ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

Archive for 10月 2011

キリスト教墓地要求,ハンストへ

1.復活のための遺体
墓は,キリスト教にとって,おそらく他のどの宗教におけるよりも大切だろう。自分の身体(骨)を残さねば,唯一独自の存在たる自分が復活し,永遠の命をえることができなくなるからだ。したがって,本来なら,火葬は許されず,ましてや海への散骨など,もってのほかということになる。

2.国家世俗化による社会宗教化
ネパールがヒンドゥー教国家であった頃は,キリスト教は抑圧され,埋葬などの権利を表立って主張できなかった反面,地域社会もパシュパティ森への埋葬を黙認するなど,キリスト教を諸宗教の1つとして事実上容認してきた。

ところが,2006年革命により,ネパールが世俗国家となり,各民族・各宗教の固有の「権利」が公認されると,キリスト教も当然ながら自己のアイデンティティを明確化させ,信者各個人の永遠のアイデンティティの地上における拠点たる墓を要求し始めた。

直接の引き金は,「パシュパティ地域開発トラスト(PADT)」によるパシュパティ森キリスト教徒埋葬拒否宣言だが,国家がアイデンティティ政治を公認し推進し始めたのだから,ヒンドゥー教側も自己のアイデンティティの明確化に乗り出し,そうした宗教紛争を引き起こすのは当然といえよう。

3.墓地要求ハンスト
こうした流れを背景に,キリスト教会は,10月31日までに,カトマンズ地区にキリスト教墓地が確保されるめどがつかなければ,全国ハンストに入ると宣言した。「キリスト教墓地全国闘争委員会」によれば,政府は文化省内に5人委員会を設置したものの,今のところ何の進展もないという。

闘争委員会は,パタンの南方のゴティケルに2000ロパニの墓地を直ちに提供せよ,と政府に要求している。

4.コミュナル紛争へ?
国家世俗化が社会宗教化を促し,コミュナル(宗教社会間)紛争を激化させる。これは,予想されたこととはいえ,やっかいな事態だ。

9月26日には,カトマンズのど真ん中,ジャメ・マスジット前で,イスラム青年指導者が,白昼,暗殺された。ムスリムは激怒し,徹底捜査を要求しているが,全く進展がない。犯人のめどはついているのだろうが,おそらく恐ろしくて手が出せないのだろう。

一方,唯物論マオイスト政権は,いたるところで仏教を政治的に利用し,たとえばルンビニ大開発を進めようとしている。政府がこのようにして仏教を「国教化」すれば,いずれヒンドゥー教やイスラム教,あるいはキリスト教が反発し,反仏教闘争が始まるだろう。

難しい状況だ。キリスト教墓地問題は,こじらせると,大変なことになる。

キリスト教墓地問題
* ekantipur, Oct29

谷川昌幸(C)

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2011/10/30 at 11:30

カテゴリー: 宗教, 人権

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制憲議会任期切れと軍統合問題

制憲議会の任期が,11月30日で満了する。それまでに人民解放軍の処遇を決め,憲法改正案を作成しないと,またまた制憲議会の任期延長となる。

これ以上の任期延長が難しいことは皆わかっているので,このところ,交渉がかなり煮詰まってきた。憲法案は,その気になれば,明日にでもできる。問題は,その気になるかどうかだ。(日本でも,マッカーサー草案提示後,2ヶ月程度で憲法改正案が作成された。)

人民解放軍の処遇についても,双方の要求がかなり接近してきた。

            マオイスト      NC・UML
国軍統合兵員数     7千人       5千人
社会復帰給付金(1人) 60-90万ルピー   30-60万ルピー

人民解放軍の本来の兵力は,せいぜい5~7千人。これはプラチャンダ議長も認めている。国軍統合兵員数では,合意は近いといってよい。

社会復帰する残りの1万3千~1万5千人への給付金も,1人あたり90万ルピー以内であり,これも十分妥協可能な数字だ。

バブラム首相やプラチャンダ議長は,ほぼ上記の線で手を打ちたいと考えているのだろうが,問題はバイダ副議長らの急進派。1万数千人もが,一時金で社会復帰に納得するかどうか? 

