ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

改憲は「民主主義クーデター」,マオイスト反主流派

1.第11次改憲案
今日(16日),暫定憲法第138条(2)を改正する第11次改憲案が,制憲議会で可決されることになっている。

第138条 国家の進歩的再構築
 (1) ・・・・国家は包摂参加とし,進歩的民主的連邦制へと再構築する。
 (1A) ・・・・州は,完全な諸権利を有する自治州とする。・・・・
 (2) (1)および(1A)に則り,国家再構築を勧告する高レベル委員会[国家再構築委員会(SRC)]を設置する。

大変意欲的な立派な規定だが,私は当初から,こんな夢物語のような連邦制は不可能だ,と批判してきた。様々な勢力の支持を得るため,マオイストと議会諸政党が競ってリップサービスにこれつとめ,こんなユートピア暫定憲法となってしまったのだ。

マオイストもNC,UMLも,いざ実行となると,こりゃ大変だ,と気付き,改憲することにしたのだろう。(欧米無責任連邦原理主義者は責任をとれ!)

つまり,第138条(2)を改正し,国家再構築の具体案作成,いいかえれば実質的な憲法起草作業を,現行のSRCから取り上げ,新設の「専門家委員会」に委ねてしまう,丸投げしてしまう,というわけだ。

安直だが,現実的であり,憲法制定のためには,仕方あるまい。

2.改憲は「民主主義クーデター」
この第11次改憲案に対し,真っ向から反対しているのが,おなじみのマオイスト反主流派。「赤星」(11月5日)によると,改憲による「専門家委員会」の設置は,制憲議会を棚上げにするのもであり,平和と憲法を名目とした「民主主義クーデター」にほかならない。

しかも,「専門家委員会」が作成する新憲法草案は,すでにニューデリーで完成しており,これが「専門家委員会」草案として提出されることになっている。

さらに,そんな印謹製憲法草案が提示されたら,たちまち激しい反対運動が起こるのは必定なので,そのときはBIPPAを名目として――憲法草案ではなく――非常事態を宣言し,憲法を制定してしまうことになっているという。

さすが「赤星」,事態の流れをよく見ている。完全自治権を持つ諸州への国家分割など,制憲議会にはできっこない。専門家委員会に丸投げし,専門家委員会がインド政府にお願いし,草案をつくっていただく。そして,非常事態宣言下でこれを可決し,新憲法として施行する。

きわめて現実的であり,プラチャンダ議長ならやりそうなことだ。バブラム首相には,そんな勇気はないだろうが。

3.キランとバダルの反撃
一方,マオイスト反主流派は,このところ劣勢だ。「7項目合意」で人民解放軍とYCLの解体,没収財産の返却が約束された。これらが実施され,印謹製新憲法が制定されれば,革命勢力としてのマオイストは,おしまい。

しかし,これらはいずれも中下層マオイスト既得権益と関わっており,実行には大きな困難が伴う。バイダ(キラン)副議長やRB・タパ(バダル)書記長ら反主流派は,このマオイスト既得権益を足場に,プラチャンダ=バブラム主流派への反撃を強化している。

これに対し,バブラム首相は,大臣のイスをばらまき,史上最大の49人とした。不満をなだめるために他ならない。いっそのこと,601人全員を大臣にしてしまったらよいのに。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/11/16 @ 14:33