ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

国家祭日としてのクリスマスとネパールの政財界

ネパールは世俗化によりクリスマスを国家祭日とした。あれ?!と思うのが常識だが,プラス思考のネパールでは議員数であれ何であれ加算していくのが流儀,ヒンドゥーや仏教の神々にキリスト教の神を加算して悪いわけはない。かくて,ありがたい神々と,神々のための国家祭日がやたらと増えていく。おめでたい。

このネパール式世俗化は,政教分離ではないから,国家や政治家は神々の自由市場の中から,役に立ちそうな神,御利益をもたらしてくれそうな神を選び出し,政治的・経済的に利用しても,何ら差し支えない。排他的国教として扱わなければ,それでよいのだ。

そこでマオイストが目をつけたのが,仏教。仏様を利用して人民戦争を戦い,次はルンビニ開発で黄金の御利益にありつこうとしている。罰当たりなことだ。

しかし,黄金の後光が輝いているのは,仏教よりもむしろキリスト教だ。ヒンドゥー教国家の縛りが解けたので,政治家たちは堂々とキリスト教儀式に参加し,神をたたえ,御利益をえることが出来る。

ネパールのキリスト教徒は,世俗化により急増中。MSNニュースなどによれば,人口の10%に達したとのこと。10%といえば,300万人弱であり,これはすでに大勢力だ。

昨年までは,この急増を怖れたヒンドゥー教「ネパール防衛軍」などがテロ攻撃をしかけ,ミサ出席もこわごわだったが,ことしはもはやそのような危険はほとんどなく,各紙は「攻撃リスクのなくなったクリスマス」と伝えている。

このようにしてキリスト教が安全パイになり,しかも黄金と票の後光が差しているとなると,ヒンドゥー教徒であろうが仏教徒であろうがお構いなく,政治家たちは競ってクリスマス礼拝に参加し,神をたたえ,御利益にあずかろうとする。

25日には,アカデミーホールでキリスト教全国協会主催の「クリスマス大祭2011」が開催され,そこには制憲議会ネムワン議長ら政界のお歴々が多数参加し,イエス生誕を祝った。

 
  ■クリスマス大祭で祝辞を述べるネムワン議長 (nepalnews.com, 2011-12-26)

政界よりももっと節操がないのが,経済界。大手ホテルは,キリスト教で一儲けしようと,趣向を凝らした。
  ★クリスマス・ランチ/ディナー
    ヤク&イエティ  1400-2500ルピー
    エベレストH   1500-3500ルピー
    ソルティーH   1300-  ルピー
    ラディソンH   2500-3500ルピー

結構なお値段。これが馬小屋で生まれた貧しいイエスをヒンドゥー教徒が祝うためのお食事代である。針の穴を通る気などさらさらないから,大枚はたこうが酒を飲もうが,平気なのだ。

イエスは,貧しき者,悩める者,病める者に寄り添い,その苦しみを自らに引き受けようとしたのではなかったのか? もしそうだとするなら,歌舞音曲を控え,断食をすることこそが,クリスマスの本来の祝い方ではないのか? 

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/12/26 @ 20:01