人民解放軍の処遇が決まらないと,新憲法もできず,制憲議会をまた延長せざるをえない。11月30日まで,後一ヶ月。またまた危機がやってくる。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/10/29 at 18:31

カテゴリー: その他, マオイスト, 平和

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中国版「チベット今昔」の面白さ

ネットの「チベット今昔」をちらっと見たら,これがなかなか面白い。

「新チベット」スライドと「旧チベット」スライドが上下に配され,右から左に流れていく。50年前の悲惨と現在の幸福が一目瞭然だ。旧チベットの特権階級は打倒され,被搾取農民・労働者は解放された。

このHPには,同趣旨の記事や写真が満載されており,確かにそうだ,その通り,と大いに納得させられた。よくできたホームページだ。

在ネ中国大使館のHPが入口。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/10/28 at 10:33

カテゴリー: 外交, 中国, 人権

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プラチャンダのルンビニ開発,国連をも取り込む

プラチャンダ議長は,エベレストに赤旗を立てただけに,やはりスケールがでかい。ルンビニ開発に,今度は,国連を取り込むため訪米し,11月7日,パン・キムン事務総長と交渉するという。

周知のように,インドはネパールを「属国」と見なしており,外国勢力のネパール介入を警戒してきた。国連も例外ではなく,ことネパールに関しては,インドと国連は犬猿の仲なのだ。国連がネパールに入れば,欧米や中国がついてくる。

プラチャンダ議長は,そうした国際関係を分かった上で,国連を使ってインドを牽制し,ネパール国益を守りつつ,開発利益を手にしようとしている。

しかも,プラチャンダ議長が共同議長を務める中国系NGO「APECF」には,なぜかアメリカ政財界の大物が名を連ねている。国連は,APECF共同議長たるプラチャンダ議長の要請をむげに断るわけにはいかないだろう。もし仮にパン・キムン国連事務総長が,プラチャンダ議長の要請に応え,「大ルンビニ開発国際委員会」の委員長(議長)を引き受けることになれば,たとえ形だけであれ,その効果は計り知れない。米中は,国連・APECFを介してタライに正々堂々と入ってこれる。

これはインド政府のもっとも恐れる事態だ。タライは「インド領」なのに,中米権益が拡大すれば,タライの「シッキム化」は絶望的となる。

国連が,プラチャンダ議長の誘いに乗るかどうか? 目が離せない。

谷川昌幸(C)

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2011/10/27 at 19:19

プラチャンダのルンビニ開発とバブラムのBIPPA,または中印覇権競争

1.ネパールと中印の相関図
ネパール政治は,重要なことであればあるほど,情報不足で確かなことはいいにくいが,現在の大状況を大胆に図式化すると,こうなる。

2.プラチャンダ議長と中国のルンビニ開発
プラチャンダ議長は,前述のように,「ルンビニ開発国家指導委員会」の委員長に選出される一方,中国系NGO「アジア太平洋交流協力基金(APECF)」の共同議長となっている。ネパール政府が公式にAPECFのルンビニ開発計画を承認したのかどうか,そこは例のごとく,よく分からないが,政府がプラチャンダ議長を政府の「ルンビニ開発委員会」委員長に任命し,内外援助獲得の権限を与えたのだから,APECFルンビニ開発にも暗黙のゴーサインを出したとみてよいだろう。(力関係で逆転され,取り消されることもあるが。)

これは,われらが王様の「人民評論」によれば,「中国外交の大勝利」であり,これにより「中国はタライに足場をえた」ことになる。

ルンビニは仏教の聖地。インドは,自国では仏教をほぼ絶滅させておきながら,お釈迦様の生誕地はもともとインド領だと主張し,取り戻そうとあれこれ画策してきた。

その「領土紛争の地」ルンビニは,観光地としても産業立地としても有望な,きわめて豊かな土地である。そのルンビニに,中国がAPECFを介して本格的に入ってくる。しかも,インドの獅子心中の虫,印マオイストの友党の親分プラチャンダ議長の手引きで。

もちろんプラチャンダ議長自身は百戦錬磨の強者であり,そう簡単に中国の傀儡になったりはしない。数日前から,プラチャンダは,泣く子も黙る印情報局RAWのエージェントだというリーク情報がさかんに流されている。プラチャンダ議長が中国をバックにルンビニ開発を進めようとしているのは確からしいが,もしそうだとしたら,この時期になぜRAWエージェント情報が流されるのか? 複雑怪奇,平和ぼけ日本にいては,皆目見当もつかない。

