ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

連邦制とネパールの国家再構築

1年半前に書いた論文の結論部分です。ご参考までに。

・・・・このようにみてくると,連邦制には問題が多く,単一制を改めて見直し,改革・改良の可能性をさぐる努力もあってよいことがわかる。連邦制が支邦内も含めた分権・自治には必ずしもならないのと同じく,単一制も必ずしも中央集権制となるとは限らない。イギリスは単一制の立憲君主国だが,分権・自治は高度に進んでいる。日本も単一制の象徴天皇制国家だが,Anderson(2008, p.6)も指摘するように,相当程度地方自治が認められているし,また 2009年9月の民主党への政権交代で地方分権がさらに進む状況になってきた。

ネパールではいま,前述のような様々な連邦制案が示すように,支邦の線引きをめぐって民族対立や地域対立が激化している。ネパールの政治的・社会的・経済的現実を無視した,西洋迎合の観念的・情緒的連邦制論は,混乱と対立を激化させるだけである。

もしそうだとするなら,現在の単一制の大枠を維持しつつ,分権化による地方自治の強化や,比例制,クオータ制などによる民族・社会諸集団の権力参加促進を図る政策を採る方が,ネパールにとっては政治的にはより賢明である。多民族多文化混在,低開発,経済格差,印中間の内陸小国――この基本的条件を考えると,地味で面白味には欠けるが,単一制国家の地方自治改革・権力参加促進を図る方がより現実的であろう。

全文(pdf)
連邦制とネパールの国家再構築(2010.9)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/05/31 @ 16:33

カテゴリー: 憲法, 民族, 民主主義

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