ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

ヒシラ・ヤミは現代のクサンチッペか

首相夫人ヒシラ・ヤミが、散々酷評されている。マオイスト女性の鑑なのに。
 ヒシラ・ヤミ著「人民戦争と女性解放」

夫のバブラム・バタライ首相は,国産ムスタン車を公用車として採用,庶民の拍手喝采を浴びた。首相はネルー大学博士であり,博識のインテリ。かつて碩学J.S.ミルが「太った豚になるより,やせたソクラテスたれ」と諭したが,バタライ首相はまさしくその「やせたソクラテス」といってよいだろう。あるいは,少なくとも,そう見られたい,と思っているといってよいだろう。

バブラム首相がソクラテスなら,その妻ヒシラ・ヤミは、当然,クサンチッペ,悪妻だ。夫が160万ルピーのムスタン車なのに,妻ヤミは豪華トヨタ・プラドを首相夫人車として要求したという。ネパールでの価格は1500万ルピー,ムスタン車の10倍だ。
 ネパール国産ムスタン車
トヨタ・プラド

また,夫の権力を笠に着て,各省の役人を官邸に呼びつけ,私的な用事を命じているという。息のかかった団体への資金援助も要求しているらしい。まさしく悪妻,現代のクサンチッペといってよい。

かつてソクラテスも,自分の妻さえ説得できないくせに,偉そうなことをいうな,とさんざん非難された。碩学バブラム博士は,当然,この故事を熟知しており,さっそく妻ヤミの説得に当たった。それが利いたのか,ヤミは要求を引き下げ,インド車ボレロにしたという。といっても,これも300万ルピー以上はする。やはり,ヤミは悪妻だ。
インド車ボレロ

しかし,たしかにそう見えはするが,本当に,そうだろうか? ソクラテスは,クサンチッペがいたからこそ,「やせたソクラテス」たりえたのではないだろうか? クサンチッペの常識が,ソクラテスの非常識を際立たせると同時に,非常識の自滅をかろうじて引き留めていたのではないのか?

もしそうだとすると,バブラム首相は,悪妻ヤミにより引き立てられ,生かされているともいえる。バブラム首相が「やせたソクラテス」たろうとすれば,ヤミはどうあっても「現代のクサンチッペ」たらざるをえない。夫のために,悪妻を引き受けるだけの度量がヒシラ・ヤミにはあるのだろうか?

* ekantipur, Sep.28-29.

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/09/29 @ 20:56

カテゴリー: マオイスト, 政治,

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