ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

和平7項目合意成立,プラチャンダの決断

1.プラチャンダの決断
最終的和平のための「7項目合意」が11月1日,マオイスト,コングレス,統一共産党,マデシ連合の間で成立し,和平交渉は大きく前進した。決断したのは,やはりわれらが英雄プラチャンダ議長であった。マオイスト内強硬派の反対を押し切り,大幅譲歩で,合意に達したのだ。

2.7項目合意
(1)人民解放軍(PLA)戦闘員の統合と社会復帰
 ・戦闘員の現況確認。
 ・国軍統合は,6500人以内。
 ・PLAを統合する部隊(Directrate)の兵員は,65%が国軍,35%がPLA。
 ・部隊は,開発建設,森林保全,産業保安,災害危機管理を担当。
 ・国軍統合PLA戦闘員は,治安要員資格基準を満たすこと。ただし,年齢(3歳以内),教育(1年以内),婚姻については柔軟に適用。
 ・国軍統合後の地位は,治安機関基準による。ただし,国軍将兵の昇進の不利とならないようにする。(ポストを増やすということか?)
 ・国軍統合期日は,UNMIN資格審査日とする。
 ・保管庫の武器は,政府所有となる。

(2)社会復帰
 ・社会復帰希望者には,1人当たり60-90万ルピー相当の復帰支援。教育,職業訓練など。
 ・復帰支援プログラムではなく現金希望者には,現金を支給。
   第1ランク:80万ルピー
   第2ランク:70万ルピー
   第3ランク:60万ルピー
   第4ランク:50万ルピー

(3)国軍統合と社会復帰への振り分け
 ・国軍統合組と社会復帰組への振り分けは,特別委員会の下で,11月23日までに完了。

(4)各種委員会
 ・真実和解委員会(TRC)と行方不明者調査委員会を1月以内に設立。
 ・紛争時の係争事件の審査。

(5)紛争被害者の救済
 ・被害者救済パッケージの提供。

(6)過去の諸協定の実行と信頼構築
 ・マオイストは没収財産を11月23日までに返却。損害は賠償。
 ・農民の権利保障。科学的土地改革の実行。
 ・YCLの軍事組織の解体。YCL没収財産は,11月23日までに返却。
 ・交通省登録のマオイスト使用車両は,11月23日までに再審査。無登録車は没収。
 ・地方行政機関が,没収財産返却を監視。政党はこれに協力する。

(7)憲法起草と挙国政府の組織
 ・平和プロセス完成のため,高レベル政治機構を設置。
 ・新憲法の早期起草。国家再構築のための専門家委員会を直ちに制憲議会内に設置。
 ・以上のプロセス開始後,直ちに挙国政府の組織に着手。

3.プラチャンダの譲歩とマオイスト分裂の危機
以上の「7項目合意」は,なかなか意欲的なものである。バイダ副議長らの強硬派の激しい反対を抑え,大幅譲歩をプラチャンダ議長が決断することによって,この合意は実現した。

むろん大幅譲歩といっても,宿営所収容の正規戦闘員は,まだよい。切り捨てられたのは,YCLや地方の活動家らである。YCLは組織の民主化(戦闘組織の解体)を迫られ,地方活動家らは没収財産返却と損害賠償を要求されている。こんなことが,本当にできるのであろうか?

バイダ副議長やRB・タパ書記長らの強硬派は,これに大反対である。バイダ副議長によれば,「この合意は,人民と国家への裏切りである」。

こうした革命の上前ハネは,歴史の常だし,ネパールでも何回も繰り返されてきたことだ。既視感をぬぐえない。

マオイストは,この合意が実行されれば,おそらく分裂する。バイダ派は,革命の成果を食い逃げされた大多数の貧困農民・労働者と共に,新人民戦争に向かうであろう。

* ekantipur, Nov2; Nepali Times, Nov2; Himalayan Times, Nov2; Republica, Nov2.

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/11/02 @ 17:51