しかし,そうした複雑怪奇な事柄はとりあえず括弧に入れ,表面的な流れだけから見ると,プラチャンダ議長が,中国をバックに,政治的・経済的にインドと対抗しようとしていることは,明らかである。われらが王様――王様は親中国であった――の「人民評論」がいっているのだから,間違いない。

2.バブラム首相とインドのBIPPA
そのプラチャンダ議長に対抗するのが,バブラム首相=インド連合だ。バブラム首相は訪印し,10月21日,インドとの間で「二国間投資促進保護協定(BIPPA)」をはじめとする経済協力協定をいくつか締結した。こちらは,インドのための出血大サービス。

インド大使館の公式説明によると,インド資本はネパール資本と同等の扱いを受け,もし紛争や国有化などで損害が生じたらネパール政府がそれを補償する。

インドが狙っているのは,経済的にはネパールにおけるインド資本の自由と安全,特にダム(水利・発電),道路,鉄道などの建設や,知的財産権の保護であり,政治的にはマオイスト抑圧や中国のタライ進出阻止だ。

これをマオイスト首相が呑んだ。マオイスト首相が,党綱領の大黒柱の1つ,国内産業保護を否定し,マオイスト人民解放闘争の抑圧を受け容れ,しかもあろうことか,マオイスト運動によりインド資本に損害が発生したら,ネパール政府が損害賠償をするという。

3.バイダ派の反撃
バブラム首相のこのBIPPA締結は,当然ながら,マオイスト内急進派の激しい怒りを買った。そりゃそうだ。国内産業保護をやめ,印大国主義資本のネパール侵出を認め,さらにマオイスト急進派の弾圧も約束してきた,と受け取られたからである。

バイダ副議長ら急進派は,BIPPAは「反国家的」で党綱領違反だ,こんな売国的協定は直ちに破棄せよ,さもなければ街頭反対運動に立ち上がる,と激しく政府を攻撃し始めた。

4.プラチャンダのステーツマンシップ
ここに登場するのが,プラチャンダ議長。彼自身,ルンビニ開発の当事者でありながら,バブラム首相とバイダ副議長一派との間に入り,BIPPAについては,要検討としながらも,バブラム首相の解任には反対している。

絶妙の立ち位置だ。RAWエージェントとのリーク情報も,ワサビのように利いている。

5.NC,UMLの日和見
情けないのが,中間派のNCとUML。NCのRS・マハト議員は,BIPPAを評価し,マオイストにインドの水力発電事業攻撃をやめよと要求しつつも,いまいそいでBIPPAを締結する必要はなかったなどと,よく分からないような批判をしている。

UMLも似たり寄ったり。落ち目で日和り,日和ってまた落ちる。

6.欲望渦巻く釈尊の地ルンビニ
釈尊は,悟りを開き,金・色から解脱し,仏陀となった。その仏陀の生誕地が,いまや印中二大国の経済的・政治的覇権争いの最前線となりつつある。バチ当たりなことだ。

プラチャンダは偉大であり,印中対立をさえ巧みに利用して動いているように見えるが,何せRAW,CIA,ISIや,各派テロリストらがうごめくネパールのこと,これから先どうなるか,全く分からない。

タライは豊饒の地。ここが,最下等の人間活動たる金儲け(経済競争)の地となり果てたら,いかなお釈迦様であってもお手上げ,ネパールは混沌に陥り,収拾がつかなくなるだろう。そして,マオイストは割れ,第二次人民戦争が始まるにちがいない。

* ekantipur, Oct26; Nepali Times, Oct25; Himalayan Times, Oct24&25; People’s Review, Oct21; PTI, Oct22; Times of India, Oct22; Embassey of India Quait, HP, Oct21.

