ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

パン事務総長の訪ネ批判:ゴータム元国連事務次長補

パン国連事務総長の4月末ルンビニ訪問について,元国連事務次長補(Assistant Secretary-General)のクルチャンドラ・ゴータム氏が,厳しく批判している。ゴータム氏は,ユニセフ元副事務局長でもあり,ネパール国連外交の代表的人物。
 ■Kul Chandra Gautam,”Wrong visit at the wrong time,The questionable wisdom of Ban Ki-moon’s proposed visit to Lumbini,” Nepali Times, March 12, 2012

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ゴータム氏の訪ネ反対理由は,人民戦争の決着もつかず,新憲法もできていないのに,時期尚早ということ。人民戦争中の人道犯罪や人権侵害については,誰1人責任を問われていない。それどころか,マオイストはつぎつぎと高位要職に就き,すべて免訴・免責にしようとしている。

国連も情けない。UNMINは無能として追い出され,今度は高等人権弁務官事務所も追い出されようとしている。そしていま,「ルンビニ国際会議・議長」のエサで,パン事務総長がプラチャンダ議長に釣られようとしている。

プラチャンダ議長は,1万5千の死者と無数の犠牲者を生み出した人民戦争の張本人だ。しかも,まだ暴力革命路線を放棄してはいない。

「国連事務総長が,神聖な仏陀生誕地で開催される国際会議において,血染めの手を恥じることのないマオイスト指導者とともに共同議長を務めるとは,なんたる皮肉か。・・・・聖地の国際会議で国連事務総長が共同議長を務めるのは,平和を願うネパール人ばかりか世界中の多くの仏教徒に対する許しがたい冒涜である。」

それに,「アジア太平洋協力交流基金(APECF)」や「国連工業開発機関(UNIDO)北京事務所」も怪しい。もしパン事務総長が訪ネするというのなら,次の3条件を満たしてからだ。
 (1)マオイストとプラチャンダ議長に暴力放棄を確約させること。
 (2)人道犯罪,人権侵害の罪を問わないような「真実和解委員会」を拒否すること。
 (3)マオイスト戦闘員の統合・復帰を完了すること。

もしこれらの3条件が満たされるなら訪ネもよいが,だめなら,訪ネをキャンセルするか,少なくとも3条件を明言すべきである。

このクルチャンドラ・ゴータム氏の批判は,正論である。私もそう思う。しかし,プラチャンダ議長の偉さは,そのような正論は分かった上で,力と金の現実の流れを読み,それを利用して事態を思う方向へ動かそうとしている点にある。

おそらくパン事務総長も,利用されることは十分に分かった上で,利用するプラチャンダを利用して和平を実現させようとしているのだろう。

そして,プラチャンダ議長は,利用されることが分かった上で利用されようとしているパン事務総長を利用して自分の描く和平を実現しようとしているのだろう。ひょっとすると,大物ゴータム氏に正論を吐かせているのは,プラチャンダ議長かもしれない。

いやはや,ネパール政治はスゴイ。ステーツマンシップのモデルとして研究する価値は十分にある。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/03/14 @ 13:46