ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

人民解放軍,除隊開始

1.人民解放軍の除隊手続開始
全国の駐屯地(cantonment)に収容されている人民解放軍(PLA)戦闘員の除隊手続が,2月3日から始まった。平和構築への一歩前進である。

今回の除隊は,社会復帰希望者7365人が対象。(国軍統合希望者は9705人。) 除隊手当として,1人当たり50~80万ルピーと帰郷旅費が支給される。ただし,今回支給は半額で,残りは次年度支給となる。

2.ネパール式交渉術の妙
この除隊開始は,高く評価できる。いかにもネパールらしく,駐屯地収容から5年もかかったが,その間,ネパール式交渉術で少しずつ利害を摺り合わせていき,3日の除隊開始にこぎつけた。PLA戦闘員たちは,劣悪な駐屯地で5年間もよく頑張ったものだ。

3.除隊後の不安
しかし,その一方,心配も尽きない。除隊マオイストの多くはとりあえず故郷に帰るのだろうが,果たして受け容れられるだろうか? もっぱら他の村で「外人部隊」として暴れていたのなら比較的安全だが,もし出身地で闘っていたのなら,敵も多いはずだ。

また,除隊給付金50~80万ルピーは大金だが,村に仕事があるわけはない。もし10年前後も人民戦争に明け暮れていたのなら,戦争以外の知識も技能もないわけで,そのような人々が社会生活にすんなり適応できるはずがない。支給金など,すぐ使い果たし,生活できなくなってしまうだろう。

もっと不安なのが,かなりいるとされる傷痍軍人。特別プログラムでも組まないと,除隊後,たちまち生活に困る。その不安から,彼らは駐屯地内で特別プログラム要求闘争を始めた。しかし,弱者ゆえ,彼らの要求は無視されてしまいそうである。

4.国軍統合への展望
国軍統合を希望している残りの9705人についても,展望ははっきりしない。11月1日の「7項目合意」では6500人統合となっており,3千人もあぶれる。

いずれにせよ,特別部隊を編成しての統合になるのだろうが,指揮系統もPLA出身者の処遇もまだはっきりしていない。国軍統合には,もう少し時間がかかりそうだ。

5.PLA兵卒は利用されただけか?
いまマオイストが,政官財で「美味しい果実」を手に入れた勝ち組と,わずかな支給金でお払い箱になったり「国土建設警備隊」のような部隊に兵卒として組み込まれたりする負け組とに,二分化しつつあることは確かだ。負け組は,当然,勝ち組を非難する。

「われらの犠牲は金に換えられた。この日のために革命に参加したのではない」(チトワン除隊戦闘員)
「多くの同志が戦いの中で生命を犠牲にし手足を失った。そして,いま私たちは家畜のように売られていく」(Nabin BC)

多くのPLA戦闘員にとって,これは偽らざる心境であろう。英雄は,兵卒の血と汗と涙を糧に名声を高め,地位と富を得,死後に像を残す。歴史とは,結局,そのようなものなのだ。
* ekantipur, 2-4 Feb.

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/02/05 @ 22:15