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/10/26 at 19:29

カテゴリー: インド, マオイスト, 経済, 外交, 中国

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ルンビニ開発とプラチャンダと中印米権力政治

1.ルンビニ開発委員会
マオイスト=マデシ連立政府は10月17日,プラチャンダ議長を委員長とする「ルンビニ開発国家指導委員会」の設立と,「ルンビニ観光年2012」を決定した。委員会には,ルンビニ開発計画の作成,外国援助の獲得等の権限が与えられた。

プラチャンダは,中国系NGO「アジア太平洋交流協力基金(APECF)」の共同議長の1人。APECFは,ルンビニ開発に30億ドル拠出するとの協定を国連工業開発機構(UNIDO)との間で締結したと発表し,議論を呼んでいる。(UNIDOは締結否定)

 タライの工場群,ルンビニ2008.9.12

2.アジア太平洋交流協力基金
(1)組織と活動
プラチャンダが共同議長を務めるAPECFは,北京に執行本部を置き,香港を拠点とするNGOだが,その正体はよく分からない。

執行本部:北京
事務所:香港,台湾,広州
活動目的
 ・アジア太平洋地域の開発援助,相互理解促進,新しいアジア型開発モデルの研究など。
 ・香港を拠点に,アジア太平洋地域に貢献。
活動方法
 ・国連,各国政府,他のNGOとの協力。
 ・宗教間の平和的関係強化。
 ・情報技術の活用。
共同議長
 ・S.C. Rockefeller=米ロックフェラー財閥
 ・ J.Rosen=米ユダヤ会議会長
 ・C.H. Charney=米元中東特使
 ・プラチャンダ=ネパール・マオイスト議長
 ・(パラス=ネパール元皇太子。現在は名簿掲載なし。
 ・他に,タイ元副首相,SDCグループ会長,マレーシア常青集団会長
執行共同議長
 ・Xiao Wunan=国連宗教協力機構議長,中国社会経済文化交流協会副議長

(2)執行共同議長
APECFの活動拠点は香港だが,執行共同議長は北京にいる。こうした組織の場合,実権は執行役員が握っているので,この組織はXiao氏または彼を使っている組織が動かしているとみてよいだろう。

Xiao氏は,「世界仏教平和基金」副会長であり,中国共産党幹部である(はっきりした地位不明)。もしそうであるなら,氏の下にあるAPECFは中国政府系の国際NGOということになる。

(3)活動目的
APECFホームページによると,その活動目的は「新しいアジア型開発モデル」による開発であり,そのために「新しいアジア太平洋シンクタンク」をつくり,「宗教間の平和的関係強化」も促進するという。なにやらきな臭い。

「新しい」を「中国型」と置き換えられないだろうか? また,Xiao氏は「世界仏教平和基金」副会長。この基金がどのような「仏教」の立場に立つのか分からないが,もしかして「宗教間の平和的関係強化」もチベットがらみなのではないだろうか? よく分からない。

さらに不思議なのは,中国政府系なのに,米英の財閥系や政府系の要人が共同議長に名を連ねていること。中国や米英のしたたかさ,懐の深さがうかがえるが,その意図がどこにあるのか,やはりよく分からない。

(4)パラス元皇太子とプラチャンダ議長
そして,ネパールにとって摩訶不思議なのが,なんと,あのパラス元皇太子が共同議長(設立メンバーとして?)に名を連ねていたこと。

現在の名簿にはパラス元皇太子の名はないが,その代わりに(パラス元皇太子の後任として?)われらが英雄プラチャンダ議長が共同議長となっている。ネパール・マオイストは,米テロリスト・リストに載せられている。そのテロリストの親玉を共同議長の1人とし,そこには米英資本主義の親玉が名を連ねている。

これは不思議? ロックフェラー家,米ユダヤ会議,米政府元高官,華僑資本――これらが,ネパールとどのような関係にあるのか?

3.プラチャンダの目論見
(1)利権と政治的計算
APECFルンビニ開発は,黄金色の生臭い話しだが,清濁併せのむ豪傑,プラチャンダのやりそうなことだ。もしこれが政府決定通り実行されれば,おそらく巨大な直接的・間接的利権がプラチャンダ議長側に転がり込むだろう。これは明々白々。

そして,プラチャンダの凄さは,その明々白々なことを,白昼堂々とやってしまうところ。巨大ベッドを公邸に搬入したのと同じ天真爛漫さ。愛嬌があり,憎めない。

しかし,ルンビニ開発は,プラチャンダの政治的リアリズムに裏打ちされた,よく計算された現実的政策でもあることを見逃してはならない。

(2)仏教の政治的利用
プラチャンダは毛沢東主義者であり,かつての国教,ヒンドゥー教とは意識的に距離を取ってきた。ネパールでは,反国王民主化運動は,宗教的には反ヒンドゥー,親仏教で闘われてきた。ヒンドゥー教は,ビシュヌ化身たる国王支配のイデオロギーとして,またカースト支配を正当化する封建制イデオロギーとして,厳しく批判された。

