ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

親印派ガッチャダール副首相,訪中へ

ビジャヤククマール・ガッチャダール・タルー氏は,副首相兼内務相で,マデシ親印派の代表格。インド政府とツーカーで,訪印し次の首相を約束されたなどとウワサされている。そのガ副首相が,近々訪中する。意味深だ。
 ガッチャダール副首相 (Telegraph)

この訪中には,先日の温家宝首相の訪ネ中止が絡んでいるようだ。温家宝首相の訪ネ(予定12月20-23日)は,ルンビニ開発とも関連づけ大々的に報道されていたが,なぜか突然キャンセルされ大騒ぎになった。前後して,ミャンマー訪問もキャンセルされており,これは異例なことだ。ただ事ではない。朝鮮日報(12月16日)から孫引きすると,

「インドのメディアは『温首相の訪問日程を無断で公表したネパールに不快感を示し、日程を全てキャンセルした』と報じた」

という。おそらく,そういうことではないか。中国首相ともあろう大物が,公式訪問をキャンセルするのだから,相当立腹したのだろう。

中国側に不信感を覚えさせた発言は,親印派不満分子の故意かもしれないし,あるいは,ひょっとしてネアカのプラチャンダ議長か浮かれた親中派の誰かが口を滑らせたのかもしれない。いずれにせよ,こんなていたらくでは訪ネは危ない,と中国側が判断したのだろう。

ガッチャダール副首相の訪中は,その後始末のためだろう。カンチプール(12月21日)によると,ガ副首相は訪中し,温家宝首相のネパール滞在中の安全に万全を期す,と約束するらしい。ほかでもない,印政府とツーカーのガ副首相が約束するのだから,それはいわば印政府の暗黙の了解といってもよいだろう。いや,そこまで言えないとしても,少なくともネパール国内の親印派の暗黙の了解,とはいえるであろう。

今回の訪ネ・訪中ドタバタ劇は,大筋ではそんなところであろうが,そこは外交上手のネパールのこと,ひょっとすると,もっと奥が深く,あんがいネパール政界大物たちの暗黙の出来レースかもしれない。

中国とインドを張り合わせ,出させるだけ出させ,しかしギリギリのところでは印中どちらにも決定的な主導権を与えず,ネパール外交の自由・独立の余地を残す,という高等戦術である。プラチャンダ議長なら,やりそうなことだ。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/12/23 @ 20:16

カテゴリー: インド, 外交, 中国

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