自治の保障。

第61条 連邦制ネパールの階層構造
 (1)連邦制ネパールの基本構造は、連邦、州および地域の3階層からなる。
 (2)連邦と州には、立法部、司法部および行政部を設置。
 (3)地域政府には、本憲法付則8により地域法に基づき権限を行使する立法権、行政権および司法権をもつ選挙制評議会を設置。
 (4)(1)の他に、州内に自治区、特別区および保護区を設置。
 (5)自治区には、本憲法付則7により地域法に基づき権限を行使する立法権、行政権および司法権をもつ選挙制評議会を設置。

――以上のように、マオイスト憲法案の統治構造はきわめて複雑であり、しかも自治権が各レベル政府(自治体)に大幅に認められている。地域レベルの村や市には立法権、行政権の他に、司法権すら認められている。

その一方、ここでも国民統合や国家主権が明記されており、運用次第で、分権的とも中央集権的ともなりうる。

また、このような複雑な統治制度を実際に効率的に運用できるかどうかも、はなはだ疑問である。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/08/05 @ 08:45

カテゴリー: マオイスト, 憲法

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