これに対し,仏教は,平和学教祖ガルトゥングが唱えるような平和の宗教として,また反カースト差別の人権宗教・民主主義宗教として,褒め称えられ,いまやネパールの準国教とされている。高カーストの政治家や知識人ですら,口を開けば,仏教万歳であり,国家諸機関も仏画・仏像をお守りとして,いたるところで利用している。

プラチャンダ議長が,ルンビニ開発に目をつけたのは,さすがである。プラチャンダは,仏教など屁とも思っていないだろうが,ネアカ現実主義者として,仏教は政治的に十分利用できると計算したのだ。

(3)政治的現実主義者
さらに注目すべきは,プラチャンダが共同議長として中国系NGOを引き込んだこと,ルンビニ開発が,中国をバックとしたパワーポリティックスの側面をもつことは明白である。しかも,米英政財界の保険も掛けてある。

インドの目の前,国境沿いに,ヒンドゥー教と敵対する仏教の巨大センターが,インドと敵対する中国の支援で,建設される。これは,生々しいパワーポリティックスであり,プラチャンダは,リアリストとして,そこにネパール国益を掛けようとしているのだ。

また,これはマオイスト政権を支えるマデシ対策の側面もある。ルンビニ開発が始まれば,様々な利権が生まれ,それらをタライ有力勢力にばらまくことができる。マデシは一般に親インドだが,開発と利権によりマオイスト支持に向かわせることができるかもしれない。マオイスト=マデシ連合で,NC,UMLを干上がらせてしまうのだ。

4.プラチャンダの現実主義的ナショナリズム
プラチャンダは,やはり大物だ。ネアカのくせに,底知れぬリアリズムの不気味さがある。

ルンビニ開発は,中・印・米の権力闘争の場であり,ヒンドゥーと仏教の宗教闘争の場であり,開発利権をめぐる中国資本と米英資本の競争の場であり,そしてネパール・ナショナリズムのための現実主義者プラチャンダの闘いの場でもある。ちょっと,褒めすぎかな? が,そう見た方が,プラチャンダの私利私欲とみる,下種の勘繰りのような見方よりも,断然面白い。

今後,タライがネパールの政治・経済の中心になることは,間違いない。ルンビニ開発は,その文化的先兵であろう。プラチャンダは,そのネパール文化革命の旗手たらんとしているのではないか? 具体的には何の根拠もないが,そんな気がしてならない。

* http://www.apecf.org/english/index.html
* ekantipur, Oct17; Himalayan, Oct17.

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/10/19 at 15:00

プラチャンダ議長の節操

プラチャンダ議長の父親が10月9日死去し,葬儀が行われた。ヒンドゥー教では,親族の死後13日間が喪(क्रिया)だというが,共産主義唯物論者のプラチャンダ議長とその家族は,そうした喪には服さないという。

また,プラチャンダ議長は普通のスーツで通し,自ら火葬の薪に点火し,頭も剃らない。プ議長が父親に冷淡なわけではない。父の死を涙して悲しんでいたという。

報道だけでは詳細は分からないが,少なくともプラチャンダ議長は,マルクス・レーニン・スターリン・毛沢東の輝かしい伝統を正統に継承するネパール共産党の党首として,マオイスト旗で遺体を覆うことでもって父親への最高の敬意を表したのだ。

世俗国家のヤダブ大統領やバブラム首相が嬉々としてヒンドゥー教儀式に参列し宗教儀式を遂行するのに対し,プラチャンダ議長は,首相だったときも,インドラ祭には参加しなかった
 ▼インドラ祭と的外れマオイスト

プラチャンダ議長は,マオイストとしての基本的節操を頑固に貫いている。巨大ベッドを買おうが,大法螺を吹こうが,ルンビニ疑惑があろうが,やはりプラチャンダは勇敢であり,抜きんでて偉大である。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/10/10 at 17:40