ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

ルンビニ開発への懸念,ユネスコ書簡

1.ユネスコ,書簡送付
ユネスコ世界遺産センターが,ネパール文化省宛の書簡(2011-12-20)で,中国系APEC(アジア太平洋交流協力基金)主導のルンビニ開発に対する懸念を伝えた。APECルンビニ開発は,ユネスコのルンビニ開発マスター・プランや世界遺産条約ガイドラインに反するというのだ。

2.ユネスコ「ルンビニ保存管理強化」事業
ユネスコは,1997年にルンビニを世界遺産に登録し,2010年7月16日にはネパール政府と協定を締結,日本政府拠出基金による「ルンビニ保存管理強化」事業を開始した。

事業内容 考古学的調査,遺跡保存,丹下健三マスタープランの検証,ルンビニ管理体制の確立
参加機関 世界遺産センター,連邦省,考古学省,日本大使館,ダーラム大(英),東京大学,ルンビニ開発トラスト,ルンビニ国際調査所
専門家委員 西村幸夫(東京大学,都市計画),C. Comingham (英),C. Meucci(伊)

この事業は,丹下マスタープラン(100万ドル,UNDP,1978)を継承するものであり,ユネスコの説明によれば,資金的にも人的にも日本が中心となっている。ユネスコは,このルンビニ開発計画に,APECルンビニ開発事業は反するというのだ。

3.巨大仏像に五星ホテル
APECルンビニ開発計画によると,目玉として巨大仏像が建立される。高さ115mというから,奈良大仏(15m)や鎌倉大仏(11m)よりもはるかに大きい。そして,五つ星のプール付き高級ホテルと,4000人収容の大ホール。

さすが,中国,なんでも巨大なものが好きだ。ちまちました小国日本の比ではない。現在の制憲議会ビル(コンベンションホール)のバカでかさをみれば,中国的思考は一目瞭然。それをルンビニでもやろうというのだ。

4.世界遺産条約違反
ルンビニ地区に,もしこんな巨大仏像や五星ホテルが建設されたら,世界遺産としての有難味は激減する。世界遺産条約はこう定めている。

■世界遺産条約実施ガイドライン(172)
「条約保護地域において,遺産の価値を害する恐れのある大規模な再建や新築を行う場合は,世界遺産委員会に通知すること・・・・」

APEC開発計画は,明らかに,このガイドラインに違反している。

5.日中の代理戦争?
ルンビニ開発をめぐるこのユネスコとAPEC系との対立は,うがった見方をすれば,少なくとも外面的には,日中の代理戦争だ。

日本はユネスコ分担金を12.5%も負担しており,米国(22%)に次ぐユネスコの大パトロン。ユネスコのルンビニ開発でも,日本は,資金を提供し,日本大使館や東京大学(丹下健三―西村幸夫)が深く関与している。

一方,APECの背後に中国政府がいることは周知の事実だ。ルンビニをめぐって,日中が争っている,と見られても仕方ない。では,日中いずれに軍配が上がるか? いかんながら,結局,日本は負けると見ざるをえない。

巨大仏像,五星ホテル,巨大ホールなど,しめて事業総額80億ドル也。しかも,われらがプラチャンダが全面支援している。日本に勝ち目はない。結局,ルンビニに巨大仏像が建つだろう。赤色かもしれないが。

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* Republica, 2012-01-1
* UNESCO, Strengthening the Conservation and Management of Lumbini, UNESCO HP

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/01/12 @ 20:11

カテゴリー: 経済, 文化, 中国

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