ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

武器引き渡しは「自殺行為」,バイダ派

1.武器庫鍵引き渡し
9月1日,マオイストは常任委員会決定に基づき,武器保管庫の鍵を「軍統合特別委員会」に引き渡すことにし,各PLA宿営地(Cantonment)では,武器の点検確認後,鍵が特別委員会側(国軍,警察,武装警察,PLA各2名,計8名)に渡された。(7宿営地で実施。ロルパ方面部隊などは未完。)

2.プラチャンダ派とバイダ派の衝突
これに対し,モハン・バイダ(キラン)副議長は声明を出し,「これは自殺的だ」と非難した。そして,9月2日,全国チャッカ・ジャムを実施し,今後,松明行進など,反対運動をさらに拡大していくと宣言した。すでに,カブレ・パンチカールではプラチャンダ派とバイダ派が衝突し負傷者が出た。

この動きを見て,プラチャンダ議長は9月2日付けで声明を出し,鍵引き渡しの正当性を強調し,キラン同志の言動に対し「「憂慮」を表明,党の公式決定を一致団結して支持するよう要請した。党公式文書による真正面からのバイダ派非難である。

3.実力闘争再開か?
人民解放軍(PLA)は,いうまでもなくマオイストの中核だ。そして,軍の生命線は武器にある。その武器を,PLA国軍統合も決まらないのに政府に引き渡すのは,人民戦争を戦ってきた人々にとっては、たしかに「自殺行為」と見えるだろう。バイダ副議長の怒りはよく分かる。

しかし,マオイストはいまや政府与党だ。プラチャンダ議長が、首相としてのバタライ副議長(軍統合特別委員会委員長)に武器庫の鍵を引き渡したにすぎない。

それでも,バイダ派からは,それは革命への裏切りと見える。武器庫鍵の引き渡しには,さっそく米駐ネ大使が歓迎を表明した。プラチャンダ=バタライ派が米印と手を組み革命をつぶしにかかっている,と急進派は見るわけだ。

ネパールの市場社会化は,目もくらむ格差をもたらしている。この状況では,バイダ派支持はむしろ拡大していく。そして,それをバネにマオイスト左派が分離し,再び実力闘争を始める可能性は十分にある。予断を許さない状況だ。

* ekantipur, Sep2; Nepalnewscom, Sep2; Republica, Sep3

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/09/03 @ 13:55