ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

「ネパール=中国友好年」と「ルンビニ観光年」

1.無礼な中国首相訪問
温家宝首相の訪ネ(1月14日)はあまりにも異例,ネパールはまるで中国の一部か属国のようであった。ネパール・メディアが,鬱鬱たる怒りを押し殺しつつ,皮肉たっぷりに伝えているところによると,経緯の大要は次の通り。

中国がネパールに首相訪問を公式に伝えたのは24時間前であり,ネパール外務省の公式発表は特別機着陸(11時50分)の48分前であった。

■1月13日(金)
 ・大統領,制憲議会議長への連絡=13日午前。
 ・外務省幹部=メディア報道で,16時頃知る。
 ・首相官邸がソルティーホテルに昼食会準備依頼=16:30
 ・官邸の赤カーペット取り替え=13日夕方
 ・中国大使館員らとの打ち合わせ=13日夕方
■1月14日(土)
 11:50 温首相,TIA到着
 12:15 バブラム首相と会談
 12:45 首相官邸で両国公式協議
 13:30 8協定調印
 13:50 昼食会。各党首ら出席
 14:50 大統領官邸出発
 16:00 ドーハへ向け出国

ネパールにとっては,予告無しの来訪に近い。特に,大統領,議会議長,各党首らは,ほとんど情報のないまま,突然,14日カトマンズ待機を求められたらしい。たった4時間の訪問のために。無礼千万といわざるをえない。

2.ネパール=中国友好年2012
温首相の訪ネはわずか4時間であったが,地政学的に重要な地域での大規模ダム建設,ポカラ国際空港建設,経済協力拡大など,協定が8つも締結され,中国にとっては成果十分であった。

それらの中で,今のところあまり注目されていないが,中長期的に重要となると思われるのが,「ネパール=中国友好年2012」の採択である。

協定によれば,2012年は「ネパール=中国友好年」とされ,文化交流・青年交流が拡大され,「中国フェスティバル」が展開される。中長期的に,中国文化を浸透させていく計画らしい。

これは「友好」が目的だから,反友好的な行為は抑制される。具体的には,自由チベット運動。協定は,こう宣言している。

「ネパール側は繰り返し確認した――世界において中国は唯一であること,中華人民共和国政府は中国全体を代表する唯一の合法政府であること,そして台湾とチベットは中国の不可分の領域であること。またネパールは,中国の国家主権・国民統一・領域統合への努力を強く支持し,いかなる勢力にもネパール領域を反中国の活動や分離活動のために利用させることはない。このネパールの立場を,中国側は高く評価した。」

これは中国のいうがままであり,この協定により,ネパールはこれまで以上に強力にチベット自由運動や他の反中国活動を取り締まらなければならないことになった。

さて,どうするか? ちょっとうがった見方だが,この点との絡みで注目すべきは,今回約束された次の援助である。

中国は,警察力強化に1億2千5百万ルピー,武装警察学校設立に5千万ルピーの援助を約束した。これらのうち武装警察は準軍隊であり,その幹部養成を任務とするのが武装警察学校であろう。そこに中国が援助する。さすが,中国,目の付け所がよい。

中国との友好は,当然,自由チベット弾圧を意味する。

3.ルンビニ観光年2012
この「ネパール=中国友好年2012」とリンクしているのが,「ルンビニ観光年2012」である。ヤダブ大統領は,「ネパール=中国友好年2012」協定調印の翌日(15日),カトマンズからルンビニに行き,そこで「ルンビニ観光年2012」を宣言した。偶然の一致ではなく,両者は連動していると見るべきだろう。

14日のカトマンズでの協議において,バブラム首相がラサ-カトマンズ-ルンビニ鉄道建設を要望したのに対し,温首相は,それは十分に可能であり,中国政府は前向きに検討する,と約束した。中国側は,やる気満々なのだ。

もしラサ-カトマンズ-ルンビニ鉄道が建設されたら,ネパールの地政学的位置は大きく変化する。あるいはまた,中国は,ルンビニの先の巨大なインド市場をも見込んでいるのかもしれない。

いずれにせよ,「ネパール=中国友好年2012」と「ルンビニ観光年2012」は連動していると見るべきだろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/01/18 @ 13:44

カテゴリー: 経済, 外交, 文化, 中国

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